老人ホーム紹介サービスはなぜ無料か|紹介されない施設が43%

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老人ホームを探していると「無料で相談できます」「無料で見学を手配します」というサービスに行き当たります。

親身に相談に乗ってくれて、資料もまとめて届く。それでこちらは1円も払わない。気持ち悪いと感じた方は、まっとうな感覚です。

仕組みを説明します。あわせて、このサービスを使うときに知っておくべきいちばん重要な注意点もお伝えします。

無料の理由:施設側が紹介料を払っている

紹介サービスは、入居が決まると施設から紹介手数料を受け取ります。相場は入居者1人あたり、月額利用料の1〜3か月分程度と言われます。

つまりお金の流れはこうです。

あなた ──(無料で相談)── 紹介サービス ──(紹介料)── 施設

あなたが払わないだけで、誰も損をしていないわけではありません。紹介料は施設の運営コストに含まれ、めぐりめぐって入居費用の一部になっています。

無料という言葉を額面通りに受け取らず、「施設が広告費を払っている」と理解しておくのが正確です。

紹介会社の種類

一口に「紹介サービス」といっても、いくつか性格が違います。

種類 特徴 向いている場面
大手ポータル型 掲載施設数が多い。Webで検索・比較できる 自分で比較したい
相談員が付くタイプ 電話や面談で条件を聞き、候補を絞る 何から手をつけるか分からない
地域密着型 特定エリアに強い。施設との関係が深い 地方で、地域の実情を知りたい

どのタイプでも、収益構造は同じです。施設から紹介料を受け取ります。

なぜ施設は、紹介料を払ってでも埋めたいのか

ここは公的データを見ると腑に落ちます。

全国の高齢者向け住まい35,538施設を運営しているのは、17,430の法人です。このうち──

11,155法人(64%)は、施設を1つしか運営していません。

運営規模 法人数 割合
1施設のみ 11,155 64%
2〜4施設 5,256 30%
5施設以上 1,019 5.8%

5施設以上を持つ大手は1,019法人にすぎません。

つまり、あなたが検討する施設の多くは、営業部門も広報担当もいない小さな事業者だということです。ホームページを持っていない施設が全体の13.4%あるのも、同じ理由です。

自力で入居者を集める手段がない。だから紹介会社に頼る。これが「無料」を成立させている構造です。

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで重複を整理して集計。

最大の注意点:紹介されない施設がある

ここがこの記事でいちばん大事な部分です。

紹介サービスは施設から紹介料をもらいます。裏を返せば、紹介料を払わない施設は、紹介されません。

全国35,538施設の内訳を、この観点で分けるとこうなります。

区分 種類 施設数
紹介の対象になりやすい グループホーム 14,181
介護付有料老人ホーム 4,693
サービス付き高齢者向け住宅 662
軽費老人ホーム 575
小計 20,111
原則として対象外 特別養護老人ホーム 7,916
介護老人保健施設 3,994
地域密着型特養 2,528
介護医療院 933
介護療養型医療施設 56
小計 15,427

特別養護老人ホームは、紹介サービスでは基本的に扱われません。社会福祉法人が運営する公的性格の強い施設で、紹介料を払う仕組みがないからです。特養は市区町村の窓口か、施設に直接申し込みます。

老健も同様です。こちらは病院の地域連携室やケアマネジャー経由が基本になります。

つまり紹介サービスに相談すると、選択肢の43%が最初から視野に入っていない状態で話が進みます。

これは紹介サービスが悪いという話ではありません。そういう仕組みだと知らずに使うと、費用の安い選択肢を見落とすという話です。

地域によって、紹介サービスの有効性が2倍違う

紹介対象になる施設の割合は、都道府県によって大きく違います。

民間施設の割合が高い県 割合
佐賀県 68.4%
神奈川県 68.1%
東京都 66.9%
北海道 64.2%
愛媛県 63.3%
民間施設の割合が低い県 割合
山梨県 37.7%
茨城県 43.2%
栃木県 45.2%
新潟県 46.3%
山形県 46.5%

神奈川県68.1%に対して山梨県37.7%。

神奈川では施設の約7割が紹介サービスの対象になるので、相談すればほぼ全体像が見えます。

一方、山梨では6割以上が公的施設です。紹介サービスだけに頼ると、地域の選択肢の大半を見落とすことになります。こうした地域では、市区町村の窓口とケアマネジャーの比重が上がります。

それでも紹介サービスに価値がある場面

構造を理解したうえで言うと、使う価値がある場面は明確にあります。

1. 情報が公開されていない施設が多い地域

公式サイトを持たない施設の割合は、地域によって違います。当サイトの集計では、施設数の少ない自治体ほど情報が出ていません。

その自治体の施設数 自治体数 公式サイトがない割合
1〜4施設 477 19.2%
5〜9施設 387 18.0%
10〜19施設 407 15.3%
20〜49施設 404 13.0%
50施設以上 166 11.8%

