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ヘルパーに来てもらうようになって、最初にぶつかるのがこれです。「すみません、それは介護保険では頼めないんです」。
庭の草むしり。父の分もついでに作ってほしい食事。ペットの散歩。病院の中での付き添い。窓拭き。年末の大掃除。どれも、断られます。そして多くの家族はここで「ケアマネか事業所が融通の利かない人なのだ」と受け取ってしまいます。
そうではありません。断っているのはヘルパーではなく、国の通知です。介護保険の訪問介護でできることは、厚生労働省が20年以上前から細かく線を引いていて、事業所にはそこを越える裁量がありません。越えれば返還を求められます。
この記事は、その線がどこに引かれているのかを、通知の原文に当たって整理します。そしてもっと大事なこととして、その線の外側にあるものを、どうすれば手当てできるのかを書きます。国は2018年に「保険内と保険外を組み合わせてよい」という通知を出していて、そこには組み合わせ方まで具体的に書いてあります。知らないまま使わないでいる家族が、まだとても多い制度です。
断っているのはヘルパーではなく、通知
訪問介護は、大きく2つに分かれます。身体介護と生活援助です。身体介護は入浴・排泄・食事などの介助、生活援助は掃除・洗濯・調理などの家事です。断られる話のほとんどは、生活援助のほうで起きます。
生活援助が何かは、厚生労働省の通知(老企第36号)にこう書かれています。「利用者が一人暮らしであるか又は家族等が障害、疾病等のため、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合」に行うもの。そして、含まれない行為として2つが挙げられています。
| 生活援助に含まれない行為(老企第36号) |
|---|
| ① 商品の販売や農作業等生業の援助的な行為 |
| ② 直接本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為 |
この②が、実務のほぼすべてを決めています。「直接、本人の」という2語が線引きの正体です。ここから2つの原則が出てきます。本人以外のためのことは頼めない。日常生活の範囲を超えることは頼めない。
まず、頼める相手そのものが地域にどれだけいるのかを見ておきます。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村)
全国に35,111の訪問介護事業所があり、自治体あたりの中央値は6です。ただし113の市区町村には1つもなく、286の市区町村には1つしかありません。「別の事業所に頼めばいい」という選択肢が、そもそも成り立たない地域が全体の2割あります。
生活援助は「本人の分だけ」
いちばん多い誤解がここです。ヘルパーは、要介護認定を受けた本人のためにだけ動きます。同居している家族の分は、たとえ「ついで」でも対象外です。
| 頼めること | 頼めないこと |
|---|---|
| 本人の食事をつくる | 家族の分も一緒につくる |
| 本人の衣類を洗濯する | 家族の衣類も一緒に洗う |
| 本人が使う部屋・トイレ・浴室の掃除 | 家族の部屋、来客用の部屋の掃除 |
| 本人が食べるものの買い物 | 家族のための買い物 |
| 本人が使う日用品の買い物 | 本人が飲まない酒・たばこの購入 |
「同じ鍋で作るだけなのに」と思う場面が必ず来ます。ここは制度の理屈がはっきりしていて、介護保険は本人の要介護状態に対して給付される保険だからです。家族の家事を肩代わりする制度ではありません。
ただし、これは「絶対にやってもらえない」という意味ではありません。後で書くとおり、同じ訪問の中で保険外として頼む道が、国の通知で認められています。「できません」で話を終わらせず、「では保険外だといくらですか」と聞くのが正しい進み方です。
日常の家事を超えるものは頼めない
もう1つの線が「日常生活の援助」かどうかです。判断の基準は、それをやらないと本人の日常生活に支障が出るかです。出ないなら対象外になります。
| 断られる理由 | 具体例 |
|---|---|
| やらなくても日常生活に支障が生じない | 草むしり、花木の水やり、ペットの世話、庭の手入れ |
| 日常的な家事の範囲を超える | 大掃除、窓ガラス磨き、床のワックスがけ、家具の移動、植木の剪定 |
