在宅介護の限界はいつ来るか|施設に移す5つの目安

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「まだいける」と「もう無理だ」を、家族は何度も往復します。決められないのは、判断する基準がないからです。

限界を「気持ちの問題」にしてしまうと、答えは永久に出ません。限界は条件で決まります。夜、医療、認知症、介護する人、お金。この5つのうち2つが同時に崩れたとき、在宅は続かなくなります。逆に言えば、崩れているのが1つなら、まだ手はあります。

そしてもう1つ、あまり語られない条件があります。同じ状態でも、住んでいる地域によって限界が来る早さが違います。夜に来てもらえるサービスが1つもない市区町村は1,089あり、全体の57.6%を占めます。ここでは「夜が持たない」が最初から確定しています。

この記事では、5つの目安をひとつずつ数字で示し、最後に「2つ重なったら動く」という判断のしかたにまとめます。地域差については、全国215,550事業所を集計したマモリア独自のデータを使います。

「限界」は気持ちではなく、条件で決まる

在宅介護の限界を判断するとき、多くの家族は「自分がまだ頑張れるかどうか」で考えます。この基準には2つの問題があります。

問題 何が起きるか
基準が動く 体調のいい日は「いける」、悪い日は「無理」。同じ状況でも結論が変わる
頑張れる人ほど遅れる 限界まで我慢した結果、介護する側が先に倒れる

そこで、外から見て確認できる条件に置き換えます。次の5つです。

目安 崩れたと判断する具体的なサイン
週に2回以上、夜中に起こされる状態が1か月続いている
医療 たん吸引・経管栄養・インスリンなど、家族が担う医療的ケアが増えた
認知症 目を離せない時間が1日の大半を占めるようになった
介護する人 介護者に持病がある、または仕事を減らし始めた
お金 保険外サービスを足さないと在宅が回らなくなった

1つだけなら、まだ打つ手があります。サービスを足す、地域を変える、家族で分担しなおす。ところが2つが同時に崩れると、片方を埋めるともう片方が悪化する構造になり、在宅は続かなくなります。

何が限界を作るのか

そもそも、何がきっかけで介護が始まるのか。国の調査に答えがあります。

介護が必要になった原因の1位は、認知症認知症 23.6%; 骨折・転倒 14.8%; 高齢による衰弱 14.5%介護が必要になった原因の1位は、認知症要介護(要支援を除く)と認定された人の、介護が必要になった主な原因の上位3つ認知症23.6%骨折・転倒14.8%高齢による衰弱14.5%要支援では1位が「高齢による衰弱」17.7%。重くなるほど認知症が前に出る

出典:厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」

要介護(要支援を除く)の1位は認知症で23.6%。4人に1人近くがここから始まります。一方、要支援では1位が「高齢による衰弱」17.7%、次いで関節疾患14.8%、骨折・転倒14.7%です。

この差が、限界の来かたを分けます。

きっかけ 限界の来かた
骨折・転倒、衰弱 身体の介助が増える。人手とサービスで埋められる部分が大きい
脳血管疾患 退院直後が山。リハビリの受け皿があるかで分かれる
認知症 目を離せない時間が増える。サービスで埋めにくい

身体の介助は「その時間だけ人が来ればいい」ので、訪問介護やデイサービスで分担できます。ところが認知症の見守りは、24時間のうち「いつ起きるか分からない」ものなので、時間で切ったサービスでは埋まりません。認知症でも入れる施設はどこかで扱っているとおり、認知症は在宅の限界が早く来る典型です。

目安① 夜が持たなくなったとき

在宅介護がいちばん先に壊れるのは、夜です。日中はデイサービスやヘルパーで埋められますが、夜間は制度上の選択肢がほとんどありません。

夜間に来てもらえる公的サービス 全国の事業所数 1つもない自治体
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 1,375 1,280(67.8%)
看護小規模多機能型居宅介護 1,141 1,332(70.5%)
夜間対応型訪問介護 147 1,776(94.0%)

