特養の待機期間は本当に長いのか|1施設だけの自治体が401ある

執筆者:

カテゴリ:

※ 本ページはプロモーションを含みます。

「特養は何年も待つ」と言われます。実際、地域によっては数年かかります。

ただ、待機期間は住んでいる場所によってまったく違います。そして「申し込んでも無駄だ」と諦めてしまうのは、最ももったいない判断です。

この記事では、全国10,444か所の特養の公的データをもとに、待機の実態と、待つ間にやるべきことを整理します。

特養は全国に10,444か所ある

種類 施設数 定員規模 申込みできる人
特別養護老人ホーム(広域型) 7,916 30人以上 要介護3以上。市外・県外からも可
地域密着型特養 2,528 29人以下 要介護3以上。原則その市区町村の住民のみ

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで重複を整理して集計。

この2つを分けて考えていない人が多いのですが、重要な違いです。

広域型は市外・県外からでも申し込めます。地域密着型は住民票がその市区町村にある人だけ。

つまり親を呼び寄せたい場合、地域密着型の2,528か所は最初から対象外になります。使えるのは全体の76%です。

逆に言えば、今住んでいる場所の特養なら、地域密着型も含めて申し込めます。選択肢が増えます。

地域差がすべて

全国1,889市区町村のうち、特養がある自治体は1,798。91の自治体には1つもありません。

そして施設数の中央値は3施設。さらに、401の市区町村には特養が1つしかありません。

都道府県別の施設数

特養が多い県 施設数
東京都 593
大阪府 566
千葉県 479
埼玉県 470
北海道 470
特養が少ない県 施設数
鳥取県 48
佐賀県 61
高知県 64
徳島県 79
沖縄県 81

「1施設しかない自治体」が多い県

都道府県 特養が1施設だけの自治体数
北海道 102
長野県 27
福島県 22
沖縄県 17
青森県 12

北海道は102の自治体で特養が1施設しかありません。さらに11の自治体には1つもない。

こうした地域では「複数申し込んで比較する」という戦略が取れません。その1施設に空きが出るまで待つか、隣接する自治体の広域型に申し込むかになります。

つまり──

  • 都市部:候補が多く、複数申し込める。競争率は高いが回転もある
  • 地方:候補が1〜3か所。空きが出るまで動かない

「特養は何年待ち」という一般論が意味を持たないのは、この差があるからです。あなたの地域に何か所あるかで、話がまったく変わります。

待機期間が長くなる本当の理由

特養は先着順ではありません。必要度の高い人から入ります。

各施設が点数をつけて順位を決めています。評価されるのは主にこの4点です。

評価される点 内容
要介護度 重いほど優先
介護者の状況 独居、高齢の配偶者のみ、家族が病気・障害など
在宅サービスの利用状況 限度額いっぱい使っていても足りていないか
住まいの状況 階段しかない、風呂に入れない、火の始末が危険など

つまり「困っている度合い」で決まります。

ここが重要です。申し込んだときの状況が、そのまま順位になるわけではありません。状況が変われば順位は変わります。

だから──

状況が悪化したら、必ず施設に連絡して申込内容を更新してください。

要介護度が上がった、介護している配偶者が入院した、徘徊が始まった、火を消し忘れるようになった。こうした変化を伝えていないと、古い情報のまま順位がつき続けます。

申し込んだことを忘れて何年も放置し、いつまでも順番が来ないケースは、これが原因のことがあります。

いま申し込むべき3つの理由

入居する気がまだ固まっていなくても、申し込みだけは今しておくべきです。

1. 申込みは無料で、複数の施設に出せる

1か所に絞る必要はありません。通える範囲の特養すべてに出しておいて構いません。

  1. 順番が来ても断れる

打診が来たときに「今は在宅で大丈夫です」と断ることができます。ただし施設によっては、断ると順位が下がる、または申込みが取り消される場合があります。断ったときの扱いを、申込時に確認しておいてください。

  1. 状況は必ず変わる

親の状態も、介護する側の状況も、確実に変化します。そのときゼロから申し込むのと、既に申し込んで数年経っているのとでは、まったく違います。

待っている間にやること

待機中を「何もできない期間」にしないでください。やるべきことがあります。

やること 理由
在宅サービスを限度額まで使う 使い切ってもなお厳しい、という記録が必要性の証明になる
ショートステイを定期的に使う 介護者が休める。本人も施設に慣れる
状況が変わったら申込内容を更新 これをしないと順位が動かない
負担限度額認定を申請する 該当すれば月額が数万円下がる
民間施設も並行して見ておく 特養一本は危険

在宅サービスを使い切る

これは順位にも影響します。サービスを使い切ってもなお在宅が厳しい、という記録が必要性の証明になります。遠慮して使っていないと、「まだ余裕がある」と判断されかねません。