| 本人以外のための行為 | 来客の対応、正月・法事などの準備、家族の車の洗車 |
| 生業の援助にあたる | 商品の販売、農作業の手伝い |
草むしりとペットの世話は、国の通知が名指しで「保険外サービスとして提供するもの」の例に挙げています。つまり制度の側が最初から「これは保険では無理だから、保険外でやってください」と想定している行為です。断られたのは事業所の判断ではありません。
「同居家族がいると使えない」は誤解
これは知っているかどうかで結果が変わる、この記事でいちばん実用的な話です。
「同居の家族がいるので生活援助は使えません」と言われた家族は多いはずです。しかし厚生労働省の通知(老企第36号)は、その先まで書いています。生活援助の要件である「家族等の障害、疾病等のため」について、こう続きます。
「これは、障害、疾病のほか、障害、疾病がない場合であっても、同様のやむをえない事情により、家事が困難な場合をいうものであること。」
さらに、こうも書かれています。「個々の事情に応じ、介護支援専門員、市町村等現場の良識ある判断によるべきもの」。つまり、同居家族がいるという一事だけで機械的に切ることを、国は求めていません。
| 「やむを得ない事情」として検討されうる例 |
|---|
| 同居家族が就労していて、日中は不在である |
| 同居家族が高齢で、その家事を担うことが体力的に難しい |
| 同居家族自身も要介護・要支援である |
| 同居家族が育児や別の家族の介護を同時に抱えている |
| 同居家族が精神的に不安定で、家事の継続が難しい |
ここで大切なのは、判断がケアマネジャーとサービス担当者会議、そして最終的には市町村に委ねられていることです。「使えません」と言われたときに聞くべきは、「それは制度上できないという意味ですか、それともこのケースでは必要性が認められないという意味ですか」です。前者なら諦めるしかありませんが、後者なら状況を具体的に伝え直すことで結論が変わることがあります。
就労を理由にするときは、勤務時間と帰宅時刻を具体的に伝えてください。「忙しい」では通りません。「平日は21時まで帰れないので、夕食の準備ができない」まで言語化すると、ケアプランに書ける形になります。
医療的なことは、どこまで頼めるか
「これは医療行為だからできません」も、よく聞く断り文句です。ただしこの線は、2005年の通知(医政発第0726005号)で、思っているよりかなり広く開いています。次の行為は「原則として医行為ではない」と国が明示していて、ヘルパーが行えます。
| ヘルパーが行える行為 | 条件 |
|---|---|
| 体温の測定 | 水銀・電子体温計で腋の下、耳式で外耳道 |
| 血圧の測定 | 自動血圧測定器によるもの |
| パルスオキシメータの装着 | 新生児以外で、入院治療の必要がない人 |
| 軽い切り傷・すり傷・やけどの処置 | 専門的な判断や技術を必要としないもの |
| 薬の使用の介助 | 軟膏の塗布、湿布の貼付、点眼、内服、坐薬の挿入、鼻腔への噴霧 |
| 爪切り・爪やすり | 爪や周囲の皮膚に異常がなく、糖尿病等の専門管理が必要でない場合 |
| 口腔内の清掃 | 重度の歯周病等がない場合の歯・口腔粘膜・舌の汚れの除去 |
| 耳あかの除去 | 耳垢塞栓の除去を除く |
| ストーマ装具の排泄物の処理 | 肌に接着したパウチの取り替えを除く |
| 自己導尿の補助 | カテーテルの準備、体位の保持など |
| 市販の浣腸 | ディスポーザブルグリセリン浣腸器を使用するもの |
薬の介助には条件があります。医師や看護師が事前に本人の状態を確認していること、内容の変化や副作用の危険性が低いこと、そして本人・家族から具体的な依頼があり、医師の処方と薬剤師の指導のうえで、容態が安定していることが前提です。逆に言えば、この条件が揃っていれば断られる理由はありません。
一方で、これを超えるもの——喀痰吸引、経管栄養、インスリン注射、褥瘡の処置、血糖測定などは、訪問介護では頼めません。喀痰吸引と経管栄養だけは、研修を受けた介護職員が登録事業所で行える例外がありますが、事業所を選ぶ必要があります。それ以外は訪問看護の領域です。
ここで地域の問題が出てきます。訪問看護がない市区町村は363あります。医療的なケアが必要になった時点で在宅の前提が崩れる地域が、全国の2割です。
通院の付き添いと、病院の中