出典:マモリア独自集計。介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点

3つとも1つもない市区町村が1,089あり、全体の57.6%を占めます。この地域では、夜中に人を呼ぶ手段が介護保険の中に存在しません。詳しくは夜中に親が倒れたら誰が来るのかにまとめています。

判断のサインは「頻度」と「継続」です。月に1〜2回なら乗り切れます。週2回以上が1か月続いたら、介護者の睡眠が構造的に足りていません。ここは根性で埋めるところではなく、睡眠不足は判断力と体調を確実に削ります。

夜間の公的サービスがない地域で、それでも在宅を続けたい場合の選択肢が、保険外の自費サービスです。介護保険を使わないため費用は全額自己負担になりますが、時間帯・内容・回数を自由に決められ、夜間だけ・週2回だけといった使い方ができます。

目安② 医療的ケアが増えたとき

医療的ケアが家族の手に渡り始めたら、専門的な判断が必要な段階に入っています。

医療的ケア 家族ができるか 受け皿
服薬管理 できる 訪問介護でも一部対応
インスリン注射 本人か家族。研修は不要 訪問看護で指導を受ける
たん吸引 家族はできる。研修を受けた介護職も可 訪問看護、看護師配置のある施設
経管栄養(胃ろう) 家族はできる。手技の習得が必要 訪問看護、介護医療院
在宅酸素・人工呼吸器 管理は家族。トラブル対応は医療 訪問看護、医療対応可の施設

ここで効いてくるのが訪問看護です。ところが訪問看護事業所が1つもない市区町村が363あり、全体の19.2%を占めます。5つに1つの自治体では、医療的ケアが増えた時点で在宅の選択肢が急に狭くなります。

もう1つの分岐が、夜間の医療です。日中は訪問看護が来られても、夜中にたんが詰まったときに呼べる先があるかは別の問題です。ここで目安①と目安②が重なり、在宅が続かなくなります。

目安③ 見守りが24時間必要になったとき

認知症の進行で、目を離せない時間が1日の大半を占めるようになったときです。

段階 状態の目安 在宅で埋められるか
1 もの忘れ、同じ話の繰り返し 埋められる
2 薬の飲み忘れ、火の消し忘れ 服薬カレンダー、IHへの交換などで対応可
3 日中の徘徊、道に迷う デイサービスと見守り機器で分担できる
4 夜間の徘徊、昼夜逆転 ここが分岐点
5 暴力・暴言、失禁の常態化 専門的な対応が要る。施設を具体的に探す段階

昼夜逆転が始まると、目安①の夜と一気につながります。日中に眠り、夜に動く。介護者は昼も夜も休めなくなります。

認知症に特化した通所サービスとして認知症対応型通所介護がありますが、全国2,678事業所しかなく、1つもない市区町村が914(48.4%)あります。半分近くの自治体では、そもそもこの選択肢が存在しません。

薬の調整で落ち着くことがあります。徘徊や暴言は「認知症だから仕方ない」ではなく、環境や薬の副作用が原因のこともあります。施設を探し始める前に、まず主治医か認知症疾患医療センターに相談してください。順番を逆にすると、落ち着けば在宅を続けられたケースを取りこぼします。

目安④ 介護する側が先に倒れそうなとき

ここがいちばん見落とされます。限界は介護される側ではなく、介護する側から来ることのほうが多いからです。

介護する側も、年々高齢になっている65歳以上どうし 2022年=63.5 2025年=61.9; 75歳以上どうし 2022年=35.7 2025年=37.1介護する側も、年々高齢になっている同居の主な介護者と、介護される人の年齢の組み合わせ(単位:%)2022年2025年02040608063.561.965歳以上どうし35.737.175歳以上どうし75歳以上どうしが1.4ポイント増えた。介護する側が先に倒れる確率が上がっている

出典:厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」

介護している人と介護されている人がともに65歳以上という世帯が61.9%。ともに75歳以上も37.1%あります。65歳以上どうしは前回2022年の63.5%から1.6ポイント減りましたが、75歳以上どうしは35.7%から37.1%へ増えました。介護する側の高齢化が、より高い年齢帯に移っています。

