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「24時間対応の介護サービスがあるから、在宅でも大丈夫」
パンフレットにはそう書いてあります。ケアマネジャーからもそう説明されるかもしれません。
ただし、それはあなたの住む市区町村にそのサービスが存在すればの話です。
全国215,404の介護事業所を集計したところ、夜間に対応できるサービスが1つもない市区町村が1,085ありました。全体の57%です。
夜間に対応できるサービスは3つしかない
介護保険で夜間・深夜に自宅へ来てもらえるサービスは、実質この3種類です。
| サービス | 全国の事業所数 | 存在する自治体 | ゼロの自治体 |
|---|---|---|---|
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 1,418 | 616 | 1,273(67.4%) |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | 1,142 | 557 | 1,332(70.5%) |
| 夜間対応型訪問介護 | 131 | 105 | 1,784(94.4%) |
出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)2026年6月末時点。当サイトで重複を整理して集計。全国1,889市区町村を対象。
3つのどれか1つでもある自治体は804。残りの1,085自治体(57%)には、夜間に来てくれるサービスが存在しません。
とくに「夜間対応型訪問介護」は全国に131事業所しかありません。94%の自治体には存在しない制度です。名前だけは制度として存在していますが、実態は都市部の一部にしかありません。
3種類そろっている自治体はごくわずか
| 揃っているサービスの数 | 自治体数 |
|---|---|
| 3種類すべて | 73 |
| 2種類 | 328 |
| 1種類だけ | 403 |
| ゼロ | 1,085 |
3種類そろっているのは全国で73自治体だけ。全体の4%です。
3つのサービスは何が違うのか
| サービス | 内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 定期巡回・随時対応型 | 1日複数回の短時間訪問+呼び出し対応。看護師も来る | 排泄介助や服薬確認が1日に何度も必要 |
| 看護小規模多機能型 | 通い・訪問・泊まりに訪問看護が加わる | 医療的ケアがあり、状態が不安定 |
| 夜間対応型訪問介護 | 夜間帯(22時〜6時など)の巡回と呼び出し | 夜間だけ不安がある |
定期巡回がいちばん実用的です。月額の定額制で、決まった時間の訪問と、緊急時の呼び出しの両方が使えます。
ただし1,418事業所しかなく、3分の2の自治体には存在しません。
地域による差が8倍ある
夜間対応サービスがある自治体の割合を、都道府県別に見ました。
| 整っている県 | 自治体数 | ある | 割合 |
|---|---|---|---|
| 神奈川県 | 58 | 46 | 79.3% |
| 大阪府 | 72 | 55 | 76.4% |
| 東京都 | 60 | 45 | 75.0% |
| 兵庫県 | 49 | 35 | 71.4% |
| 埼玉県 | 72 | 48 | 66.7% |
| 空白が大きい県 | 自治体数 | ある | 割合 |
|---|---|---|---|
| 鳥取県 | 19 | 2 | 10.5% |
| 高知県 | 33 | 4 | 12.1% |
| 青森県 | 40 | 5 | 12.5% |
| 和歌山県 | 30 | 5 | 16.7% |
| 徳島県 | 24 | 4 | 16.7% |
| 北海道 | 188 | 37 | 19.7% |
神奈川県79.3%に対して鳥取県10.5%。8倍近い差があります。
鳥取県では19市町村のうち、夜間対応サービスがあるのは2つだけ。残り17市町村では、夜中の対応は家族がするしかありません。
これが何を意味するか
