介護保険の申請の流れ|認定は申請日にさかのぼる

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親の様子が変わってきた。転んだ、物忘れが増えた、退院の日が決まった。そういうときに最初にやることが、介護保険の申請です。

ところが多くの家庭で、ここで1か月が失われます。「認定が出るまで何もできない」と思い込んでしまうからです。

介護保険の認定は、効力が申請日にさかのぼります。結果が届くのが30日後でも、給付の対象になるのは申請した日からです。待つ必要はありません。

この記事では、申請の窓口と必要なものから、認定調査で家族がやるべきこと、結果に納得できないときの手だてまでを、順にお伝えします。あわせて、全国215,550事業所を集計したマモリア独自のデータから、認定が出ても地域にサービスがないことがあるという、あまり語られない話にも触れます。

申請の窓口は市区町村。代行もできる

申請先は、親が住民票を置いている市区町村の介護保険担当窓口です。子が別の市に住んでいても、申請するのは親の住所地になります。

本人か家族が窓口へ行くのが基本ですが、行けない事情はいくらでもあります。遠方に住んでいる、平日に休めない、本人が入院中で誰も動けない。そのために代行の仕組みがあります。

誰に頼むか 費用 向いている場面
家族が窓口へ行く 無料 近くに住んでいて平日に動ける
地域包括支援センター 無料 まだ誰にも相談していない。ここが最初の一手
居宅介護支援事業所 無料 すでにケアマネジャーがいる
入院先の医療ソーシャルワーカー 無料 退院日が決まっている
郵送での申請 無料 遠方に住んでいる。可否は市区町村で異なる

どこに頼むか迷ったら、地域包括支援センターに電話してください。中学校区にひとつ程度の割合で全国に置かれた公的な相談窓口で、申請の代行も、その後の段取りも、無料で引き受けてくれます。名称は市区町村によって「高齢者あんしんセンター」などに変わります。

出典:厚生労働省「介護保険制度における申請手続」/各市区町村の介護保険担当課(2026年8月時点)

申請に必要なもの

持ち物は多くありません。足りないものがあっても、窓口で教えてもらえば後日でかまわない場合がほとんどです。取りに帰るより、まず行ってください。

もの 要否 補足
要介護・要支援認定申請書 必須 窓口にある。自治体サイトから印刷できることも多い
介護保険被保険者証 必須 65歳になった月に郵送されている。紛失時は再交付
健康保険証(40〜64歳の場合) 必須 第2号被保険者はこちらで確認する
マイナンバーがわかるもの ほぼ必須 通知カード、マイナンバーカードなど
主治医の氏名・医療機関名・所在地 必須 市区町村がここへ意見書を依頼する
代理人の本人確認書類 代行時 家族が行く場合の運転免許証など

被保険者証が見つからない、という相談は非常に多いのですが、これで申請が止まることはありません。再交付の手続きも同じ窓口でできます。

申請から利用開始までの流れ

時期 何が起きるか 家族がやること
申請日 市区町村が受理する この日からサービスを使える
数日〜2週間 認定調査員が訪問して聞き取り できるかぎり同席する
同じころ 市区町村が主治医に意見書を依頼 主治医に「意見書が行きます」と伝えておく
その後 コンピュータによる一次判定
その後 介護認定審査会による二次判定
申請から原則30日以内 認定結果が郵送で届く 結果を確認する

認定調査は、5群62項目の基本調査に、特別な医療12項目を加えた計74項目で行われます。調査員の特記事項と主治医意見書が、審査会での判断材料になります。

出典:厚生労働省の要介護認定に関する資料にもとづく。手続きの細部は市区町村によって運用が異なることがあります。

30日を超えることもある

原則は30日ですが、主治医意見書の提出が遅れたり、審査会の日程が詰まっていたりすると延びます。その場合は「認定見込期間」の通知が届きます。

延びたとしても、次の章のとおり、待つ必要はありません。

サービスは申請した日から使える

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。

介護保険の認定は、その効力が申請日にさかのぼります。認定結果が届くのが1か月後でも、給付の対象になるのは申請した日からです。

つまり、結果を待たずにサービスを始められます。ケアマネジャーが「暫定ケアプラン」を作り、それにもとづいて訪問介護やデイサービスを利用できます。

結果を待った場合 暫定ケアプランで始めた場合
サービス開始 1か月後 申請の数日後から
その間の家族の負担 全部家族が背負う 分担できる
本人の状態 動かない期間が続く 生活のリズムを保てる
待つか、暫定プランで始めるかで、1か月ちがう暫定ケアプランで始める 申請の数日後; 認定結果を待つ 約1か月後待つか、暫定プランで始めるかで、1か月ちがう申請してからサービスを使い始めるまでの日数(目安)暫定ケアプランで始める申請の数日後認定結果を待つ約1か月後認定の効力は申請日にさかのぼる。待つ理由は制度上ひとつもない

