認知症でも入れる施設はどこか|断られる本当の理由は3つ

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「認知症があると、施設に入れないのでは」

そう心配される方が多いのですが、実際は逆です。認知症の方のために作られた施設が、全国に14,181か所あります。特別養護老人ホームの1.8倍です。

問題は「入れるかどうか」ではありません。どの症状だと断られるのか、そしてどうやって探すのかです。

この記事では、全国35,538施設の公的データをもとに、その2点をはっきりさせます。

認知症の方が入れる施設は3種類ある

種類 全国の施設数 月額の目安 特徴
グループホーム 14,181 12〜20万円 認知症の方専用。5〜9人の小規模
特別養護老人ホーム 10,444 5〜15万円 要介護3以上。費用は安いが待機あり
介護付有料老人ホーム 4,693 15〜30万円以上 費用は高いが空きがあれば早い

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで重複を整理して集計。特養は広域型7,916と地域密着型2,528の合計。

最有力はグループホームです。認知症と診断された方だけが入る施設で、5〜9人が1つのユニットで暮らします。少人数で顔ぶれが変わらないため、認知症の方が混乱しにくい設計になっています。

グループホームの入居条件

3つの条件をすべて満たす必要があります。

条件 内容 注意点
医師の診断 認知症と診断されていること 診断書が必要。「もの忘れが多い」だけでは入れない
要介護度 要支援2以上 要支援1では入れない
住民票 その市区町村にあること 地域密着型のため。遠方の親は呼び寄せられない

住民票の条件がいちばん見落とされます。

「遠方の親を自分の近くのグループホームに」と考えても、そのままでは申し込めません。先に住民票を移す必要があります。

住民票を移すと、介護保険の保険者もその市区町村に変わります。手続きは市区町村の窓口で相談してください。転居先での要介護認定の引き継ぎもあわせて確認が必要です。

住民票を移さずに入れる施設

呼び寄せを考えているなら、こちらが選択肢になります。

種類 市外・県外から申し込めるか
介護付有料老人ホーム できる
特別養護老人ホーム(広域型・7,916件) できる
介護老人保健施設 できる
グループホーム できない
地域密着型特養(2,528件) できない

断られる本当の理由は「認知症」ではない

認知症そのものを理由に断られることは、実はあまりありません。断られるのはこの3つです。

理由 内容 対応
医療的ケア たん吸引、経管栄養、インスリン、透析、酸素療法 看護師常駐の施設を探す。医療対応可の有料老人ホームか介護医療院
症状の程度 暴力、大声、激しい徘徊 薬の調整で落ち着くことがある。主治医に相談してから施設を当たる
要介護度 条件に合わない 特養は要介護3以上、GHは要支援2以上

グループホームは看護師の配置義務がありません。そのため医療的ケアが必要な方は、ここで断られることが最も多くなります。

見学や相談のときは、最初に正直に伝える

隠して話を進めても、入居前の面談で必ず判明します。そのとき一からやり直しになる方が、ずっと消耗します。

伝えるべきこと。

  • 医療的ケアの有無と内容(具体的に)
  • 認知症の症状(徘徊、暴言、昼夜逆転、失禁など)
  • 要介護度(認定前なら申請中と伝える)
  • 服薬の状況

探すときの最大の障害

ここからは、あまり語られていない話です。

全国のグループホーム14,181施設を運営しているのは8,394法人。そのうち6,261法人(75%)は、施設を1つしか持っていません。

運営主体の内訳はこうです。

運営主体 割合
営利法人(株式会社等) 55%
社会福祉法人 23%
医療法人 14%
NPO法人 3%

特養が社会福祉法人94%なのに対し、グループホームは営利法人が過半数です。ただしその多くは小規模な事業者で、大手チェーンばかりではありません。

そして、この構造が探しにくさを生んでいます。

グループホームの24.2%は、公式サイトを持っていません。

これは高齢者向け住まいの中で最も高い数字です。特別養護老人ホームは3.4%ですから、7倍の差があります。

種類 公式サイトがない割合
グループホーム 24.2%
介護付有料老人ホーム 10.2%
介護老人保健施設 6.3%
特別養護老人ホーム 3.4%

つまり、いちばん選択肢が多いはずのグループホームが、いちばんネットで調べられないという状態です。

小さな事業者が多く、ホームページを作る余力がないためです。運営の質とは関係ありません。ただ、探す側にとっては「比較する材料がない」という現実的な問題になります。

サイトを持たない施設の情報も、紹介サービスは把握しています。

ネットに出てこない施設を含めて、条件に合うところの資料をまとめて取り寄せられます。

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地域によって、調べられる度合いが3倍違う

グループホームの情報開示は、都道府県によって大きく差があります。

情報が出ていない県 HPなし率 GH数
秋田県 39.5% 190
茨城県 38.6% 267
長崎県 38.2% 330
宮崎県 38.2% 186
青森県 37.3% 314
情報が出ている県 HPなし率 GH数
東京都 11.9% 714
奈良県 13.2% 151
新潟県 15.0% 286
大阪府 15.1% 680
長野県 15.5% 265

