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入院していた親の退院が決まり、まだ家では見られないと伝えたら、病院から「老健はどうですか」と言われた——多くの家族が老健という言葉を初めて聞くのは、この場面です。そして次にこう言われます。「ただ3か月で出ることになります」。
この「3か月」が、家族をいちばん不安にさせます。結論から言うと、3か月は退所の期限ではなく、入所を続けるかどうかを見直す周期です。実際には延長される人もいますし、逆に3か月を待たずに自宅へ戻る人もいます。
このページでは、判定の仕組み、費用、断られる理由、そして老健がそもそも近くに無い地域が全国の27.3%あるという実態を、厚生労働省の公表データから整理します。
老健は「帰るための施設」
介護老人保健施設——略して老健は、介護保険の施設のひとつです。特別養護老人ホームが「住む場所」なのに対し、老健は自宅に帰ることを目的にした、期間を区切って使う施設です。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村。同一事業所の重複を整理して集計)
全国に3,994施設。入所できるのは要介護1以上で、病状が安定していて入院治療までは必要ない人です。医師が常勤で配置され、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリの専門職を置くことが決められています。ここが特養や有料老人ホームとの決定的な違いです。
だから老健の実力は、退院直後のこの時期に発揮されます。入院で体力が落ち、自宅の段差が越えられない。トイレまで歩けない。その状態を数か月かけて引き上げ、家に戻す。それが設計思想です。
逆に言えば、「ずっと居られる場所」を探している家族にとっては、老健は目的の合わない施設です。ここを最初に理解しておくと、3か月という言葉の意味が変わってきます。
3か月で出されるのか
法律や省令に「3か月まで」という上限はありません。実際には次のような仕組みで動いています。
老健では、入所している人についておおむね3か月ごとに、入所を続ける必要があるかどうかを施設が検討することになっています。この検討の周期が「3か月」の正体です。期限ではなく、見直しのタイミングです。
検討の結果、自宅に戻れる状態になっていれば退所に向けて動きます。まだ難しければ延長されることもあります。ただし老健は在宅復帰を評価される仕組みになっているため、施設としては長期化を避けたい事情があります。「延長できるかどうか」は、本人の状態と施設の方針の両方で決まります。
| よくある誤解 | 実際 |
|---|---|
| 3か月で必ず退所になる | 期限ではなく見直しの周期。延長される人もいる |
| 3か月経てば自動的に出される | 退所前カンファレンスで行き先を決めてから退所する |
| 特養が空くまで居られる | 老健の目的は在宅復帰。長期の待機場所としては想定されていない |
| リハビリは希望すれば毎日ある | 施設の類型と加算によって回数が変わる。事前に確認する |
家族にとって大事なのは、入所した日から「どこへ帰るか」を並行して考え始めることです。自宅に戻るなら住宅改修と在宅サービスの手配、戻れないなら特養や有料老人ホームの申し込み。退所前カンファレンスで初めて考え始めると、そこから動く時間が足りません。
27.3%の市区町村に1つもない
ここからが、あまり語られていない部分です。老健は「病院から勧められる施設」なので当然あるものだと思われがちですが、地域によって事情がまったく違います。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村。同一事業所の重複を整理して集計)
老健が1つもない市区町村は全国で516、全体の27.3%です。4つに1つ以上の市区町村には存在しません。そして北海道は188市町村のうち102(54.3%)に1つもありません。高知県51.5%、長野県50.6%、宮崎県50.0%と続きます。
逆に少ないのは大分県5.6%、広島県6.7%、富山県6.7%、兵庫県8.2%、大阪府8.3%、愛知県8.7%です。