通院の付き添いは、区分が細かく分かれていて混乱しやすいところです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 通院等乗降介助 | ヘルパーが運転する車への乗り降りと、その前後の移動・受診手続きの介助 |
| 身体介護(通院等介助) | 公共交通機関を使う場合など、移動中を通じて介助が必要な場合 |
| 院内介助 | 病院の中での付き添い。原則は病院スタッフの仕事 |
問題になるのは院内介助です。厚生労働省の事務連絡(平成22年4月28日)は、「基本的には院内のスタッフにより対応されるべきもの」としつつ、「院内介助であることをもって、一概に算定しない取扱いとすることのないよう願います」と明記しています。国は当時、一切認めない運用が広がっていることを問題視していました。
算定できる場合の条件は3つです。
| 院内介助が認められる条件 |
|---|
| ① 適切なケアマネジメントが行われていること |
| ② 院内のスタッフによる対応が困難であること |
| ③ 利用者が介助を必要とする心身の状態であること |
認知症で待合室から動いてしまう、聞き取りに家族の補足が要る、といった状況は②③に当たります。「院内はダメと決まっています」と言われたら、この事務連絡があることを伝えてください。そのうえで市町村の介護保険担当課に確認してもらうのが筋です。運用は市町村ごとに幅があります。
2018年に国が出した「組み合わせていい」という通知
ここからが、この記事の本題です。
2018年9月28日、厚生労働省は「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(老推発0928第1号ほか)という通知を出しました。訪問介護の事業所が、保険のサービスと保険外のサービスを一緒に提供してよい、その代わりこう守りなさい、というルールブックです。
この通知が名指しで挙げている保険外サービスの例が、そのまま「断られること」の一覧になっています。
| 通知が挙げている保険外サービスの例 |
|---|
| 草むしり、ペットの世話のサービスを提供すること |
| 利用者が趣味や娯楽のために立ち寄る場所に同行すること |
| 同居家族の部屋の掃除、同居家族のための買い物のサービス |
断られてきたことが、そっくりそのまま並んでいます。国は「これは保険では無理だが、保険外なら提供してよい」と、7年前から言っています。断り文句で会話が終わっていたのは、この通知が読者にも、ときに現場にも共有されていなかったからです。
事業所側が守るべき条件も、同じ通知に書かれています。
| 事業所が守るべきこと |
|---|
| 保険外サービスの事業の目的・運営方針・利用料等を、訪問介護の運営規程とは別に定めること |
| 会計を分離すること |
| 訪問介護の利用料とは別に費用を請求すること |
| 重要事項を記した文書をもって丁寧に説明し、内容・提供時間・利用料について利用者の同意を得ること |
逆に言えば、これらを整えていない事業所は保険外サービスを提供できません。「うちは保険外はやっていません」と言われるのは、意地悪ではなく体制の問題です。その場合は保険外専門の事業者を別に探すことになります。
60分の訪問を、どう分けるか
組み合わせ方には、はっきりした禁止事項が1つあります。
「利用者本人分の料理と同居家族分の料理を同時に調理するといった、訪問介護と保険外サービスを同時一体的に提供することは認めない」。これも通知の原文です。
認められているのは、順番に分けるやり方です。通知は「訪問介護の提供中に、いったん訪問介護の提供を中断した上で保険外サービスを提供し、その後に訪問介護を提供する場合」を認めています。
出典:厚生労働省「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(平成30年9月28日 老推発0928第1号ほか)
同じ60分でも、同時にやるとルール違反、区切ってやると適法です。形式的に見えますが、理由ははっきりしています。保険から給付される時間と、自費で払う時間を、記録上も会計上も明確に分けられなければ、保険財政と利用者負担の線が引けないからです。
実務上は、訪問介護計画書と保険外サービスの契約書が別々に作られ、請求も別々に来ます。明細を見て「保険外の15分がいくらか」がはっきり分かる形になっていれば、正しく運用されています。
