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「ヘルパーさんに来てもらいたいのに、どこも空きがないと言われる」
在宅介護を始めた方から、いちばんよく聞く困りごとです。
事業所の数が足りないわけではありません。訪問介護は全国に35,044事業所あり、介護サービスの中で最多です。それでも見つからない。理由は別のところにあります。
全国215,404の介護事業所を集計したデータから、その構造をお伝えします。
訪問介護で何をしてもらえるか
まず整理しておきます。訪問介護は大きく2つに分かれます。
| 区分 | 内容 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 身体介護 | 入浴、排泄、食事、着替え、体位変換、通院の付き添い | 20分〜1時間以上 |
| 生活援助 | 調理、洗濯、掃除、買い物、薬の受け取り | 20分〜45分以上 |
そして「できないこと」があります。ここを知らずに頼んで断られるケースが多くあります。
| できないこと | 理由 |
|---|---|
| 本人以外の食事を作る | 本人へのサービスに限られる |
| 本人が使わない部屋の掃除 | 同上 |
| 庭の草むしり、ペットの世話 | 日常生活の援助の範囲外 |
| 大掃除、窓拭き、家具の移動 | 日常的な家事の範囲外 |
| 金銭の管理、預貯金の引き出し | 原則不可 |
| 家族の分の買い物 | 本人の分のみ |
| 医療行為 | 一部を除き不可 |
同居家族がいる場合、生活援助は原則使えません。やむを得ない事情(家族が働いている、病気、障害があるなど)があれば認められますが、ケアマネジャーが理由をプランに記載する必要があります。
事業所は多い。でも1つひとつが小さい
全国の訪問介護事業所35,044か所を運営しているのは24,670法人です。そのうち──
21,702法人(88%)が、事業所を1つしか運営していません。
つまり大半が、数人から十数人のヘルパーで回している小さな事業所です。大手チェーンのようにヘルパーを融通し合える体制ではありません。
1人が辞めると、その分の稼働がそのまま消えます。だから「空きがない」と言われる。事業所の数の問題ではなく、1事業所あたりの余力の問題です。
地域の分布
| 値 | |
|---|---|
| 全国の事業所数 | 35,044 |
| 存在する自治体 | 1,775 |
| ゼロの自治体 | 114 |
| 1自治体あたりの中央値 | 7事業所 |
| 1事業所しかない自治体 | 286 |
出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで重複を整理して集計。
286の自治体では事業所が1つだけ。そこが埋まっていれば、選択肢がありません。
そして、40%はネットに情報を出していない
訪問介護事業所の40.2%は、公式サイトを持っていません。
これは全サービス種別の中でも高い数字です。参考までに、特別養護老人ホームは3.4%です。
理由は上と同じで、小規模な事業所が多いためです。ホームページを作る余力も、その必要性もない。多くはケアマネジャーからの紹介だけで利用者が埋まります。
地域差は2倍
| 情報が出ていない県 | 事業所数 | HPなし率 |
|---|---|---|
| 大阪府 | 5,096 | 54.2% |
| 和歌山県 | 574 | 53.7% |
| 三重県 | 582 | 48.1% |
| 宮崎県 | 444 | 48.0% |
| 情報が出ている県 | 事業所数 | HPなし率 |
|---|---|---|
| 東京都 | 2,951 | 28.0% |
| 新潟県 | 361 | 28.3% |
| 長野県 | 468 | 29.5% |
| 神奈川県 | 2,111 | 32.8% |
大阪府は事業所数5,096で全国最多なのに、半数以上がネットに情報を出していません。数の多さと調べやすさは、まったく別の話です。