ケアマネジャーに「使える上限まで使いたい」と伝えてください。

ショートステイを組み込む

数日〜1週間の宿泊です。全国に14,963か所あり、ゼロの自治体は83だけなので、比較的どの地域でも使えます。

介護する側が休めますし、親も施設での生活に慣れます。急な入所になったときの適応が違います。

「限界が来たら使う」ではなく、最初から月に数日を予定に入れてください。家族が倒れてからでは予約が取れません。

家族の分担を決めておく

入所の連絡が来てから慌てないよう、待機中に決めておくことがあります。

決めておくこと 理由
誰が手続きの窓口になるか 施設からの連絡先を一本化する
費用を誰がどう負担するか 兄弟間で後から揉める最大の原因
身元引受人を誰にするか 入所時に必ず求められる
荷物の準備を誰がするか 1〜2週間で用意することになる

費用の分担は、口約束にせず記録に残してください。「親の年金から出す」「足りない分は長男が」といった取り決めが曖昧なまま数年経つと、相続の際に必ず問題になります。

民間施設も並行して見ておく

これが一番大事です。特養だけを待って、他を何も見ていない状態が最も危険です。

在宅が限界に来たとき、特養の順番はまだ来ていない。その状況で慌てて探すと、費用も条件も妥協した選択になります。

資料の取り寄せは無料です。すぐに入居する必要はありません。費用の目安を知っておくだけでも、判断の速さが変わります。

特養を待ちながら、民間施設の候補も確保しておく

費用の目安と、下げる方法

種類 入居一時金 月額の目安
特別養護老人ホーム なし 5〜15万円
介護老人保健施設 なし 8〜15万円
グループホーム 0〜数十万円 12〜20万円
介護付有料老人ホーム 0〜数千万円 15〜30万円以上

特養が安いのは、運営の94%が社会福祉法人という公的な性格によるものです。この差が待機を生んでいるとも言えます。

負担限度額認定を必ず申請する

これを知らずに損している方が多い制度です。

所得と資産が一定以下の場合、特養・老健・ショートステイの食費と居住費が軽減されます。

制度名 介護保険負担限度額認定
申請先 市区町村の窓口
注意 申請しないと適用されない。自動では適用されない
効果 該当すると月額が数万円下がることがある

判定には預貯金額も含まれます。詳しい要件は市区町村によって案内が異なるので、まず窓口で「負担限度額認定を受けられますか」と聞いてください。

特養に申し込むときに必ず確認すべき項目です。

申込書に何を書くかで、順位が変わる

特養の申込書には、必ず「介護の状況」を書く欄があります。ここの書き方で順位が変わります。

多くの方が遠慮して控えめに書きますが、これは謙遜する場面ではありません。事実を漏れなく書いてください。

書き忘れが多い項目

項目 書くべき内容の例
夜間の状況 「夜間2〜3回起こされる」「昼夜が逆転している」
排泄 「失禁がある」「トイレの場所が分からなくなる」
火の始末 「鍋を焦がしたことが○回」「ガスを消し忘れる」
徘徊 「外に出て戻れなくなったことが○回」「警察に保護された」
介護者の状況 「介護者も○歳」「持病がある」「フルタイムで働いている」
住まいの構造 「2階に寝室があり階段の上り下りが危険」「風呂に手すりがない」
家族の距離 「子は片道○時間の距離」「近隣に頼れる親族がいない」

回数や時間を具体的な数字で書くと、状況が伝わります。「時々」ではなく「週に2回」と書いてください。

医師の意見書と食い違わないようにする

申込書の内容が、主治医の意見書や認定調査の結果と大きく食い違うと、信頼性を疑われることがあります。

受診時に、家庭での様子を医師に伝えておいてください。診察室では本人がしっかり受け答えできてしまい、実態が伝わらないことがよくあります。メモにして渡すのが確実です。

特養以外に、費用を抑えられる選択肢

特養を待つ間、あるいは要介護度が足りない場合に検討できる選択肢があります。

種類 施設数 月額 特徴
介護老人保健施設 3,994 8〜15万円 一時金なし。原則3〜6か月
軽費老人ホーム(ケアハウス) 575 6〜15万円 所得に応じた軽減あり。要介護認定なしでも可のタイプあり
地域密着型特養 2,528 5〜15万円 住民票がその市区町村にあれば申込可

軽費老人ホーム(ケアハウス)はほとんど知られていません。575施設しかなく、1,511の市区町村には存在しません。ただし地域にあれば、特養の待機中の住まいとして有力な選択肢になります。