秋田県では約4割がネットに情報を出していません。東京の3倍以上です。

こうした地域では、自力でネットを検索しても選択肢の6割しか見えません。ケアマネジャーか紹介サービスを使わないと、実質的に探せないということになります。

お住まいの地域に、いくつあるか

グループホームは全国1,698の市区町村にあります。逆に言えば、191の市区町村にはグループホームが1つもありません。

そして施設数の中央値は5施設です。半数の自治体では、選べる候補が5つ以下ということになります。

参考までに、グループホームが多い自治体はこちらです。

自治体 GH数
愛媛県 松山市 131
鹿児島県 鹿児島市 121
北海道 旭川市 82
岡山県 倉敷市 76
広島県 福山市 74

都市部にお住まいなら選択肢は多いですが、地方では「あるかないか」の世界です。まずお住まいの地域に何があるかを確認してください。

施設に入る前に:認知症の方が使える在宅サービス

施設だけが選択肢ではありません。在宅で続けるための仕組みもあります。

サービス 全国の事業所数 ない自治体 内容
認知症対応型デイサービス 2,951 888(47%) 少人数で認知症の方に合わせた通所
小規模多機能型居宅介護 5,373 608(32%) 通い・訪問・泊まりを同じ事業所が提供
看護小規模多機能型 1,142 1,332(71%) 上記に訪問看護が加わる

認知症対応型デイサービスは、約半分の自治体に存在しません。

通常のデイサービスより少人数で、認知症の方に合わせた対応をします。在宅で介護を続けながら、日中を預けることができる仕組みですが、地域差が非常に大きい領域です。

小規模多機能型は、通い・訪問・泊まりを1つの事業所が組み合わせて提供します。急に泊まりに切り替えられるのが強みで、症状が不安定な認知症の方には向いています。

在宅を続けるか施設に移るかは、これらの選択肢が地域にあるかどうかでも変わります。担当のケアマネジャーに確認してみてください。

グループホームでの暮らし

施設の種類が決まっても、実際どう過ごすのかが分からないという声をよく聞きます。

1日の流れ(一般的な例)

時間帯 内容
起床、洗面、朝食の準備を一緒にする
午前 掃除、洗濯、買い物などの家事に参加
昼食。調理に関わることも
午後 散歩、体操、レクリエーション、入浴
夕方 夕食の準備
就寝

特徴は「家事に参加する」ことです。

他の施設が「サービスを受ける」場所であるのに対し、グループホームはできることは自分でやるという設計になっています。米をとぐ、洗濯物をたたむ、テーブルを拭く。こうした役割があることが、認知症の進行を緩やかにすると考えられています。

「何もしなくていいですよ」と言われる施設よりも、「一緒にやりましょう」と言う施設の方が、グループホームとしては適切です。見学のときに確認してみてください。

費用の内訳

項目 目安 備考
家賃 3〜6万円 地域差が大きい
食費 3〜5万円 1日3食
光熱費 1〜2万円
介護サービス費 2〜3万円 要介護度と自己負担割合による
その他 1〜3万円 おむつ、医療費、理美容など
月額合計 12〜20万円

特養と違い、グループホームには食費・居住費の軽減制度(負担限度額認定)がありません。この点は費用を考えるうえで重要です。

なお自治体によっては、家賃の一部を助成する制度を独自に設けている場合があります。市区町村の高齢福祉課に確認してみてください。

よくある失敗

失敗 なぜ起きるか 対策
遠方の親をGHに呼び寄せようとした 地域密着型と知らない 住民票を先に移す。または広域型を選ぶ
診断書がなくて申し込めなかった 「もの忘れ」で済ませていた 先に医師の診断を受ける
医療的ケアを伝えずに進めた 断られるのが怖い 最初に伝える。必ず判明する
ネットだけで探して候補が見つからない 24.2%が情報を出していない ケアマネか紹介サービスを使う
症状が激しいまま施設を当たった 薬の調整をしていない 主治医に相談してから動く
特養だけを待った 待機が長い GHと並行して検討する