そして、誰が介護しているのか。

介護しているのは誰か同居の家族 46.1%; 事業者 16.0%; 別居の家族など 13.4%; 不詳 23.9%介護しているのは誰か主な介護者の内訳。同居している家族が半数近くを占める46.1%同居の家族16.0%事業者13.4%別居の家族など23.9%不詳同居の内訳は配偶者22.5%・子18.2%・子の配偶者4.2%。半分は家族が担っている

出典:厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」

主な介護者の46.1%が同居の家族です。内訳は配偶者22.5%、子18.2%、子の配偶者4.2%。事業者は16.0%にとどまります。制度が整っても、日常の大半を担っているのは家族という構造は変わっていません。

介護する側の限界を示すサインは、次の3つです。

サイン なぜ危ないか
介護者に持病がある、通院を止めている 自分の受診を後回しにし始めると、倒れるまで気づかない
仕事の時間を減らし始めた 収入が減り、介護費用を家計から出せなくなる二重の悪化
眠れない、食欲がない、涙が出る 介護うつの入り口。判断力が落ち、正しい選択ができなくなる

仕事を辞めるのは、最後まで避けてください。介護・看護のために過去1年間に離職した人は全国で年10.6万人。5年前の調査から7,000人増えています。いったん辞めると、介護が終わったあとの再就職は同じ条件では戻れないのが実情です。

介護休業は、介護をするための制度ではありません。対象家族1人につき通算93日、3回まで分割して取れますが、これは「介護の体制を作るための期間」として設計されています。自分で介護するために使い切ると、体制を作らないまま93日が終わります。

目安⑤ 在宅のほうが高くつき始めたとき

「在宅のほうが安い」は、一定の条件までしか成り立ちません。

55か月続けたとき、在宅と施設で470万円ちがう在宅で介護(月5.3万円) 約291万円; 施設で介護(月13.8万円) 約759万円55か月続けたとき、在宅と施設で470万円ちがう月額平均に介護期間の平均55.0か月をかけた金額(単位:万円)在宅で介護(月5.3万円)約291万円施設で介護(月13.8万円)約759万円ただし在宅の5.3万円には、家族が仕事を減らした分が入っていない

出典:生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」の月額平均と介護期間の平均から算出

月額の平均は在宅5.3万円、施設13.8万円。介護期間の平均55.0か月をかけると、約291万円と約759万円で、差は約470万円になります。この数字だけを見れば在宅が圧倒的に安く見えます。

ところが、次の3つが起きると逆転が近づきます。

起きること 在宅のコストがどう動くか
区分支給限度額を使い切る 超えた分は全額自己負担。要介護2で上限を3万円超えれば、その3万円がそのまま乗る
保険外サービスを足す 夜間の見守り、付き添い、家事代行。いずれも全額自己負担
家族が仕事を減らす 請求書には出ないが、家計にはいちばん大きく効く

在宅5.3万円という平均には、家族が無償で働いている分が入っていません。ここを金額に直して比べたとき、はじめて同じ土俵になります。費用の全体像は介護費用は月いくらかに、施設側の金額は年金だけで入れる施設はあるのかにまとめています。

地域によって、限界が来る早さが違う

ここまでの5つは、どこに住んでいても同じように起きます。ところが「起きたときに埋められるかどうか」は、地域でまったく違います。

地域によって、限界が来る早さが違う夜間に来てもらえる3サービスのどれも 1,089自治体 57.6%; 認知症対応型通所介護 914自治体 48.4%; 訪問看護 363自治体 19.2%; リハビリの受け皿がどれも 359自治体 19.0%; 訪問介護(ホームヘルプ) 113自治体 6.0%地域によって、限界が来る早さが違う全国1,889市区町村のうち、そのサービスが1つもない自治体夜間に来てもらえる3サービスのどれも1,089自治体 57.6%認知症対応型通所介護914自治体 48.4%訪問看護363自治体 19.2%リハビリの受け皿がどれも359自治体 19.0%訪問介護(ホームヘルプ)113自治体 6.0%夜・医療・認知症のどれかが欠けている地域では、同じ状態でも限界が早く来る