認定の効力は申請日にさかのぼるため、結果を待たずにサービスを始められます。日数は目安で、市区町村により異なります

ただしリスクもある

暫定ケアプランは、認定される要介護度を見込んで組みます。実際の認定が見込みより軽く出た場合、区分支給限度基準額を超えた分は全額自己負担になります。「要介護2くらいだろう」と見込んで組んだプランで、結果が要支援2だった、というケースです。

だから暫定で始めるときは、ケアマネジャーに「見込みが外れたら、自己負担はいくらになりますか」と必ず聞いてください。答えられる人なら安心して任せられます。

退院直後で明らかに介護が必要な状態なら、暫定で始めるほうが合理的です。退院後のリハビリのように、動かさない期間が長いほど機能が固定してしまう場面では、1か月の空白が後々まで響きます。

認定調査で、いちばん多い失敗

調査員が自宅(または病室)に来て、本人に質問し、動作を確認します。ここで起きることは、たいてい同じです。

本人が、普段よりできてしまう。

他人の前だと気が張ります。ふだんは杖なしで歩けないのに立ち上がってみせる。日付が言えないのに、その日はたまたま答えられる。「お風呂はひとりで入れますか」と聞かれて「入れます」と答えてしまう。

結果として、実態より軽い認定が出ます。使えるサービスの量が減り、家族の負担は変わりません。

家族が同席する

これがいちばん確実な対策です。同席して、本人の話を否定せずに、事実を補足してください。

「本人はそう言っていますが、先週は夜中に2回トイレで転んでいます」
「入浴は週2回、私が全介助しています」
「調子のいい日はできますが、週の半分はできません」

本人の前で言いにくいことは、あらかじめメモにして調査員に渡す方法もあります。調査員は特記事項として記録してくれます。

2週間、記録をつけておく

調査の前に、日々の状態を書き留めておくと精度が上がります。

8/15 2:10 トイレ介助
8/16 入浴全介助 40分
8/17 同じ話を5回
8/18 デイの迎えを拒否

「大変です」と伝えるより、この記録を見せるほうが正確に伝わります。認知症の症状は日によって波があるので、いい日だけを見て判断されないためにも記録が効きます。

主治医がいない場合はどうするか

申請書には主治医を書く欄があります。市区町村がそこへ意見書を依頼します。

問題は、かかりつけ医がいない場合です。「何年も病院に行っていない」という高齢者は珍しくありません。

状況 どうするか
入院中 入院先の医師に書いてもらう。地域連携室に相談する
通院はしていないが持病がある 最後にかかった医療機関に相談する
まったく受診していない 申請前に受診する。市区町村が医療機関を紹介してくれることもある

意見書が出ないと審査が進みません。ここで止まっているケースが実際にあります。窓口で「主治医がいない」と正直に伝えれば、進め方を教えてもらえます。

要介護度で、使える量が決まる

認定は非該当(自立)、要支援1〜2、要介護1〜5の8段階です。この区分によって、1か月に使えるサービスの量(区分支給限度基準額)が決まります。

区分 1か月の上限 目安の金額(1単位10円で計算)
要支援1 5,032単位 約50,300円
要支援2 10,531単位 約105,300円
要介護1 16,765単位 約167,600円
要介護2 19,705単位 約197,000円
要介護3 27,048単位 約270,400円
要介護4 30,938単位 約309,300円
要介護5 36,217単位 約362,100円

区分支給限度基準額は2019年10月から据え置かれています。1単位あたりの単価は地域とサービス種別によって10〜11円台で変わるため、金額は目安です。

この上限額のうち、自己負担は原則1割(所得により2〜3割)です。上限を超えた分は全額自己負担になります。

要介護3以上になると、特別養護老人ホームの申し込み対象になります。ここが在宅と施設の分かれ目のひとつです。

認定が出たら、ケアマネジャーを探す

要介護1以上なら居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援なら地域包括支援センターが担当になります。ケアプランの作成に自己負担はありません。

ただし、ここで多くの家族がつまずきます。どの事業所がいいのかを調べる手段が、ほとんどないからです。

全国
居宅介護支援事業所の数 36,171
ホームページを持たない割合 34.7%
事業所が1つしかない市区町村 201
1つもない市区町村 31

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで同一事業所の重複を整理して集計。

3分の1はネットで調べられません。だから地域包括支援センターで一覧をもらうのが現実的です。選び方と、合わなかったときの変え方はケアマネジャーの選び方と変え方にまとめています。