手続きの流れ

段階 やること 備考
1 医師の診断を受ける 認知症の診断書。GHには必須
2 要介護認定を申請する 申請から結果まで原則30日
3 ケアマネジャーを決める 地域の事情を把握している
4 医療的ケアの有無を整理する 選択肢が大きく変わる
5 住民票の場所を確認する GHは原則その市区町村のみ
6 特養に申し込む(要介護3以上) 待機が長いので早めに
7 GH・有料老人ホームの資料を取り寄せる まとめて請求できる
8 見学する 最低3件

まとめ:どう動くか

  1. まず医師の診断を確認する。グループホームには診断書が必要
  2. 医療的ケアの有無を整理する。たん吸引などがあると選択肢が絞られる
  3. 住民票のある市区町村を確認する。GHは原則そこだけ
  4. 並行して特養に申し込んでおく。待機が長いので早いほど有利
  5. 民間施設はまとめて資料請求する。サイトのない施設も含めて比較できる
  6. 在宅サービスの選択肢も確認する。地域にあれば施設入居を遅らせられる

次にやること

候補が2〜3か所に絞れたら、必ず見学してください。認知症の方の施設は、入居者の様子とスタッフの接し方に差が出ます。パンフレットでは分かりません。

資料を取り寄せて、見学を申し込む

※ 無料で利用できます。特別養護老人ホームはこのサービスの対象外です。特養は市区町村の窓口かケアマネジャーへ。

よくある質問

認知症の診断がないと、グループホームには入れませんか。

入れません。医師による認知症の診断が必須です。「もの忘れが増えた」という状態では申し込めないため、まず医療機関を受診してください。かかりつけ医から、もの忘れ外来や認知症疾患医療センターを紹介してもらえます。

要介護1ですが、グループホームに入れますか。

入れます。グループホームは要支援2以上が対象なので、要介護1なら条件を満たします。ただし特別養護老人ホームは原則要介護3以上なので、そちらは対象外です。

徘徊がひどいのですが、受け入れてもらえますか。

程度によります。他の入居者の安全に関わるため、激しい場合は断られることがあります。ただし薬の調整や環境の変化で落ち着くケースも多いので、まず主治医に相談してください。症状が安定してから施設を当たる方が、話が進みます。

たん吸引が必要ですが、グループホームは無理ですか。

難しいことが多いです。グループホームには看護師の配置義務がありません。医療的ケアが必要な場合は、看護師が常駐する介護付有料老人ホーム、介護医療院、または医療対応可能な施設を探すことになります。

遠方の親を、自分の近くのグループホームに入れたいのですが。

そのままでは申し込めません。グループホームは地域密着型サービスで、原則としてその市区町村に住民票がある方が対象です。呼び寄せる場合は、先に住民票を移す必要があります。住民票を移さずに入れる施設としては、介護付有料老人ホーム、広域型の特養、老健があります。

グループホームは何人くらいで暮らすのですか。

5〜9人で1つのユニットを作り、共同生活をします。1施設あたり1〜2ユニットが一般的です。少人数で顔ぶれが変わらないことが、認知症の方の混乱を減らすとされています。

認知症が進行したら、退去しなければなりませんか。

施設によります。寝たきりになった、医療的ケアが常時必要になったといった場合に退去要件に該当することがあります。契約前に「どういう状態になったら退去をお願いされますか」を必ず確認し、契約書のどこに書いてあるかまで見ておいてください。

見学のとき、どこを見ればいいですか。

入居者の様子とスタッフの接し方です。認知症の方の施設は、ここに差が出ます。入居者が全員テレビの前に座らされていないか、スタッフが子ども扱いしていないか、何か役割を持って動いている方がいるか。できれば食事や家事の時間帯に行ってください。生活の実態がいちばん出ます。

空きがないと言われました。どうすればいいですか。

「系列の他の施設に空きはありますか」と聞いてください。全国のグループホームのうち、複数施設を運営する法人が持つものが少なくありません。1件断られたからといって、その法人との話が終わるわけではありません。また、空室待ちの登録ができるかも確認してください。

費用は特養より高いですか。

一般的にはグループホームの方が高くなります。特養が月5〜15万円に対し、グループホームは12〜20万円が目安です。ただし特養は要介護3以上・待機ありという条件があるため、単純な比較はできません。所得が低い場合、特養には食費・居住費の軽減制度(負担限度額認定)があります。

この記事のデータについて

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)/2026年6月末時点

同一施設が複数の指定区分で重複登録されているケースを、施設名と住所で名寄せして整理しています。公表データの「定員」欄は未報告が半数近くを占めるため集計に使用せず、施設の「数」のみを用いています。都道府県別の比率はグループホーム150件以上の県で算出しています。

受け入れ条件は施設ごとに異なります。実際の可否は各施設にご確認ください。制度の内容は改正により変更される場合があります。