さらに厚みで見ると、1市区町村あたりの施設数の中央値は全国で1です。つまり全国の市区町村の半数は、老健が1か所以下ということになります。北海道・長野県・高知県にいたっては県内の中央値が0で、半数以上の市町村に存在しません。
| 都道府県 | 老健がない市区町村 | 県内の中央値 |
|---|---|---|
| 北海道 | 102(54.3%) | 0 |
| 高知県 | 17(51.5%) | 0 |
| 長野県 | 39(50.6%) | 0 |
| 宮崎県 | 13(50.0%) | 1 |
| 福島県 | 28(47.5%) | 1 |
| 大分県 | 1(5.6%) | 3 |
| 広島県 | 2(6.7%) | 3 |
| 富山県 | 1(6.7%) | 2 |
| 全国 | 516(27.3%) | 1 |
出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで同一事業所の重複を整理して集計。全国1,889市区町村を対象。定員欄は未報告が半数を占めるため使用していません。
ただし救いがあります。老健は都道府県が指定する施設なので、住所による利用制限がありません。市外でも県外でも申し込めます。地域密着型サービスのように「住民でないと使えない」という壁はないので、地元に無くても選択肢は残ります。住所で使える範囲が決まるサービスとの違いは地域密着型サービスは他の市区町村では使えないにまとめています。
住まい系のなかでの位置
他の施設と並べると、老健の空白の大きさが分かります。
出典:マモリア調べ(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」2026年6月末時点/全国1,889市区町村。同一事業所の重複を整理して集計)
特別養護老人ホームは6.1%、グループホームは10.1%の市区町村でゼロなのに対し、老健は27.3%。老健は特養より4倍以上「無い」施設です。数そのものが特養の半分以下であることが効いています。
一方、地域密着型特養(53.1%)、介護付有料老人ホーム(54.2%)、介護医療院(70.3%)、軽費老人ホーム(81.6%)、サービス付き高齢者向け住宅(82.3%)はもっと空白が大きい。住まい系全体で見れば、老健は真ん中あたりということになります。
施設の種類ごとの費用や条件の違いは老人ホームの種類と費用を一覧比較にまとめています。
特養・老健・介護医療院の違い
介護保険の施設は3種類あります。混同されやすいので、目的から整理します。
| 特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設(老健) | 介護医療院 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 生活の場。原則ずっと住める | 在宅復帰。期間を区切って使う | 長期の療養と生活の場 |
| 入所の条件 | 原則要介護3以上 | 要介護1以上。病状が安定していること | 要介護1以上。長期の医療的管理が必要 |
| 医師 | 非常勤が多い | 常勤 | 常勤 |
| リハビリ職 | 配置義務なし | 配置が義務 | 配置あり |
| 入所までの期間 | 長い。順番待ちが基本 | 短い。空きがあれば数週間 | 施設数が少なく地域差が大きい |
| 1つもない市区町村 | 116(6.1%) | 516(27.3%) | 1,328(70.3%) |
| 紹介サービス | 対象外 | 対象外 | 対象外 |
3つとも公的な施設なので、民間の紹介サービスでは扱われません。申し込み先は市区町村の窓口か担当のケアマネジャー、入院中なら病院の相談員です。特養の待機の実情は特養の待機期間は本当に長いのかにまとめています。
老健には5つの類型がある
同じ「老健」でも、在宅復帰にどれだけ力を入れているかで5つに分かれます。介護報酬の区分で、施設によって性格が違います。
| 類型 | 性格 | 家族から見ると |
|---|---|---|
| 超強化型 | 在宅復帰にもっとも力を入れている | リハビリが手厚い。退所への動きも速い |
| 在宅強化型 | 同上。超強化型に次ぐ | 同上 |
| 加算型 | 中間 | バランス型 |
| 基本型 | 標準的な体制 | 在宅復帰の圧力は相対的に弱い |