つまりネットで「地域名+訪問介護」と検索しても、事業所の4割はそもそも出てきません。自力で探そうとすると、最初から6割しか見えていない状態になります。
だから、ケアマネジャー経由が基本
訪問介護を探す正しい方法は、担当のケアマネジャーに依頼することです。
ケアマネジャーは地域の事業所と日常的にやり取りしていて、どこに空きがあるか、どこが何を得意としているかを把握しています。ネットに出ていない事業所も知っています。
もしケアマネジャーがまだ決まっていないなら、地域包括支援センターへ。市区町村が設置している無料の相談窓口です。
それでも見つからないときの6つのコツ
ケアマネジャーに頼んでも決まらない場合、条件の出し方を変えると動くことがあります。
1. 曜日と時間帯を広げる
平日の午前中に希望が集中します。多くの家庭が同じ時間を求めるためです。
| 時間帯 | 混み具合 |
|---|---|
| 平日 8〜11時 | 最も混む(起床、朝食、排泄の介助) |
| 平日 11〜14時 | 混む(昼食) |
| 平日 14〜17時 | 比較的空いている |
| 平日 17〜19時 | 混む(夕食) |
| 土日 | 比較的空いている |
「この時間でないと駄目」を一度外して、可能な範囲を全部伝えてください。
2. 短時間から始める
いきなり週3回・1回2時間を求めると、受け手が限られます。週1回・30分から始めて、関係ができてから増やす方が入りやすいです。
3. 複数の事業所を組み合わせる
1つの事業所ですべての曜日を埋める必要はありません。月水は A 事業所、金は B 事業所、という組み方ができます。ケアマネジャーに「複数でも構いません」と伝えてください。
4. 隣接する市区町村も対象に入れる
訪問介護は地域密着型ではないため、市外の事業所も利用できます。(訪問できる距離であれば)
自宅が市境に近い場合、隣の市の事業所の方が近いこともあります。
5. 小規模多機能型を検討する
通い・訪問・泊まりを1つの事業所がまとめて提供します。「訪問だけ」で探すより枠が取りやすいことがあります。
ただし全国5,373か所で、608自治体(32%)には存在しません。地域にあるかは確認が必要です。
6. 定期巡回を確認する
1日複数回の短時間訪問と、緊急時の呼び出しがセットになった月額定額のサービスです。排泄介助が1日に何度も必要な場合は、訪問介護を細切れに使うよりこちらが向いています。
ただし1,418事業所しかなく、1,273自治体(67%)には存在しません。
依頼するときに伝えるべきこと
事業所側も、条件が合わないと受けられません。最初に正確に伝えると話が早く進みます。
| 伝えること | 具体例 |
|---|---|
| やってほしいこと | 「入浴介助」「排泄介助」「調理」など具体的に |
| 本人の状態 | 歩けるか、体重、麻痺の有無 |
| 認知症の有無と症状 | 拒否や暴言があれば必ず伝える |
| 医療的ケア | たん吸引などの有無 |
| 家族の在宅状況 | 誰かいるのか、独居なのか |
| 住環境 | エレベーターの有無、駐車場、玄関の段差 |
| 外せない曜日・時間 | 通院日、家族が対応できる日 |
とくに認知症で拒否がある、暴言があるという場合は、隠さず伝えてください。
ヘルパーが訪問して初めて分かると、そのまま続けられなくなります。最初から分かっていれば、対応できる経験のあるヘルパーを充ててもらえます。
ヘルパーが来る日の準備
初回訪問の前に整えておくと、その後がスムーズです。
| 準備すること | 理由 |
|---|---|
| 使う道具の場所を決める | 掃除用具、タオル、着替えの位置を固定する |
| 手順を紙に書いて貼る | 担当者が代わっても同じようにできる |
| 本人に説明しておく | 「知らない人が家に入る」と混乱する |
| 貴重品を片付ける | トラブルを未然に防ぐ |
| 鍵の受け渡しを決める | 不在時に入る場合はキーボックス等 |
本人への説明がいちばん大事です。認知症がある場合、突然知らない人が来ると強く拒否することがあります。
「体を楽にするために来てもらう人」「お手伝いに来てくれる人」といった説明を、事前に何度か伝えておいてください。