出典:マモリア独自集計。介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点

訪問介護は6.0%の自治体にしかない、という意味ではありません。訪問介護がない自治体は113で全体の6.0%にとどまる、つまりほぼ全国にあります。ところが夜間になると、1つもない自治体が1,089で57.6%に跳ね上がります。

崩れる目安 それを埋めるサービス 存在しない自治体
① 夜 定期巡回・看多機・夜間対応型 1,089(57.6%)
② 医療 訪問看護 363(19.2%)
③ 認知症 認知症対応型通所介護 914(48.4%)
退院直後 デイケア・訪問リハ・老健 359(19.0%)
日常の身体介助 訪問介護 113(6.0%)

夜と認知症は、半分前後の自治体で最初から埋められません。この2つが、在宅の限界を最も早く連れてくる組み合わせでもあります。つまり多くの地域では、状態が悪化したときの逃げ道が制度の中にありません。

だから、限界が見えてから調べるのでは遅いのです。親の市区町村に何があって何がないかは、いま調べられます。何がないかが分かっていれば、そこが崩れたときに何が起きるかを先に想定でき、施設を探し始める時期も逆算できます。

限界が来る前に、必ずやっておくこと

限界は、ある日突然来るように見えて、実際には数か月かけて近づいてきます。その間にやれることが4つあります。

やること なぜ効くか いつ
ショートステイを定期的に使う 介護者が休める。本人も施設に慣れる。緊急時の受け入れ先ができる 限界の6か月前
特養に申し込んでおく 待機期間があるので、必要になってからでは間に合わない 要介護3が出たら
民間施設の資料を集める 比べる材料がないと、追い込まれてから即決することになる 限界の3か月前
親の年金額と預貯金を把握する 払える月額が分からないと、施設を絞り込めない できるだけ早く

いちばん効くのはショートステイです。マモリアの集計では全国14,963事業所あり、1つもない自治体は83にとどまります。在宅サービスの中で最も全国に行き渡っているのがショートステイです。

「限界が来たら使うもの」ではなく、最初から予定に組み込んでください。月に1回、2泊3日。これを半年続けるだけで、介護者の消耗の速度が変わります。本人が施設の環境に慣れるという副次的な効果もあり、いざ入所するときの拒否感が下がります。

ショートステイは、思い立った月には予約できません。人気のある事業所は2〜3か月先まで埋まっています。ケアマネジャーに「毎月定期で押さえてほしい」と最初に伝えてください。空いたら使う、では結局使えません。

要介護度が上がると、選べる施設が増える

施設を探し始めるとき、最初にぶつかるのが「そもそも申し込めるのか」です。

要介護度が上がると、選べる施設が増える軽費老人ホーム(ケアハウス) 自立〜軽度中心; 介護付有料老人ホーム 要支援1〜; グループホーム 要支援2〜; 介護老人保健施設 要介護1〜; 特別養護老人ホーム 要介護3〜要介護度が上がると、選べる施設が増える主な施設に申し込める要介護度の範囲要支援1要支援2要介護1要介護2要介護3要介護4要介護5軽費老人ホーム(ケアハウス)自立〜軽度中心介護付有料老人ホーム要支援1〜グループホーム要支援2〜介護老人保健施設要介護1〜特別養護老人ホーム要介護3〜要介護3が、選択肢がいちばん増える境目。ここで動きはじめる家族が多い

出典:各制度の入所要件。特養は原則要介護3以上(特例あり)。グループホームと地域密着型施設は、原則その市区町村の住民に限られます

要介護3が、選択肢がいちばん増える境目です。ここで特別養護老人ホームの申込資格が生まれます。逆に言うと、要介護2以下では費用の安い公的施設がほぼ選べません。

要介護度 現実的な選択肢 月額の目安
要支援1〜2 ケアハウス、介護付有料老人ホーム(要支援2からグループホーム) 6〜30万円
要介護1〜2 グループホーム、介護付有料老人ホーム、老健(リハビリ目的) 8〜30万円
要介護3〜5 特養が加わる。選択肢が最も広い 5〜30万円