夜中の2時に、親がベッドから落ちたとします。あるいは、おむつを替えてほしいと呼ばれる。熱を出す。
あなたの自治体にこれらのサービスがなければ、来るのは家族です。
- 同居していれば、あなたが起きる
- 別居していれば、車を出して駆けつける
- どちらも無理なら、救急車を呼ぶしかない
在宅介護で家族が最初に限界を迎えるのは、日中の介護量ではなく、夜眠れないことです。
| 夜間に起きること | 頻度の例 |
|---|---|
| トイレの介助 | 一晩に2〜4回 |
| おむつ交換 | 一晩に1〜2回 |
| 転倒・ベッドからの転落 | 不定期 |
| 徘徊(外に出ようとする) | 認知症の場合 |
| 大声・幻覚による混乱 | 認知症の場合 |
| 発熱・体調急変 | 不定期 |
夜間に2回起こされる生活が続くと、働きながらの介護はまず持ちません。
「24時間対応がある」という前提で在宅を選ぶと、この計算が狂います。
まず、自分の地域にあるか確認してください
これは調べれば分かります。担当のケアマネジャーに、こう聞いてください。
「この市区町村に、定期巡回・随時対応型か、看護小規模多機能はありますか」
「ある」なら、在宅を続ける選択肢に現実味があります。
「ない」なら、夜間は家族が対応するしかないという前提で計画を立てる必要があります。
ケアマネジャーが即答できない場合、そのサービス自体が地域にない可能性が高いです。
隣接する市区町村も確認する
定期巡回と夜間対応型は地域密着型サービスなので、原則としてその市区町村の住民しか使えません。
ただし、看護小規模多機能型も地域密着型ですが、市区町村同士の協議で他市の住民の利用が認められる場合があります。隣の市にあるなら、使えるかどうかケアマネジャーに確認する価値があります。
夜間サービスがない地域で、在宅を続けるには
選択肢がゼロではありません。ただし、どれも家族の負担を前提にしています。
ショートステイを定期的に組み込む
数日〜1週間の宿泊です。全国に14,963か所あり、ゼロの自治体は83だけ。在宅サービスの中で最も全国に行き渡っています。
「限界が来たら使う」ではなく、最初から月に数日を予定に入れてください。家族が倒れてからでは予約が取れません。
| ショートステイの使い方 | 効果 |
|---|---|
| 月に2〜3日を定期的に | 家族が確実に休める |
| 連続7日程度を年に数回 | まとまった休養が取れる |
| 本人を慣れさせる | 急な入所時の適応が違う |
小規模多機能型居宅介護を使う
通い・訪問・泊まりを同じ事業所が組み合わせて提供します。急に泊まりに切り替えられるのが強みです。
ただし全国5,373か所で、608自治体(32%)には存在しません。ここも地域差があります。
緊急通報装置を導入する
多くの自治体が高齢者向けに補助や貸与をしています。ボタンひとつで委託先のセンターや消防に繋がります。
夜間サービスの代わりにはなりませんが、駆けつけの判断は早くなります。市区町村の高齢福祉課に問い合わせてください。
見守りセンサーを使う
ベッドからの離床、居室の動き、トイレの使用回数などを検知して通知する機器があります。介護保険の福祉用具貸与の対象になるものと、自費のものがあります。
別居している場合、これがあるだけで安心感が違います。
訪問看護の緊急時対応を確認する
訪問看護ステーションの多くは、24時間の電話相談と緊急訪問の体制を持っています(加算がつきます)。
ただし訪問看護そのものが362自治体(19.2%)には存在しません。まず地域にあるかを確認してください。
家族で夜間を分担する
一人で抱え込むと、確実に潰れます。同居している家族が一人で対応している場合が、いちばん危険です。
分担の型
| 型 | 内容 | 向いている状況 |
|---|---|---|
| 曜日で分ける | 平日は同居家族、週末は別居の兄弟が泊まる | 兄弟が近隣にいる |
| 期間で分ける | 月ごと、季節ごとに主担当を交代 | 遠方だが長期休暇が取れる |
| 費用で分ける | 対応できない側が費用を多く負担 | 距離や仕事の都合で動けない |