認定が出ても、地域にサービスがあるとは限らない

ここは見落とされがちです。介護保険は全国共通の制度ですが、事業所が存在するかどうかは市区町村ごとに違います。

認定が下りても、使いたいサービスが地域になければ使えません。

サービス 1つもない市区町村
夜間に来てもらえる3サービスのどれも 1,089(57.6%)
認知症対応型通所介護 914(48.4%)
訪問看護 363(19.2%)
デイケア・訪問リハ・老健のどれも 359(19.0%)
訪問介護 113(6.0%)
認定が出ても、地域にサービスがあるとは限らない夜間に来てもらえる3サービスのどれも 1,089自治体 57.6%; 認知症対応型通所介護 914自治体 48.4%; 訪問看護 363自治体 19.2%; デイケア・訪問リハ・老健のどれも 359自治体 19.0%; 訪問介護 113自治体 6.0%認定が出ても、地域にサービスがあるとは限らない全国1,889市区町村のうち、そのサービスが1つもない自治体夜間に来てもらえる3サービスのどれも1,089自治体 57.6%認知症対応型通所介護914自治体 48.4%訪問看護363自治体 19.2%デイケア・訪問リハ・老健のどれも359自治体 19.0%訪問介護113自治体 6.0%認定は「使う権利」を決めるだけ。地域に事業所があるかは別の問題

出典:マモリア独自集計。介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点

サービス名をたどると、その事業所が1つもない市区町村の一覧が見られます。特別養護老人ホームがない91市区町村もまとめました。

申請と並行して、地域に何があるかを確認しておいてください。お住まいの市区町村の事業所数を21種類のサービスについて調べられます。

とくに夜間に来てもらえるサービスは半分以上の市区町村に存在しません。「24時間対応があるから在宅で大丈夫」という前提は、地域によっては最初から成り立ちません。

結果に納得できないとき

「この状態で要支援なのか」と感じることはあります。打つ手は2つあります。

区分変更申請 審査請求(不服申立て)
窓口 市区町村 都道府県の介護保険審査会
理由 心身の状態が変わった 認定そのものが不当
期限 いつでも 結果を知った日から3か月以内
かかる期間 約1か月 数か月
実務での使われ方 こちらが主流 まれ

実務では、ほぼ区分変更申請が使われます。審査請求は時間がかかるうえ、その間に状態が変われば意味が薄れるためです。

ただし区分変更は「状態が変化した」ことが前提です。認定調査で実態が伝わらなかったと感じるなら、次の調査こそ同席して、記録を持って臨んでください。

認定の有効期間

新規と区分変更は原則6か月、更新は原則12か月(状態が安定していれば最長48か月)です。有効期間が切れる前に、市区町村から更新の案内が届きます。

更新を忘れるとサービスが使えなくなります。期限は必ず控えておいてください。

よくある失敗

失敗 なぜ起きるか 対策
認定結果が出るまで何もしなかった 申請日にさかのぼることを知らない 暫定ケアプランで先に始める
認定調査に同席しなかった 仕事を優先した 日程を調整する。難しければメモを渡す
実態より軽い認定が出た 本人が「できる」と答えた 2週間の記録を持参する
主治医の欄で止まった かかりつけ医がいない 窓口で相談する。入院中なら病院の医師に
退院してから申請した 入院中でも申請できると知らない 入院1〜2週目に申請する
更新を忘れた 期限を把握していない 有効期間をカレンダーに入れる
40代で対象外だと思った 特定疾病を知らない 16疾病に当てはまるか窓口で確認する

まとめ

  1. 申請の窓口は市区町村。迷ったら地域包括支援センターに電話する。代行してもらえる
  2. サービスは申請した日から使える。認定結果を待つ必要はない
  3. ただし暫定で始めて認定が軽く出ると、超過分は全額自己負担になる
  4. 認定調査には家族が同席する。本人は普段よりできてしまう
  5. 2週間の記録を持参すると、実態が正確に伝わる
  6. 主治医の欄で止まりやすい。かかりつけ医がいなければ窓口で相談する
  7. 入院中でも申請できる。退院してからでは30日待つことになる
  8. 結果に納得できないときは、審査請求より区分変更申請が現実的
  9. 認定が下りても、地域にサービスがあるとは限らない

次にやること

今日できるのは電話1本です。「〇〇市 地域包括支援センター」で検索し、親の住所を担当するセンターに連絡してください。入院中なら、病院の地域連携室に「介護保険を申請したい」と伝えるだけで動き始めます。