選択肢が少ない地域ほど、その少ない選択肢すら調べられない。この状況では、施設の情報を持っている紹介会社の価値は実際に高いです。

とくにグループホームは全体の24.2%が公式サイトを持っていません。ネットで比較しようとしても、4件に1件は存在すら分かりません。

2. 急いでいるとき

退院日が決まっている、家族が限界に近い。こういう場面では、1件ずつ電話して空室を確認する時間がありません。空室状況をまとめて把握している紹介会社は、率直に速いです。

3. 認知症で受け入れ先が限られるとき

認知症の程度によっては、断られる施設が出てきます。どこが受け入れているかを個別に当たるのは消耗します。

4. 予算の上限がはっきりしているとき

「月18万円まで」と伝えれば、その範囲の施設だけを出してもらえます。自分で1件ずつ料金表を確認する手間が省けます。

使うときに伝えるべきこと

最初に条件を正確に伝えると、話が早く進みます。曖昧なまま進めると、後で候補がすべて条件外だったということになります。

伝えること 具体例
要介護度 認定前なら「申請中」と伝える
医療的ケア たん吸引、経管栄養、インスリン、透析の有無
認知症の症状 徘徊、暴言、昼夜逆転の有無と程度
予算の上限 月額でいくらまでか。一時金は出せるか
希望エリア 「○○市内」「実家から車で30分以内」など
時期 「今すぐ」か「1年以内に」か

医療的ケアと認知症の症状は、隠さず伝えてください。入居前の面談で必ず判明します。そのとき一からやり直す方が、はるかに消耗します。

使うときの注意点

注意点 内容
複数社に登録しない 同じ施設に別々の会社から打診が行き、施設側が混乱する
「まだ検討段階」と伝える 連絡の頻度が下がる
提案された施設をそのまま信じない 紹介料の高い施設が優先される可能性はゼロではない
必ず自分で見学する 資料と実物は違う
特養は自分で申し込む 紹介サービスでは扱われない

提案が2〜3件しか出てこない場合は、条件を広げるか、別の会社にも相談してください。その会社の提携先が少ないだけの可能性があります。

使い方:ケアマネと併用するのが正解

紹介サービスだけに頼らないでください。特養が抜け落ちるからです。

現実的な進め方はこうです。

誰に 何を頼むか
担当ケアマネジャー 特養を含めた地域の全体像。紹介料と無関係の立場で話が聞ける
紹介サービス 有料老人ホーム・グループホームの比較と資料請求
市区町村の窓口 特養の申込み、負担限度額認定の申請

この3つを同時に回すのが、いちばん取りこぼしが少ない方法です。

まだケアマネジャーが決まっていない場合は、地域包括支援センターに相談してください。市区町村が設置している無料の窓口です。

民間施設の資料をまとめて取り寄せる

仕組みを理解したうえで使うなら、紹介サービスは有効です。有料老人ホームやグループホームを検討しているなら、複数の施設から資料を取り寄せて比べてください。1件ずつ電話するのは現実的ではありません。

繰り返しになりますが、このサービスで特養は出てきません。特養は市区町村の窓口へ。両方やってください。

相談から入居までの流れ

紹介サービスを使った場合、実際にはこう進みます。

段階 内容 期間の目安
1 電話またはWebで条件を伝える 30分程度
2 条件に合う施設の提案を受ける 即日〜数日
3 資料が届く 数日
4 見学したい施設を選ぶ
5 見学の日程を調整してもらう 数日
6 見学する(1件30分〜1時間) 1〜2週間
7 申込み・面談 施設側の受け入れ判定
8 契約・入居 1〜2週間

急ぐ場合は、この流れが2週間程度に圧縮されることもあります。退院日が決まっているなど期限がある場合は、最初にそれを伝えてください。

費用が発生するタイミング

利用者に費用が発生する場面はありません。

段階 利用者の負担
相談 なし
資料請求 なし
見学の手配 なし
見学 なし(交通費のみ自己負担)
契約 施設への支払いのみ

紹介サービスに対して支払うものはありません。入居後に請求が来ることもありません。

紹介サービスを使わない選択肢

そもそも使わずに探すこともできます。地域と状況によっては、その方が確実です。

方法 向いている場面 注意点
地域包括支援センター 何から手をつけるか分からない 無料。特養も含めた全体像が分かる
担当ケアマネジャー 既に在宅サービスを使っている 地域の実情に詳しい。紹介料と無関係
市区町村の窓口 特養・費用軽減制度 民間施設の情報は限定的
病院の地域連携室 入院中・退院予定 老健やリハビリ施設に強い
自分でネット検索 都市部で、時間がある 13.4%はサイトがなく見つからない