| その他型 | 在宅復帰の指標が基準に届いていない | 長く居やすいが、リハビリの密度は下がる |
この区分は、退所率、ベッドの回転、リハビリ職の配置、認知症への対応といった複数の指標の合計点で決まります。面談のときに「こちらは何型ですか」と聞けば教えてもらえます。短期集中でリハビリをして帰りたいのか、少し長めに使いたいのかで、選ぶ施設が変わります。
ただし現実には、地域に老健が1か所しかなければ選べません。中央値1という数字は、そういう意味でもあります。
費用のしくみ
老健は介護保険の施設なので、費用の構造は特養と同じです。
| 内訳 | 介護保険 | 説明 |
|---|---|---|
| 施設サービス費 | 効く(1〜3割負担) | 要介護度、部屋の種類、施設の類型、加算で決まる |
| 居住費 | 効かない | 多床室・従来型個室・ユニット型個室で差が大きい |
| 食費 | 効かない | 1日あたりで設定される |
| 日常生活費 | 効かない | おむつ代、理美容代など。老健はおむつ代が施設負担になる |
老健の費用で特徴的なのは2つです。1つはおむつ代が施設サービス費に含まれること。特養や有料老人ホームでは実費請求になることが多いので、ここは老健のほうが分かりやすくなっています。
もう1つが介護保険負担限度額認定です。所得と資産が一定以下の人は、申請すると居住費と食費が下がります。老健は介護保険施設なので対象です。市区町村の窓口で申請し、認定証を施設に提示します。
| 段階 | おおよその対象 |
|---|---|
| 第1段階 | 生活保護を受けている人、世帯全員が住民税非課税で老齢福祉年金を受けている人 |
| 第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等が年80万円以下 |
| 第3段階① | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等が年80万円超120万円以下 |
| 第3段階② | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等が年120万円超 |
| 第4段階 | 上記以外。軽減の対象外 |
段階の判定には預貯金などの資産要件もあり、配偶者が住民税課税なら本人が非課税でも対象外です。この居住費と食費の額は2026年8月1日から引き上げられました。金額は改定のたびに変わるので、具体的な額は市区町村の窓口か施設で最新のものを確認してください。
なお老健は住所地特例の対象施設です。入所のために住民票を移しても、介護保険の保険者は移す前の市区町村のままになります。費用の全体像は介護費用は月いくらか、費用を抑える選択肢は年金だけで入れる施設はあるかにまとめています。
出典:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506」(2026年5月29日/令和8年8月1日からの居住費・食費の負担限度額の改正について)
薬と医療処置——ここで判定が決まる
老健の申し込みで、家族がいちばん戸惑うのがここです。「病状は安定しています」と言われたのに、面談のあとで断られる。
理由は費用の仕組みにあります。老健では、入所中の投薬や検査などの医療費が、原則として施設の介護報酬に含まれています。つまり施設が負担します。特養のように外部の医療機関で受診して医療保険から支払う形とは違います。
この構造があるため、高額な薬を継続して使っている人は、施設にとって受け入れが難しくなります。悪意ではなく、制度の設計がそうなっています。
| 判定で問題になりやすいもの | なぜ |
|---|---|
| 高額な薬の継続使用 | 薬剤費が施設負担になるため |
| インスリン注射 | 看護体制と回数によっては対応できない施設がある |
| 痰の吸引が頻回 | 夜間の看護体制で可否が分かれる |
| 経管栄養(胃ろう・経鼻) | 対応できる施設とできない施設がある |
| 在宅酸素療法 | 機器と管理体制の問題 |
| 透析 | 通院の送迎体制が必要。対応施設は限られる |
大事なのは、これらがあっても「絶対に無理」ではないということです。施設の看護体制と方針によって答えが変わります。だから1か所で断られても、次を当たる価値があります。