種類ごとの費用と特徴は老人ホームの種類と費用の比較に、特養の待機の実情は特養の待機期間は本当に長いのかにまとめています。要介護度そのものの決まり方は要介護度の目安と使える上限を見てください。

判断を先延ばしにすると何が起きるか

「もう少し様子を見よう」を繰り返した結果、起きることは決まっています。

先延ばしの結果 何が起きるか
介護者が倒れる その日から在宅が不可能になる。緊急で受け入れ先を探すことになる
本人が入院する 退院期限までに行き先を決めることになり、選ぶ時間がない
選択肢が値段で決まる 空いている施設しか選べない。空いている施設は高いことが多い
本人の意思が確認できなくなる 認知症が進むと、どこで暮らしたいかを本人に聞けなくなる
親名義の口座が動かせなくなる 金融機関が意思確認できないと判断した時点で、子でも引き出せない

最後の2つは、時間が経つほど取り返しがつかなくなります。施設に入る費用を親の口座から払えない、という詰まり方をします。認知症が進んでからでは家族信託も使えません。順番があります。

そして、急いで決めた施設は、たいてい合いません。1件しか見学せずに契約すると、半年後にもう一度探すことになります。見学で何を聞くべきかは見学で必ず聞くべき12の質問にまとめています。

家族の中で、どう決めるか

限界の条件が揃っても、家族の中で意見が割れて動けないことがあります。よくあるのは次の対立です。

対立 実際に起きていること 解き方
介護している人は「もう無理」/離れている家族は「まだ大丈夫」 離れている側は、夜と週末の実態を見ていない 1週間の記録を共有する。何時に何が起きたかを日付つきで
費用を出す人と、介護する人が違う 負担の種類が違うので、比べようがない 金額と時間を両方書き出して並べる
本人が施設を拒否している 「捨てられる」と受け取っている ショートステイから始める。体験入居という形にする
誰も決めたがらない 決めた人が責任を負うことになるのを避けている ケアマネジャーと医師に同席してもらい、専門職の判断として提示する

いちばん効くのは記録です。1週間分、何時に何が起きて、何回起こされて、何分かかったかを書く。これを見せると、離れている家族の認識が変わります。同じ記録は、要介護度の区分変更申請でもそのまま使えます。

罪悪感について。施設に入れることを「見捨てる」と考える必要はありません。介護する側が倒れたら、本人はもっと悪い条件で行き先を決められることになります。在宅を続けることが目的ではなく、本人が安全に暮らせることが目的です。手段を変えるだけです。

まとめ:2つ重なったら動く

最後に、判断のしかたを1つにまとめます。

崩れている数 やること
0〜1つ サービスを足して埋める。ショートステイを定期利用に組み込む
2つ 施設の資料を集め始める。特養は申し込む。まだ入居は決めなくていい
3つ以上 期限を決めて動く。ケアマネジャーに「いつまでに」を伝える

2つ重なった時点で「探し始める」であって、「入れる」ではありません。ここを混同すると、探し始めること自体に罪悪感が生まれて動けなくなります。資料を集めても、見学しても、決めなければ何も起きません。

そして、探し始める前にもう1つ。親の市区町村に何があって何がないかを確認してください。夜間サービスがない地域なら、目安①はいつか必ず崩れます。訪問看護がない地域なら、目安②も同じです。地域の条件が分かっていれば、限界が来る時期を数か月単位で先読みできます。

よくある質問

在宅介護の限界は、要介護度でいうとどのあたりですか。

要介護度だけでは決まりません。身体が重い要介護4でも、日中のサービスが揃っていて夜が静かなら在宅は続きます。逆に要介護2でも、夜間の徘徊が始まれば続きません。判断するのは要介護度ではなく、夜・医療・認知症・介護する人・お金の5つの条件です。ただし要介護3で特別養護老人ホームの申込資格が生まれるため、選択肢が広がる境目ではあります。