初回で拒否されたら
珍しくありません。1回で諦めないでください。
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 家族が同席する | 初回だけでも一緒にいる |
| 短時間から始める | 15〜20分の掃除だけなど |
| 顔なじみを作る | 同じヘルパーに数回来てもらう |
| 目的を変える | 介護ではなく「話し相手」から入る |
事業所に「拒否がある」と伝えておけば、経験のあるヘルパーを充ててもらえます。
よくある失敗
| 失敗 | なぜ起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 平日午前だけで探した | 家族の都合を優先 | 夕方・土日も候補に入れる |
| いきなり週3回2時間を希望 | 必要量から逆算した | 短時間から始めて増やす |
| 1事業所で全部埋めようとした | 分けられると知らない | 複数の組み合わせを依頼 |
| 認知症の症状を隠した | 断られるのが怖い | 最初に伝える方が続く |
| ネットだけで探した | 40%が情報なし | ケアマネか地域包括へ |
| 「できないこと」を頼んだ | 範囲を知らない | 事前に確認する |
| 市内だけで探した | 制限があると思い込み | 市外の事業所も使える |
ヘルパーとの付き合い方
決まった後も、続けるための工夫があります。
| やること | 理由 |
|---|---|
| やってほしいことを紙に書いて貼る | 担当者が代わっても伝わる |
| 本人の好みを伝える | 食事、入浴の温度、呼び方など |
| 変更は事業所に伝える | ヘルパー個人に直接頼まない |
| 感謝を伝える | 人が動いている。関係が続く |
ヘルパー個人に直接お願いごとをするのは避けてください。サービス内容の変更はケアプランに関わるため、事業所またはケアマネジャーを通す必要があります。ヘルパー本人も困ります。
また、担当者が固定とは限りません。シフト制なので複数の人が来ます。だからこそ、手順を紙にしておくと引き継ぎがスムーズです。
ヘルパーが確保できないときは
在宅介護は、訪問介護が入らないと成立しません。
家族だけで、食事・入浴・排泄をすべて担うのは、働きながらでは持ちません。数か月で限界が来ます。
ヘルパーが確保できない状態が続くなら、在宅を続けること自体を見直す時期かもしれません。
| 代替案 | 内容 |
|---|---|
| デイサービスを増やす | 全国24,124か所。入浴も食事も対応 |
| ショートステイを定期的に | 14,963か所。ゼロの自治体は83だけ |
| 小規模多機能型に切り替える | 通い・訪問・泊まりを一体で |
| 施設入居を検討する | 限界が来る前に情報だけでも |
在宅を続けながらでも、施設の情報は集めておいてください。
限界が来てから探すと、空いているところに入るしかなくなります。資料を取り寄せておくだけで、判断の速さが違います。
まとめ
- 事業所は多いが、88%が1事業所のみの小規模運営。余力がないので空きが出にくい
- 40%はネットに情報がない。自力で検索しても4割は見えない
- ケアマネジャー経由が基本。いなければ地域包括支援センターへ
- 時間帯を広げる、短時間から始める、複数事業所を組み合わせる
- 市外の事業所も使える
- できないことを知っておく。同居家族がいると生活援助は原則不可
- 確保できない状態が続くなら、在宅の継続を見直す時期
限度額を使い切っているか確認する
見落とされがちですが、区分支給限度額に余裕があるのに使っていないケースが多くあります。
| 要介護度 | 区分支給限度額(月) |
|---|---|
| 要介護1 | 約17万円 |
| 要介護2 | 約20万円 |
| 要介護3 | 約27万円 |
| 要介護4 | 約31万円 |
| 要介護5 | 約36万円 |
※ 金額は目安。地域区分により変動します。自己負担はこの1〜3割です。
ケアプランに利用率が書かれています。50%程度なら、まだ増やせます。