あわせて、親が住む市区町村に何があるかを確認しておいてください。相談のときにこの一覧を持っていくと、話が具体的になります。

特別養護老人ホームは、民間の紹介サービスでは扱われません。申し込みは市区町村の窓口か担当のケアマネジャーへ。要介護3以上が原則です。

在宅で続けるか施設を検討するかは、認定が出てから急に決められるものではありません。費用の目安だけでも先に知っておくと、判断が早くなります。

条件に合う施設の資料を無料で取り寄せる

施設の種類と費用こちら紹介サービスが無料で使える理由はこちらにまとめています。

よくある質問

本人が申請を嫌がります。

よくあることです。「介護保険」という言葉に抵抗がある方は多いので、「市から届いた手続き」「健康チェック」といった言い方に変える家庭もあります。それでも難しい場合、申請自体は家族が代理で行えます。ただし認定調査では本人への聞き取りが必要になるため、地域包括支援センターに相談して進め方を一緒に考えてもらってください。

申請にお金はかかりますか。

かかりません。申請も認定調査も主治医意見書も無料です。認定後のケアプラン作成にも自己負担はありません。費用がかかるのは、実際にサービスを使い始めてからです。

遠方に住んでいますが申請できますか。

できます。申請書は郵送でも受け付ける市区町村が多く、地域包括支援センターに代行を頼むこともできます。ただし認定調査は本人の所在地で行われるため、日程は調整が必要です。同席できない場合は、事前にメモを送って調査員に渡してもらってください。

「非該当」だと何も使えませんか。

介護保険のサービスは使えませんが、市区町村が実施する総合事業の通いの場や、配食、見守りなどを利用できる場合があります。地域包括支援センターに「非該当だったが何が使えるか」と聞いてください。状態が変われば、あらためて申請できます。

入院中に申請しても大丈夫ですか。

問題ありません。むしろ入院中の申請が推奨されます。退院してから申請すると、その間サービスが使えません。認定調査は病室でも行われます。ただし入院直後は状態が安定しないため、調査の時期は病院と相談してください。

要支援と要介護では何が違いますか。

担当する窓口とサービスの枠組みが変わります。要支援は地域包括支援センターが担当し、通所や訪問は市区町村の総合事業になります。要介護は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当し、介護保険の給付を使います。使える上限額も大きく違います。

認定調査では何を聞かれますか。

寝返りや歩行などの身体機能、食事や排泄などの生活機能、記憶や理解などの認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応の5群62項目と、点滴や褥瘡処置などの特別な医療12項目です。実際にやってみせる場面もあります。

認定は何年おきに受け直しますか。

新規と区分変更は原則6か月、更新は原則12か月です。状態が安定していると判断されれば、更新時に最長48か月まで延ばされることがあります。期間中に状態が変われば、更新を待たずに区分変更を申請できます。

親と自分が別の市に住んでいます。どちらに申請しますか。

親が住民票を置いている市区町村です。介護保険は住所地の保険者が担当します。ただし施設に入所して住所を移した場合は、元の市区町村が引き続き保険者になる住所地特例という仕組みがあります。

申請したことを後から取り消せますか。

申請の取り下げはできます。ただし認定を受けておくこと自体に不利益はありません。使わなければ費用も発生しません。将来必要になったときに、あらためて30日待つことを考えれば、受けておく方が合理的です。

親が施設に移ったあと、実家をどうするか

在宅から施設へ切り替えると、実家が空いたままになります。空き家は持っているだけで固定資産税と管理の負担が続きます。急いで決める必要はありませんが、選択肢だけは知っておいてください。姉妹サイトの実家じまいナビで扱っています。

認定の結果を待つ間や、暫定プランに不安があるときの補いになるのが、保険外の自費サービスです。介護保険を使わないため費用は全額自己負担になりますが、時間帯・内容・回数を自由に決められ、保険では頼めない付き添いや見守りも依頼できます。夜間だけ、退院後の2週間だけ、といった短期の使い方もできます。

この記事のデータについて

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)/2026年6月末時点。制度の記述は厚生労働省「介護保険制度の概要」および各市区町村の要介護認定に関する案内(2026年8月時点)によります。

事業所数は、同一事業所が複数の指定区分で重複登録されているケースを事業所名と住所で名寄せして集計しています。

申請書の様式、必要書類、郵送申請の可否、認定調査の実施体制は市区町村ごとに異なります。区分支給限度基準額は地域区分により1単位あたりの単価が変わります。最新の取扱いはお住まいの市区町村の介護保険担当課にご確認ください。