90%が社会福祉法人の運営で、公式サイトを持っている施設が96.2%と情報も比較的出ています。市区町村の高齢福祉課に問い合わせてみてください。

よくある失敗

失敗 なぜ起きるか 対策
申し込んだまま放置して順番が来ない 状況変化を伝えていない 変化があるたび施設に連絡
1か所しか申し込んでいない 遠慮している 通える範囲すべてに出す
特養だけを待って他を見ていない 「安いから」 民間施設の候補も確保
負担限度額認定を申請していない 制度を知らない 市区町村の窓口で確認
在宅サービスを遠慮して使っていない 迷惑をかけたくない 使い切ることが必要性の証明になる
呼び寄せ先の地域密着型に申し込もうとした 住民票の条件を知らない 広域型(76%)を選ぶ

手続きの流れ

段階 やること 備考
1 要介護認定を受ける 特養は原則要介護3以上
2 ケアマネジャーに相談 申込みを代行してもらえる
3 通える範囲の特養をリストアップ 広域型・地域密着型を区別する
4 複数の施設に申し込む 無料。何か所でも可
5 負担限度額認定を申請 市区町村の窓口
6 在宅サービスを使い切る 限度額まで
7 状況が変わるたび申込内容を更新 これを忘れない
8 並行して民間施設の候補も確保 限界が来る前に

まとめ

  1. 今すぐ申し込む。無料で、複数出せて、断れる
  2. 通える範囲の特養すべてに出す。1か所に絞らない
  3. 状況が変わったら必ず更新の連絡をする。これをしないと順位が動かない
  4. 待つ間に在宅サービスを使い切る。それ自体が必要性の証明になる
  5. 負担限度額認定を申請する。申請しないと適用されない
  6. 民間施設も並行して見ておく。特養一本は危険

次にやること

特養の申込みは市区町村の窓口か、施設に直接です。担当のケアマネジャーがいれば、まずその方に相談してください。手続きを代行してもらえます。

そして並行して、民間施設の候補を確保しておいてください。

条件に合う施設の資料を取り寄せる

※ 無料で利用できます。この紹介サービスで特別養護老人ホームは扱っていません。特養の申込みは市区町村の窓口へ。両方やってください。

よくある質問

要介護2ですが、特養に申し込めますか。

原則は要介護3以上です。ただしやむを得ない事情がある場合は「特例入所」が認められることがあります。認知症で常時見守りが必要、家族から虐待の恐れがある、単身で在宅生活が困難といった場合です。市区町村にご相談ください。

何か所まで申し込めますか。

制限はありません。通える範囲の特養すべてに申し込んで構いません。申込みは無料です。ただし施設ごとに申込書の様式が違うため、手間はかかります。ケアマネジャーに相談すれば代行してもらえます。

順番が来たけれど、まだ在宅で大丈夫です。断れますか。

断れます。ただし施設によっては順位が下がる、または申込みが取り消される場合があります。申込時に「一度断った場合どうなりますか」を確認しておいてください。

申し込んでから3年経ちますが、連絡がありません。

まず申込みが有効かどうかを施設に確認してください。施設によっては定期的な更新が必要な場合があります。あわせて、この3年で状況が変わっていれば必ず伝えてください。要介護度が上がった、介護者の状況が変わったといった情報が反映されていないと、古い順位のままです。

遠方の親を、自分の近くの特養に申し込めますか。

広域型(7,916施設)なら申し込めます。市外・県外からの申込みが可能です。ただし地域密着型(2,528施設)は、その市区町村に住民票がある方のみです。呼び寄せを考えている場合は、広域型を中心に探してください。

費用はどのくらいですか。

月5〜15万円が目安です。要介護度、居室のタイプ(多床室かユニット型個室か)、所得によって変わります。所得が低い場合は負担限度額認定を申請すると、食費と居住費が軽減されます。申請しないと適用されないので、必ず市区町村の窓口で確認してください。

入所したあと、退所になることはありますか。

あります。長期入院した場合や、医療的ケアが施設の対応範囲を超えた場合などです。特養は原則として終身利用できる施設ですが、契約書の退所要件は必ず確認してください。

入所の連絡は、どのくらい前に来ますか。

施設によりますが、1週間から2週間程度前が一般的です。急に「来週から」と言われることもあります。日用品の準備、住民票や保険証の手続き、在宅サービスの解約など、やることが一度に来ます。待機中にリストを作っておくと慌てずに済みます。

老健とはどう違いますか。

老健は在宅復帰を目指す施設で、原則3〜6か月の期限があります。リハビリの体制があり、退院後に自宅へ戻る準備をする場所です。一方特養は生活の場で、期限はありません。目的が違うので、状況に応じて使い分けます。

この記事のデータについて

出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)/2026年6月末時点

同一施設が複数の指定区分で重複登録されているケースを、施設名と住所で名寄せして整理しています。公表データの「定員」欄は未報告が半数近くを占めるため集計に使用せず、施設の「数」のみを用いています。

入所判定の基準と待機期間は施設・自治体によって異なります。費用の目安は一般的な水準であり、実際の金額は所得区分等により変わります。特例入所や負担限度額認定の要件は制度改正により変更される場合があります。最新の内容は市区町村にご確認ください。