そして家族ができる準備は1つ、薬の内容を正確に伝えることです。お薬手帳のコピーを申し込みのときに渡してください。ここを曖昧にしたまま話を進めると、面談の直前に判明して振り出しに戻ります。
申し込みから入所まで
特養と違い、老健は申し込みから入所までが短いのが特徴です。
入院中であれば、動くのは病院の医療ソーシャルワーカーです。退院の日程が決まる前から相談を始めてください。在宅から申し込む場合は担当のケアマネジャーが窓口になります。
必要になるのは、申込書、主治医の診療情報提供書、介護保険被保険者証、お薬手帳の写しなどです。診療情報提供書は主治医に依頼してから出るまでに1〜2週間かかることがあるので、いちばん最初に頼んでおくと全体が早く進みます。
空きがあれば、面談から入所まで数週間で決まることが多くなります。特養のように何か月も待つ性質の施設ではありません。ただし人気のある施設や、老健が1か所しかない地域では待つこともあります。
老健は期間を区切って使う施設です。入所が決まった時点で、次の行き先を並行して探し始めてください。特別養護老人ホームは市区町村の窓口か担当のケアマネジャーへ。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、条件を伝えれば資料を取り寄せて比べられます。
退所したあと、どこへ行くか
退所の1〜2か月前に、退所前カンファレンスが開かれます。家族、担当のケアマネジャー、施設の相談員とリハビリ職が集まって、行き先と必要な準備を決める場です。
行き先は実質この4つです。そして家族が動かなければならないのは、どれを選んでも入所中のうちです。
| 行き先 | 入所中にやっておくこと |
|---|---|
| 自宅へ戻る | 住宅改修(手すり・段差解消)、福祉用具の手配、訪問・通いサービスの契約。ケアマネジャーとの調整 |
| 特別養護老人ホームへ | 申し込み。要介護3以上が原則。順番待ちなので入所した日に出すつもりで |
| 有料老人ホーム等へ | 資料請求と見学。費用の条件を先に決めておく |
| 別の老健・医療機関へ | 医療的な管理が増えた場合。相談員が候補を持っていることが多い |
住宅改修は介護保険で20万円までが対象になり、原則1〜3割の自己負担で使えます。ただし申請から工事完了までに時間がかかります。退所日が決まってから動き始めると、間に合いません。
在宅に戻る場合、その地域に何があるかで組み立て方が変わります。夜間に人を呼べるサービスがない市区町村は全国の57.6%あります。夜中に親が倒れたら誰が来るのかとショートステイは何日まで使えるかを先に見ておくと、退所前カンファレンスでの話が具体的になります。
リハビリはどれくらい受けられるか
老健を選ぶ最大の理由がリハビリです。ところが「毎日たっぷり」とは限りません。
老健では理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置が義務づけられていますが、1人あたりのリハビリの時間と頻度は、施設の類型と職員の人数で変わります。入所直後の3か月は集中的に行い、その後は頻度が下がる形が一般的です。
| 確認すること | 聞き方 |
|---|---|
| 個別リハビリの頻度 | 「1週間に何回、1回何分ですか」 |
| 担当するのは誰か | 「理学療法士ですか、作業療法士ですか」 |
| 入所後の変化 | 「3か月を過ぎると回数は変わりますか」 |
| 日常生活のなかの動き | 「リハビリの時間以外は、どう過ごしますか」 |
最後の項目が実は効きます。1日20分の個別リハビリより、食堂まで自分で歩く、トイレまで自分で行くという日常の動作のほうが、量としては圧倒的に多いからです。「離床の時間はどれくらいですか」と聞くと、その施設の姿勢が分かります。
退院後のリハビリの受け皿全体については退院後のリハビリはどこで受けるかにまとめています。訪問リハビリが1つもない市区町村は647(34.3%)、デイケアが無いのは420(22.2%)です。
面談と見学で聞く7つのこと
老健は入所までが短いぶん、比べる時間も短くなります。この7つだけ押さえてください。
| 聞くこと | なぜ |
|---|---|
| こちらは何型ですか | 超強化型から その他型まで5つ。リハビリの密度と退所への姿勢が違う |