家族の側から提案する言い方は、こうなります。「本人の分の調理を保険で40分お願いして、そのあと15分、父の分を保険外でお願いすることはできますか」。この形で聞けば、事業所は制度上検討できます。
事業所によって答えが違う理由
同じことを頼んでも、事業所によって「できます」「できません」が分かれます。家族から見ると理不尽ですが、構造的な理由があります。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村)
訪問介護を運営する法人の88%は、その1事業所しか運営していません。チェーンではなく、地域の小さな法人がほとんどです。保険外サービスの運営規程を別に作り、会計を分け、契約書を用意する——これは小さな事業所にとって相当な事務負担です。やっていない事業所が多いのは、当然といえば当然です。
だから、断られたときに確認すべきことは2つに分かれます。
| 聞くこと | その答えが意味すること |
|---|---|
| それは介護保険では対象外ということですか | 通知の線引きの話。事業所を変えても結果は同じ |
| 保険外サービスとしてお願いすることはできますか | その事業所の体制の話。他をあたれば見つかる可能性がある |
1つ目でつまずいているのか2つ目でつまずいているのかを分けないまま、「ここはダメだった」で終わってしまうケースがとても多くあります。
調べようとしても、情報が出てこない
では他の事業所を当たろう、となったときに次の壁が来ます。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村)
訪問介護は、ホームページを持たない事業所の割合が全サービス中で最も高く、40.3%です。2つに1つ近くが、外から何も分かりません。何を頼めるか、保険外をやっているか、料金はいくらか——サイトがなければ、電話で1件ずつ聞くしかありません。
これは偶然ではありません。介護の入口にあたるサービスほど情報が出てこない、という並びになっています。居宅介護支援(ケアマネ)も34.7%です。いちばん最初に選ばなければならないものが、いちばん比較しづらい。これが介護の入口の構造です。
地域差も大きく出ます。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村)
大阪では54.2%、東京では28.1%。同じ制度なのに倍近い差があります。西日本に高い県が集まっていて、大阪・和歌山・三重では半数前後の事業所が外からは見えません。これらの地域では、地域包括支援センターやケアマネジャーから事業所の一覧をもらうところから始めるほうが早くなります。
保険内では埋まらない穴がある
ここまでは「制度が線を引いているから頼めない」という話でした。しかしもう1つ、まったく別の理由で頼めないことがあります。その地域に、そのサービスをやっている事業所が存在しない場合です。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村)
夜間に来てもらえるサービス——定期巡回・随時対応型、夜間対応型訪問介護、看護小規模多機能型——が1つもない市区町村は1,089あり、全体の57.6%です。「夜に何かあったら来てもらう」という選択肢が、過半数の地域ではケアプランに書けません。制度としては存在するのに、地域には存在しないという状態です。
認知症対応型のデイサービスがない自治体は914(48.4%)、訪問看護がない自治体は363(19.2%)。ケアマネジャーが組めるプランは、その町にある事業所の範囲を超えられません。「なぜ提案してくれないのか」ではなく「そもそも選択肢がない」ことが、決して珍しくありません。
この2つ——制度の線と、地域の空白——を分けて考えると、次の一手が変わります。制度の線に当たったなら保険外で埋める。地域の空白に当たったなら、埋める手段が地域にあるかどうかを確かめ、なければ住まいを変えることまで含めて考える必要があります。
保険外サービスをいつ使うか
保険外サービスは全額自己負担です。だからこそ、いつ使うかを決めておかないと、際限なく増えるか、まったく使わないかのどちらかになります。使いどころは、おおむね3つに絞られます。
| 使いどころ | 具体的な場面 |
|---|---|
| 制度の線の外にあるが、放っておくと生活が回らないこと | 庭の草が伸びて近隣から苦情、ペットの世話、家族の分の食事 |