| 外部に出す | ショートステイの費用を分担 | 全員が対応できない |
「できない」なら費用で負担するという形も、立派な分担です。動けないことを責め合うより、役割を分けた方が続きます。
話し合いのときに使えること
主観で「大変だ」と伝えても、離れている家族には伝わりません。記録を見せてください。
8/15 2:10 トイレ介助
8/15 4:30 大声で起きる
8/16 1:45 トイレ介助
8/16 3:20 ベッドから落ちる
2週間分のこれを見せる方が、どんな説明よりも伝わります。
在宅から施設へ切り替える判断
明確な基準はありませんが、次のうち複数が当てはまるなら、検討する時期です。
| サイン | 内容 |
|---|---|
| 夜間の対応が週4回以上 | 睡眠が慢性的に不足している |
| 介護者が体調を崩した | 腰痛、不眠、抑うつ |
| 仕事に支障が出ている | 遅刻、早退、欠勤が増えた |
| 感情的になることが増えた | 声を荒げる、手が出そうになる |
| 本人の転倒が増えた | 見守りが追いつかない |
| 火の始末が危険 | 在宅の継続そのものがリスク |
とくに4番目が出たら、限界に近いと考えてください。介護者が自分を責める必要はまったくありません。環境が持たないという話です。
よくある失敗
| 失敗 | なぜ起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 「24時間対応がある」と信じて在宅を選んだ | 制度の存在と地域の実在を混同 | ケアマネに地域の有無を確認 |
| ショートステイを限界まで使わなかった | 「かわいそう」と感じる | 最初から予定に組み込む |
| 家族が一人で抱え込んだ | 兄弟に言い出せない | 早い段階で分担を決める |
| 夜間の負担を記録していなかった | 主観で説明してしまう | 回数を記録する。特養の申込みでも使える |
| 限界が来てから施設を探し始めた | 準備していない | 在宅を続けながら候補を確保 |
夜間に起こされた回数は記録しておいてください。「毎晩大変です」と言うより、「一晩に平均3回、週に5日」と伝える方が、ケアマネジャーにも施設にも伝わります。特養の申込書にも書けます。
それでも夜が持たないなら
在宅の継続を諦めるべき、という話ではありません。判断の材料を持っておくべきだという話です。
夜間サービスのない地域で、家族が夜間対応を続けている。この状態は長くは持ちません。実際に多くの家庭が数か月から1年程度で限界を迎えています。
限界が来てから探し始めると、費用も条件も妥協した選択になります。空いている施設に入るしかなくなるからです。
在宅を続けながらでも、施設の候補は先に持っておいてください。
資料を取り寄せておくだけで、いざというときの判断がまったく違います。すぐに入居する必要はありません。
費用の目安を知っておくだけでも意味があります。「月20万かかる」と分かっていれば、年金と貯蓄からいつまで持つかを計算できます。何も知らないまま限界を迎えるのが、いちばん危険です。
施設なら夜間はどうなるか
参考までに、施設に入った場合の夜間体制です。
| 施設の種類 | 夜間の職員体制 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム | 入居者25人に1人以上の夜勤職員 |
| 介護付有料老人ホーム | 施設により差が大きい。見学時に必ず確認 |
| グループホーム | 1ユニット(5〜9人)に1人 |
| 介護老人保健施設 | 看護職員の配置あり |
グループホームは夜勤1人体制が基本です。少人数なので手厚く見えますが、その1人が対応できる範囲には限りがあります。
見学のときは「夜勤は何人か。入居者何人に対して何人か」を必ず聞いてください。日中の配置はどこも似ていますが、差が出るのは夜間です。
まとめ
- 「24時間対応がある」は全国共通ではない。57%の自治体には存在しない
- 地域差が8倍ある。神奈川79.3%、鳥取10.5%
- ケアマネジャーに、地域にあるかを直接聞く。即答できなければ無い可能性が高い
- ない地域では、夜間は家族が対応する前提で計画を立てる