| この薬と処置は対応できますか | ここで受け入れの可否が決まる。お薬手帳を持参する |
| 個別リハビリは週に何回ですか | 老健を選ぶ理由そのもの。3か月後の変化も聞く |
| 部屋は多床室ですか、個室ですか | 費用が大きく変わる。空き状況にもよる |
| 退所の見通しはどう立てますか | 3か月ごとの検討の実際の運用を聞く |
| 受診が必要になったらどうしますか | 施設内で対応するのか、外部の医療機関へ行くのか |
| 面会の時間と条件は | 家族が通える頻度が、本人の状態に効く |
1つ目と5つ目を組み合わせると、その施設が「短期集中で帰す施設」なのか「比較的長く居られる施設」なのかが見えます。どちらが良いということはなく、親の状態と家族の準備の速さで選ぶものです。
見学のときの聞き方全般は老人ホーム見学で聞くべき12の質問を参考にしてください。
自分の市区町村を調べる
老健は住所の制限がないので、地元に無くても諦める必要はありません。ただし通える距離かどうかは、家族が面会に行けるかに直結します。まず地元と近隣に何か所あるかを確認してください。
| 調べ方 | 分かること | ひとこと |
|---|---|---|
| 病院の医療ソーシャルワーカー | 入院中ならここが最短。空き状況も把握している | 退院日が決まる前に相談する |
| 担当のケアマネジャー | 在宅から申し込む場合の窓口 | 過去の利用者の経験が蓄積している |
| 地域包括支援センター | 担当のケアマネジャーがいない段階での相談先 | 近隣市の施設も含めて教えてもらえる |
当サイトでは、厚生労働省の公表データを市区町村ごとに集計し直して、21の主要サービスについて「何件あるか」と「1つもないか」を1ページで見られるようにしています。老健も含まれています。
地域包括支援センターに何を頼めるかは地域包括支援センターに何を頼めるか、ケアマネジャーの選び方はケアマネジャーの選び方と変え方にまとめています。
まとめ
| 押さえること | 内容 |
|---|---|
| 老健とは | 在宅復帰を目的にした介護保険の施設。全国3,994施設。医師とリハビリ職の配置が義務 |
| 3か月の意味 | 退所の期限ではなく、入所を続けるか見直す周期。延長される人もいる |
| 地域差 | 1つもない市区町村が516(27.3%)。北海道は54.3%。全国の中央値は1 |
| 住所の制限 | なし。市外・県外にも申し込める |
| 入所までの期間 | 空きがあれば数週間。特養のような長期の順番待ちではない |
| 断られる理由 | 医療費が施設負担になる仕組みのため、高額な薬や医療処置で可否が分かれる |
| 費用 | 施設サービス費(1〜3割)+居住費+食費。負担限度額認定で居住費と食費が下がる。おむつ代は施設負担 |
| 退所後 | 自宅/特養/有料老人ホーム等/別の施設の4つ。入所した日から準備を始める |
この記事でいちばん実務的な一手は、入所が決まった日に、特別養護老人ホームの申し込みも出しておくことです。自宅に戻れれば取り下げれば済みます。順番待ちのある施設は、必要になってから申し込むと間に合いません。
自宅に戻るのが難しそうだと分かった時点で、住まいの候補は並べておいてください。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、条件を伝えれば資料を取り寄せて比べられます。退所の日程が決まってから探し始めると、空いているところに入るしかなくなります。
よくある質問
老健は本当に3か月で退所になりますか。
法令に「3か月まで」という上限はありません。老健ではおおむね3か月ごとに入所を続ける必要があるかどうかを施設が検討することになっていて、この周期が「3か月」として伝わっています。検討の結果、延長されることもあります。ただし老健は在宅復帰を評価される仕組みなので、施設としては長期化を避けたい事情があります。入所の面談のときに「実際の運用ではどれくらいの方が多いですか」と聞いておくと見通しが立ちます。
特養が空くまで老健で待つことはできますか。