| 時間帯や曜日が保険のサービスと合わないこと | 早朝の見守り、深夜の付き添い、日曜の通院 |
| 一時的に手が足りない時期 | 退院直後の数週間、介護休業から復帰した直後、家族が出張・入院する期間 |
3つ目が、いちばん費用対効果が高い使い方です。在宅の体制は、立ち上げ直後と、家族の状況が変わった直後にいちばん壊れやすくなります。そこだけ厚く手当てして、落ち着いたら減らす。ずっと使い続ける前提で考えると高すぎますが、期間を区切れば現実的な金額に収まります。
保険外サービスは、訪問介護事業所が併設して提供している場合と、保険外専門の事業者が提供している場合があります。ケアマネジャーに「保険外もやっている事業所を知りませんか」と聞くのが最短です。ケアマネジャーは保険外サービスの手配そのものは業務ではありませんが、地域の事業所を最もよく知っています。
料金は時間単位が一般的で、内容によって幅があります。契約前に、最低利用時間、キャンセル料、交通費の扱い、深夜・早朝の加算があるかを確認してください。保険のサービスと違って上限がないので、月にいくらまで、と先に決めてから使い始めるのが安全です。
まとめ
| 押さえること | 内容 |
|---|---|
| 生活援助の線引き | 「直接、本人の日常生活の援助」に属するかどうか(老企第36号) |
| 本人以外はNG | 家族の分の食事・洗濯・掃除・買い物はすべて対象外 |
| 日常を超えるものはNG | 草むしり、ペットの世話、大掃除、窓拭き、植木の剪定 |
| 同居家族がいる場合 | 「障害・疾病がなくても、やむを得ない事情で家事が困難なら可」と通知にある |
| 医療的なこと | 体温・血圧・パルスオキシメータ・軟膏・湿布・点眼・内服・坐薬・爪切り・口腔清掃・耳あか・ストーマ処理・自己導尿補助・市販浣腸は可 |
| 院内介助 | 原則は病院スタッフ。ただし3条件を満たせば算定可。一律に断るのは国が否定している |
| 保険外との組み合わせ | 同時一体はNG、中断して提供するのはOK(老推発0928第1号) |
| 事業所差の理由 | 訪問介護法人の88%が1事業所のみ。保険外の体制がない事業所が多い |
| 調べにくさ | 訪問介護のホームページなし率40.3%は全サービス中で最高 |
| 地域の空白 | 夜間対応がない自治体1,089(57.6%)。制度があっても地域にない |
いちばん実務的な一手は、次に断られたときの聞き方を変えることです。「そうですか」で終わらせず、「それは介護保険の対象外ということですか。では保険外としてお願いすることはできますか」と続ける。この一言で、制度の話なのか事業所の体制の話なのかが分かれ、次に何をすればいいかが決まります。
そして、断られた内容をメモしておいてください。断られたことのリストは、そのまま「保険外で埋めるべきもの」のリストです。それが月にいくらになるかを一度計算しておくと、在宅を続けるか施設を考えるかの判断が、感覚ではなく数字でできるようになります。
よくある質問
同居家族がいると、生活援助は絶対に使えないのですか。
そうではありません。厚生労働省の通知(老企第36号)は、生活援助の要件である「家族等の障害、疾病等のため」について「障害、疾病がない場合であっても、同様のやむをえない事情により、家事が困難な場合をいうものであること」と明記し、さらに「個々の事情に応じ、介護支援専門員、市町村等現場の良識ある判断によるべきもの」としています。日中の就労で不在、同居家族自身が高齢や要介護、育児や別の介護を抱えている、といった事情は検討の対象になります。断られたときは、勤務時間や帰宅時刻まで具体的に伝えてケアマネジャーに再検討を求めてください。
ついでに家族の分も作ってもらうことは、本当にできないのですか。
介護保険の中ではできません。ただし2018年の通知(老推発0928第1号ほか)は、保険外サービスとして提供することを認めています。ここで重要なのが「同時一体的な提供は認めない」という条件で、本人の分と家族の分を同じ鍋で同時に作るのはNGです。訪問介護をいったん中断し、その時間を保険外として家族の分を作り、その後に訪問介護を再開する形なら適法です。請求も明細も別々になります。
草むしりやペットの世話は、なぜ頼めないのですか。