遠慮して使っていないと、特養の申込みでも不利になります。「在宅サービスを使い切ってもなお厳しい」という記録が、必要性の証明になるからです。
次にやること
まずケアマネジャーに、上のコツを踏まえて条件を出し直してください。それでも決まらないなら、在宅以外の選択肢も並行して見ておいてください。
※ 無料で利用できます。特別養護老人ホームはこのサービスの対象外です。特養は市区町村の窓口かケアマネジャーへ。
よくある質問
同居している家族がいると、ヘルパーは使えませんか。
身体介護は使えます。生活援助(調理・掃除など)は原則使えませんが、家族が働いている、病気や障害がある、高齢であるといった事情があれば認められます。ケアマネジャーが理由をケアプランに記載する必要があるので、家族の状況を正確に伝えてください。
ヘルパーが合わない場合、変えてもらえますか。
変えてもらえます。事業所またはケアマネジャーに伝えてください。ヘルパー本人に直接言う必要はありません。相性の問題は誰にでもあるので、遠慮しなくて構いません。
費用はどのくらいかかりますか。
介護保険の1〜3割負担です。身体介護30分未満で1回あたり数百円程度(自己負担1割の場合)が目安です。ただし要介護度ごとの限度額を超えると全額自己負担になります。ケアマネジャーが限度額内で調整します。
通院の付き添いは頼めますか。
条件付きで可能です。「通院等乗降介助」というサービスがあり、車の乗り降りの介助が対象になります。ただし病院内での待ち時間や受診の付き添いは原則対象外です(院内での介助が必要と認められる場合を除く)。
緊急のときも来てもらえますか。
通常の訪問介護はあらかじめ決まった時間に来るサービスです。緊急時の呼び出しには対応しません。呼び出し対応が必要なら定期巡回・随時対応型を検討してください。ただし1,273自治体には存在しません。
市外の事業所でも使えますか。
使えます。訪問介護は地域密着型サービスではないため、市区町村をまたいで利用できます。訪問できる距離であることが条件です。自宅が市境に近い場合は、隣の市の事業所も候補に入れてください。
ヘルパーが毎回違う人で不安です。
シフト制なので複数の人が来るのが一般的です。やってほしいことを紙に書いて貼っておくと、誰が来ても手順が伝わります。どうしても固定してほしい場合は事業所に相談してみてください(人員体制によります)。
サービスの内容を後から変えられますか。
変えられます。ケアマネジャーに相談してください。ケアプランの変更手続きが必要ですが、費用はかかりません。本人の状態は変化するので、定期的な見直しはむしろ当然です。月1回の訪問時に伝えるのが確実です。
男性のヘルパーを断ることはできますか。
希望は伝えられます。入浴や排泄の介助では同性を希望する方が多く、事業所も配慮します。ただし人員体制によっては応じられない場合もあります。契約前に「同性介助を希望する」と伝えておいてください。
ヘルパーに家の物が壊されたら、どうなりますか。
事業所が損害賠償保険に加入しているのが一般的です。契約前に保険の有無を確認しておいてください。万一の際は、まず事業所に連絡します。ヘルパー個人と直接やり取りしないでください。
事業所が地域に1つしかありません。
全国で286の自治体が、この状況です。まずその事業所に空きがあるか確認し、なければ隣接する市区町村の事業所を当たってください。市外の事業所も利用できます。それも難しければ、デイサービスやショートステイで補う形をケアマネジャーと相談してください。
この記事のデータについて
出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)/2026年6月末時点
同一事業所が複数の指定区分で重複登録されているケースを、事業所名と住所で名寄せして整理しています。都道府県別の比率は事業所数300件以上の県で算出しています。
サービスの利用可否や提供範囲は事業所ごと、また市区町村の運用によって異なります。実際の利用は担当のケアマネジャーにご相談ください。制度の内容は改正により変更される場合があります。