制度上は禁止されていませんが、老健の目的は在宅復帰なので、長期の待機場所として想定された施設ではありません。実際には特養の申し込みをしながら老健を使う人が多くいますが、老健側の3か月ごとの検討で退所を求められることもあります。安全なのは、老健に入所した時点で特養の申し込みを出し、同時に有料老人ホームなど他の受け皿も並行して見ておくことです。
要介護1でも入れますか。
入れます。老健の入所条件は要介護1以上で、特別養護老人ホームの原則要介護3以上より広くなっています。ただし病状が安定していて、入院して治療する必要がないことが前提です。逆に要介護度が高くても、医療的な管理が継続して必要な場合は、老健ではなく介護医療院や医療機関が適していると判断されることがあります。
住んでいる市に老健がありません。
市外や県外の施設に申し込めます。老健は都道府県が指定する施設なので、住所による利用制限がありません。1つもない市区町村は全国に516(27.3%)あり、北海道では188市町村のうち102に存在しないので、地元にないこと自体は珍しくありません。ただし面会に通える距離かどうかは実際に効くので、近隣の市も含めて相談員やケアマネジャーに候補を出してもらってください。
なぜ薬が多いと断られるのですか。
老健では入所中の投薬や検査などの医療費が、原則として施設の介護報酬に含まれる仕組みになっているためです。つまり薬代を施設が負担します。高額な薬を継続して使っている場合、施設の持ち出しが大きくなるため受け入れが難しくなります。制度の設計上そうなっているだけで、施設の姿勢の問題ではありません。ただし施設の方針によって判断は分かれるので、1か所で断られても次を当たる価値があります。申し込みのときにお薬手帳の写しを渡しておくと、無駄な往復が減ります。
費用は特養より高いですか。
部屋の種類と要介護度、施設の類型によって変わるため一概には言えませんが、施設サービス費は老健のほうがやや高めに設定されています。医師とリハビリ職を配置しているためです。一方でおむつ代が施設サービス費に含まれるなど、実費が少ない面もあります。所得と資産が一定以下なら介護保険負担限度額認定で居住費と食費が下がり、これは特養と同じ仕組みです。この額は2026年8月1日から引き上げられているので、最新の金額は市区町村の窓口で確認してください。
入所中に医療機関を受診できますか。
できますが、扱いが特養とは異なります。老健には常勤の医師がいるため、日常的な診療は施設内で行われるのが基本です。専門的な診療が必要な場合は外部の医療機関を受診しますが、施設と重複する診療内容には制限があります。どの範囲までを施設内で見て、どこから外部を受診するのかは施設ごとに運用が違うので、面談のときに「受診が必要になったらどうしますか」と聞いておいてください。
入所までどれくらい待ちますか。
空きがあれば数週間で決まることが多く、特別養護老人ホームのような長期の順番待ちにはなりません。老健は在宅復帰を前提に人が入れ替わる施設なので、回転が速いためです。ただし人気のある施設や、地域に1か所しかない場合は待つこともあります。手続きで時間がかかりやすいのは主治医の診療情報提供書なので、これを最初に依頼しておくと全体が早く進みます。
リハビリは毎日ありますか。
施設によります。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の配置は義務ですが、1人あたりの個別リハビリの頻度と時間は施設の類型と職員の人数で変わります。入所直後の3か月は手厚く、その後に頻度が下がる形が一般的です。面談で「1週間に何回、1回何分ですか」「3か月を過ぎると変わりますか」と具体的に聞いてください。あわせて「リハビリの時間以外はどう過ごしますか」も聞くと、日常の中で体を動かす機会があるかどうかが分かります。
このページの数字はどこから来ていますか。
施設数と市区町村ごとの集計は、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で公表されている全国のデータを2026年6月末時点で取得し、同一事業所の重複を整理したうえで集計したものです。対象は全国1,889市区町村。定員欄は未報告の施設が半数を占めるため使っていません。居住費・食費の負担限度額の改定については、厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1506」(2026年5月29日)によります。