公的施設の比率が高い地域では、地域包括支援センターとケアマネジャーの比重が上がります。当サイトの集計では、山梨県では施設の6割以上が公的施設です。

逆に、神奈川県や東京都のように民間施設が7割近い地域では、紹介サービスの効率が良くなります。

まとめ

  1. 無料なのは、施設が紹介料を払っているから。相場は月額の1〜3か月分程度
  2. 運営法人の64%が1施設のみ。営業手段がないから紹介会社に頼る
  3. 紹介対象は20,111施設。特養など15,427施設(43%)は対象外
  4. 地域によって有効性が違う。民間比率は神奈川68.1%〜山梨37.7%
  5. 情報が出ていない地域ほど価値が高い。施設数の少ない自治体は19.2%がHPなし
  6. ケアマネ・市区町村と併用する。紹介サービス単独では特養が抜ける

判断のめやす

紹介サービスを使うべきかどうかは、状況で決まります。

こういう場合 判断
特養だけを考えている 不要。市区町村の窓口へ
有料・グループホームを比較したい 有効
時間がない、急いでいる 有効
地方で公的施設が中心の地域 ケアマネと市区町村を優先
ケアマネが親身に動いてくれている まずそちらに相談

次にやること

まず担当のケアマネジャーに、地域の全体像を聞いてください。特養の申込みもそこで相談できます。

そのうえで、民間施設の比較は紹介サービスを使うのが効率的です。

資料を取り寄せて、見学を申し込む

※ 無料で利用できます。特別養護老人ホームは対象外です。特養は市区町村の窓口かケアマネジャーへ。

よくある質問

本当に費用はかからないのですか。

利用者の負担はありません。入居が決まったときに施設が紹介料を支払う仕組みです。ただし、その紹介料は施設の運営コストに含まれるため、間接的には入居費用の一部になっています。

紹介料が高い施設ばかり勧められませんか。

可能性はゼロではありません。だからこそ提案された施設をそのまま信じず、必ず自分で見学してください。また、ケアマネジャーにも同じ地域の施設について聞いておくと、偏りに気づけます。

なぜ特養は紹介されないのですか。

特養は社会福祉法人が運営する公的性格の強い施設で、紹介料を支払う仕組みがありません。申込みは市区町村の窓口か施設に直接行います。費用が安いため、費用を抑えたい場合は必ず並行して申し込んでください。

複数の紹介会社に登録した方がいいですか。

おすすめしません。同じ施設に別々の会社から打診が行き、施設側が混乱します。最初の1社で提案が2〜3件しか出てこない場合に、別の会社を検討する程度で十分です。

しつこく営業されませんか。

事業者によります。「まだ検討段階です」「連絡はメールでお願いします」と最初に伝えておくと、頻度は下がります。それでも過度に感じる場合は、担当者の変更や利用の中止を申し出て構いません。

資料請求だけして、入居しなくても大丈夫ですか。

大丈夫です。費用は一切かかりません。むしろ、限界が来る前に費用の目安を知っておく方が、いざというときの判断が速くなります。

地方に住んでいますが、使えますか。

使えますが、地域によって効果が違います。当サイトの集計では、民間施設の割合は神奈川県68.1%に対し山梨県37.7%です。公的施設の比率が高い地域では、市区町村の窓口とケアマネジャーの比重が上がります。

ケアマネジャーがいれば、紹介サービスは不要ですか。

補完関係にあります。ケアマネジャーは地域の全体像と特養の申込みに強く、紹介サービスは民間施設の比較と空室情報に強い。担当エリア外の施設まで含めた比較は、ケアマネジャーには難しい場合があります。

個人情報はどう扱われますか。

相談時に伝えた情報(要介護度、症状、予算など)は、提案する施設に共有されます。そうしないと受け入れ可否の判断ができないためです。どの範囲まで伝わるか気になる場合は、最初に確認してください。また、利用をやめる際にデータの削除を依頼できるかも聞いておくと安心です。

入居後にトラブルがあったら、紹介会社は対応してくれますか。

原則として対応しません。紹介会社の役割は入居までです。入居後の問題は、施設との間で解決するか、市区町村の介護保険担当窓口や国民健康保険団体連合会(国保連)の苦情窓口に相談することになります。この点は契約前に理解しておいてください。

紹介された施設が合わなかったら、断れますか。

断れます。契約前であれば、いつでも辞退できます。入居後であっても、90日以内なら一時金は全額返還されます(短期解約特例)。

この記事のデータについて

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)/2026年6月末時点

同一施設が複数の指定区分で重複登録されているケースを、施設名と住所で名寄せして整理しています。公表データの「定員」欄は未報告が半数近くを占めるため集計に使用せず、施設の「数」のみを用いています。都道府県別の比率は施設数200件以上の県で算出しています。

紹介対象の区分は、施設の運営主体と一般的な商慣行にもとづく当サイトの整理です。実際の取扱いは紹介事業者によって異なる場合があります。紹介手数料の相場は業界で一般に言われている水準を記載したもので、実際の料率は事業者と施設の契約によって異なります。