それをしなくても本人の日常生活に支障が生じない、と整理されているためです。国の通知は、草むしりとペットの世話を「保険外サービスとして提供するもの」の例として名指しで挙げています。つまり制度の側が最初から保険外での対応を想定している行為です。断られたのは事業所の判断ではないので、その事業所または別の事業者に保険外として頼めるかを聞くのが次の一手になります。
ヘルパーに爪を切ってもらうことはできますか。
できます。2005年の通知(医政発第0726005号)で、爪切りと爪やすりでやすりがけをすることは「原則として医行為ではない」とされています。ただし条件があり、爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、糖尿病等の疾患にともなう専門的な管理が必要でない場合に限られます。同じ通知で、体温・血圧の測定、パルスオキシメータの装着、軟膏の塗布、湿布の貼付、点眼、内服の介助、坐薬の挿入、口腔内の清掃、耳あかの除去、ストーマ装具の排泄物処理、自己導尿の補助、市販の浣腸も認められています。
たんの吸引や経管栄養は頼めますか。
この2つだけは例外的に、一定の研修を修了した介護職員が、登録を受けた事業所で行うことができます。ただしすべての訪問介護事業所ができるわけではないので、対応可能な事業所かどうかを確認する必要があります。インスリン注射、血糖測定、褥瘡の処置などはこの例外に含まれず、訪問看護の領域です。訪問看護が1事業所もない市区町村は363(19.2%)あるため、医療的なケアが必要になりそうな場合は、早い段階で地域に訪問看護があるかを確認しておいてください。
病院の中での付き添いを断られました。
厚生労働省の事務連絡(平成22年4月28日)は、院内介助について「基本的には院内のスタッフにより対応されるべきもの」としながら、「院内介助であることをもって、一概に算定しない取扱いとすることのないよう願います」と明記しています。認められる条件は、適切なケアマネジメントが行われていること、院内のスタッフによる対応が困難であること、利用者が介助を必要とする心身の状態であることの3つです。認知症で待合室から離れてしまう、問診に家族の補足が必要、といった状況は該当しえます。ケアマネジャーを通じて市町村の介護保険担当課に確認してもらってください。運用は市町村によって幅があります。
なぜ事業所によって「できる」「できない」が違うのですか。
保険の線引きは全国共通ですが、保険外サービスを提供できるかどうかは事業所ごとに違うためです。通知は、保険外サービスの運営規程を訪問介護とは別に定めること、会計を分離すること、費用を別に請求すること、文書で説明して同意を得ることを求めています。訪問介護を運営する法人の88%は1事業所しか運営していない小規模な法人なので、この体制を整えていない事業所が多くあります。「介護保険では対象外」なのか「うちでは保険外をやっていない」なのかを分けて聞いてください。前者なら事業所を変えても同じですが、後者なら他をあたる価値があります。
保険外サービスの料金の相場はどれくらいですか。
事業者と地域によって幅が大きく、一律の相場を示すことはできません。時間単位の設定が一般的です。契約前に、最低利用時間、キャンセル料、交通費の扱い、深夜・早朝の加算の有無を必ず確認してください。介護保険と違って上限がないので、月にいくらまで使うかを先に決めてから始めるのが安全です。退院直後や家族の状況が変わった直後など、期間を区切って厚く使い、落ち着いたら減らす使い方が現実的です。
ケアマネジャーは保険外サービスを手配してくれますか。
手配そのものはケアマネジャーの業務ではありませんが、地域の事業所を最もよく知っているのはケアマネジャーです。「保険外もやっている事業所を知りませんか」と聞くのが最短です。なお2018年の通知は、ケアプランに保険外サービスを位置づけることも想定しており、保険内と保険外を合わせて生活全体を組み立てること自体は制度が認めています。相談すること自体に遠慮は要りません。
頼みたいサービスが、そもそも地域にありません。
それは制度の線引きとはまったく別の問題です。夜間に来てもらえる3つのサービスが1つもない市区町村は1,089(57.6%)、認知症対応型のデイサービスがない市区町村は914(48.4%)あります。ケアマネジャーが組めるプランは、その町にある事業所の範囲を超えられません。まず地域に何があるかを確認し、埋められない穴が本人の生活の核心(夜間・医療・認知症)にかかっているなら、在宅を続けるか住まいを移すかという判断に切り替える必要があります。