- ショートステイを「限界が来たら」ではなく最初から予定に入れる
- 夜間に起こされた回数を記録する。説明にも申込みにも使える
- 在宅を続けながらでも、施設の候補と費用は把握しておく
次にやること
まずケアマネジャーに地域の状況を確認してください。そのうえで、夜間の見通しが立たないなら、施設の情報も並行して集めてください。
※ 無料で利用できます。特別養護老人ホームはこのサービスの対象外です。特養は市区町村の窓口かケアマネジャーへ。
よくある質問
定期巡回と訪問介護は何が違うのですか。
訪問介護は1回ごとの契約で、決まった時間に決まった内容を行います。定期巡回は月額定額制で、1日複数回の短時間訪問と、緊急時の呼び出しがセットになっています。夜間や早朝も対応範囲です。ただし1,418事業所しかなく、3分の2の自治体には存在しません。
地域に夜間サービスがない場合、隣の市のものは使えますか。
原則として使えません。定期巡回・夜間対応型・看護小規模多機能はいずれも地域密着型サービスで、その市区町村の住民が対象です。ただし市区町村同士の協議で例外が認められる場合があるため、ケアマネジャーに確認してみてください。
訪問看護は夜間も来てくれますか。
24時間対応の体制を持つ事業所が多いです(加算がつきます)。ただし医療的な必要性がある場合が中心で、おむつ交換や体位変換といった介護目的では呼べません。また訪問看護そのものが362自治体には存在しません。
緊急通報装置はどこで借りられますか。
市区町村の高齢福祉課です。多くの自治体が補助や貸与の制度を持っています。所得によって自己負担が変わることがあります。民間のサービスもありますが、まず自治体の制度を確認してください。
夜勤の人数は、どのくらいが適切ですか。
特養は法令上、入居者25人に1人以上とされています。それより手厚ければ良いと考えて構いません。ただし人数だけでなく、フロアの構造も影響します。1人で複数階を見る施設と、1フロアに専任がいる施設では対応速度が違います。
別居していますが、夜間に何かあったらどうすればいいですか。
見守りセンサーと緊急通報装置の併用を検討してください。離床や動きの異常を検知して通知が来ます。そのうえで、駆けつけられる距離かどうかを現実的に考えてください。片道1時間以上かかる場合、夜間の急変には実質的に対応できません。
ケアマネジャーが「大丈夫です」としか言いません。
具体的なサービス名で聞いてください。「この市に定期巡回はありますか」「看護小規模多機能はありますか」と。それでも曖昧なら、市区町村の高齢福祉課に直接聞くか、地域包括支援センターに相談してください。ケアマネジャーは変更することもできます。
夜勤の職員が1人だと不安です。
人数だけでなくフロアの構造も見てください。1人で複数階を担当する施設と、1フロアに専任がいる施設では、呼び出しへの到達時間がまったく違います。見学時に「夜勤の方は何フロアを担当しますか」と聞いてみてください。
施設に入っても、夜中に呼び出されることはありますか。
あります。急変時や入院が必要になったときは、家族に連絡が来ます。そのため、施設からの距離は現実的に考えてください。片道2時間の施設だと、そのたびに1日が潰れます。
夜間の負担を、どう記録すればいいですか。
日付・時刻・内容を一行ずつ書くだけで十分です。「8/15 2:10 トイレ介助」「8/15 4:30 大声で起きる」といった形です。1〜2週間分あれば、状況が客観的に伝わります。特養の申込書や、要介護認定の調査時にも使えます。
この記事のデータについて
出典:介護サービス情報公表システム(厚生労働省)/2026年6月末時点
同一事業所が複数の指定区分で重複登録されているケースを、事業所名と住所で名寄せして整理しています。公表データの「定員」欄は未報告が半数近くを占めるため集計に使用せず、事業所の「数」のみを用いています。
事業所の有無は指定状況にもとづくもので、実際に受け入れ可能かどうかは各事業所の状況によります。サービスの利用可否や提供範囲は、担当のケアマネジャーにご確認ください。夜間の職員配置基準は制度改正により変更される場合があります。