夜に何度も起こされます。これは限界ですか。

頻度と継続で判断してください。月1〜2回なら乗り切れます。週2回以上が1か月続いているなら、介護者の睡眠が構造的に足りていません。まず夜間に来てもらえるサービスが地域にあるか確認してください。定期巡回・看護小規模多機能・夜間対応型の3つとも1つもない市区町村が1,089(57.6%)あり、その場合は保険外サービスか施設が現実的な選択肢になります。

親が施設を嫌がっています。どうすればいいですか。

いきなり入所の話をせず、ショートステイから始めてください。「体験」「お試し」という形にすると受け入れられることがあります。月1回、2泊3日を半年続けると、本人が環境に慣れて拒否感が下がります。また、拒否の理由が「捨てられる」という受け取り方にあることが多いので、家族が定期的に会いに行く前提を明確に伝えてください。

介護のために仕事を辞めるべきでしょうか。

最後まで避けてください。介護・看護のために過去1年間に離職した人は全国で年10.6万人おり、5年前より7,000人増えています。辞めると収入が減り、介護費用を家計から出せなくなるため、状況は二重に悪化します。介護休業(対象家族1人につき通算93日、3回まで分割可)は自分で介護するためではなく、体制を作るための期間として使ってください。

ショートステイはいつから使うべきですか。

限界が来る前、できれば6か月前からです。「限界が来たら使うもの」と考えていると、必要になった月には予約が取れません。人気のある事業所は2〜3か月先まで埋まっています。ケアマネジャーに「毎月定期で押さえてほしい」と最初に伝えてください。全国14,963事業所あり、1つもない自治体は83にとどまるため、在宅サービスの中では最も見つけやすいサービスです。

認知症だと在宅は続けられませんか。

段階によります。日中の徘徊まではデイサービスと見守り機器で分担できます。分岐点は夜間の徘徊と昼夜逆転で、ここから介護者が昼も夜も休めなくなります。ただし、徘徊や暴言は薬の調整や環境の変更で落ち着くことがあるため、施設を探し始める前に主治医か認知症疾患医療センターに相談してください。順番を逆にすると、続けられたはずのケースを取りこぼします。

在宅のほうが安いと聞きましたが、本当ですか。

条件つきで本当です。月額の平均は在宅5.3万円、施設13.8万円で、介護期間の平均55.0か月をかけると約291万円と約759万円になります。ただし在宅の5.3万円には、家族が仕事を減らした分が入っていません。また区分支給限度額を超えた分と保険外サービスは全額自己負担になるため、状態が重くなるほど差は縮まります。

きょうだいの意見が割れて決められません。

1週間分の記録を共有してください。何時に何が起きて、何回起こされて、何分かかったかを日付つきで書きます。離れている家族は、夜と週末の実態を見ていないために「まだ大丈夫」と判断していることがほとんどです。それでも割れる場合は、ケアマネジャーと主治医に同席してもらい、専門職の判断として提示すると話が進みます。同じ記録は区分変更申請でもそのまま使えます。

施設に入れるのは、見捨てることになりませんか。

なりません。目的は在宅を続けることではなく、本人が安全に暮らせることです。介護する側が先に倒れると、本人はより悪い条件で行き先を決められることになります。実際、介護している人と介護されている人がともに65歳以上という世帯が61.9%、ともに75歳以上も37.1%あります。手段を変える判断であって、関係を切る判断ではありません。

まず何から始めればいいですか。

親の市区町村に何があるかの確認です。夜間に来てもらえるサービスが1つもない市区町村は1,089で57.6%、認知症対応型通所介護がない市区町村も914(48.4%)あります。地域に何がないかが分かれば、どの目安がいつ崩れるかを先読みでき、施設を探し始める時期を逆算できます。そのうえでケアマネジャーか地域包括支援センターに、いまの状態と地域の条件を伝えてください。

施設に移ったあと、実家をどうするか

在宅から施設に切り替えると、施設の居住費と実家の維持費を二重に払う期間が始まります。空き家は持っているだけで固定資産税と管理の負担が続くため、費用計画に必ず効いてきます。急いで決める必要はありませんが、選択肢だけは知っておいてください。姉妹サイトの実家じまいナビで扱っています。