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【後編】励ましではなく、相手から見て「わかってくれる人」になる

前回に続き「苦しむ人への援助」について、「一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会」理事、めぐみ在宅クリニック院長の小澤竹俊先生にお話を伺いました。
小澤先生は、援助者養成講座や執筆・講演活動等を通じて「スピリチュアルな苦しみに対する具体的援助」の普及に取り組んでおられます。
前編はこちら→https://mamoria.jp/clip/20170621/end-of-life


「わかってくれる人」がいれば安心してゆだねられる


―「苦しむ人の支えになりたいけれど、どうして良いかわからない」との声をよく聴きます。
その人が、たとえ介護を必要とするような状況でも、なお残り続ける役割があるのではないでしょうか。
その役割を見出すことが出来たら、穏やかになれます。
例えば、料理を作れなくなったお母さんでも、教えることが出来ます。
本人が大事にしてきたことを教える役割を作ることが、関わる人にできることの1つかもしれません。
歳だから、心配だからと「役割」を奪うことは、本人が「生きる意味」を失うことになりかねません。

前編でもお話したとおり、人には様々な「支え」があります。支えとは、その人が穏やかになれる条件です。どんなことがあれば穏やかになるのか?

家族やペットや大いなるものといった、自分との関係性もあれば、亡くなった後も含めた将来の夢もあれば、「選ぶことができる」ことも支えととることができます。療養場所を選ぶことができたり、希望する医療が受けられたり、「誰かの役に立つこと、役割があること」もまた選ぶことができるように、関わる人が援助できると、本人が穏やかになれる可能性が見えてきます。

そのほかにも、いくつか「選ぶことができる自由」を考える視点がありますが、なかでも最も難しいレッスンは「ゆだねる」ことです。
その人が、大事な何かをゆだねることが出来たら、穏やかになれる可能性があります。

例えば、盆栽の手入れをしてきたおじいさん。
職人芸と呼ばれるほどの腕前だったのが、麻痺等で、手が自由に動かなくなって、大事な盆栽の手入れができなくなっていく。
本当は自分で何とかしたいのに、自分ではできなくなり、イライラするかもしれません。
でももし「信頼できる友人の彼にお願いすれば、私と同じかそれ以上に、この盆栽を扱ってくれるだろう」と思えたら、安心してゆだねることができ、「選ぶことができる」という「支え」は失いません。

お風呂やお手洗いもゆだねることが難しいテーマです。要介護レベルに応じて決めつけず「本人が、どんなものを希望するか」やり方を一緒に検討することも、すごく大事です。
人には尊厳があって、しばしば現場では「下の世話になるくらいなら早く死んでしまいたい」という声を聞きます。
たとえ自分でトイレまで歩いていくことができなくても、いくつかある選択肢から、自分で選ぶことができると良いですね。「要介護4だからこうだ」と決めつけないで、本人がどうしたいを大切にしたいと思います。

そして、1人でトイレに行きたいのに行けない苦しみを抱えながらもなお、下の世話を誰かにゆだねても良いと思えたら穏やかになれる可能性が見えてきます。

ただ、難しいのは「誰にゆだねるか」です。誰でも良いのではないのです。
「信頼できる人」だからこそ、ゆだねることが出来ます。では、どんな人なら信頼できるのか。それは、「自分の苦しみをわかってくれる人」。誰が「わかってくれる人なのか」というと、「自分の苦しみを聴いてくれる人」
つまり、冒頭の「援助的コミュニケーション」が大切な理由はここにあります。
(下図➀)
分かってくれる人に信頼を寄せ、信頼する人にゆだねていくのです。



力になれない自分を認める「支え」を知る


―図➃➄の私(援助者)の「支え」について、お話頂けますか。

ここまでお話してきたように、希望と現実の開きである「苦しみ」に対し、解決できるものは解決できるよう援助します。解決できないものは、その苦しみの存在を認め、共に味わいながらもなお、本人が穏やかになれる「支え」を探します(図➁➂)。支えは人によって様々です。その支えを強めるために具体的にどのようなことができるか。それは誰ができるのか。サービスを入れることを前提とするのではなく、その人が穏やかになれる条件である「支え」を強めることを意識して、本人、家族も含めて皆でできることを考えていきます。(図➃)

たとえば、生まれ故郷に戻って墓参りがしたい。実際に旅行することが難しくても、代わりに家族が現地に行って写真を撮ってくる、これも支えを強める一つの手段と言えるでしょう。

こうしたきれいな話は聞いていて感動するかもしれません。
「希望を叶えてくれてありがとう」といった感謝の言葉を聞くこともあるでしょう。
しかし実際には、現場はきれいな話ばかりではありません。

家族として力になりたいのに、なれない。
一生懸命やっているのに、「そんなものいらない」と断られ、口を開けば喧嘩になる。仕事のストレスもある中で、なんでこんな思いをしてまでここにいるんだろうと、ふがいなく、虚しさすら感じる。そういうことがたくさんあることでしょう。あるいは、もっと親孝行したい。そう思っていたのに、十分関わることができず急に亡くなってしまったり、希望しない医療を受けさせてしまって「もしかすると苦しめたんじゃないか」と後から色んな後悔が出てきたりするかもしれない。

「支えようとする自らの支え」これがないとバーンアウト(※1)します。親だけではなく、その親を介護する子どもも、「支え」を必要としています。
※1:バーンアウト:燃え尽きること。心身のエネルギーが尽き果てること(デジタル大辞泉)

親の介護をしている子どもたちに「あなたは、自分に何点あげますか?」と問いかけてみます。
もし80点以上あげられると自己評価できるなら、それは素晴らしいことですね。やってあげたいことをやってあげられて、親も喜んでくれる。

たとえば、デイサービスを活用して、今まで塞ぎ込んでいたお父さん、お母さんが、囲碁や裁縫を教えたり出来て幸せそうな顔を見て、子どもとしても「あぁ、少し親孝行出来て良かったな」と思える。ケアマネさんに相談して、例えばお風呂へ自分で入ることが出来なくなって落ち込んでいたけれど、訪問入浴を使って入浴出来るようになったら、良かったと思えるでしょう。
しかし、良かれと思ってやったことも、相手が喜んでくれなかったら、とても落ち込みますよね。

そこで考えたいのが、力になりたいと思えば思うほど、力になれない時。すごく落ち込む。
「出来ない自分を認めることが出来るか?」そういう問いです。
「本当は良い息子でいたい、良い娘でありたい」そう思いながら自分に高い点数なんかつけられない。
ではどうしたら良いのか?そのキーワードは「これで、良い」です。

口から食べてもらうことを懸命に工夫したにも関わらず、食べられないといったことに直面する。
食事をとれなくなって衰弱して、最期を迎えてしまう。
「私がもっと上手に食べさせることができたら、親はもっと生きられたんじゃないか」例えばそんな後悔をしてしまう。
でも、避けられない人生の最期と逃げずに向き合うために、食べられなくなっていく親に、食べさせることが出来ない自分と「どう向き合うか?」
食べなくては「いけない」ではなくて、食べさせられない自分でありながら、そこに逃げずに関わり続けるのです。

そこで求められるのが「出来ない自分を認める確かな力」です。
力になれない、そんな自分でありながら、なおそこにいられるのは「100点取れない」自分の弱さを認めることです。

「弱さ・無力を認める力」非常に難しいです。どうしたら「これで良い」と思えるか。これが非常に大きな課題です。

だれもが人生に誇りを持てる最期を迎える「支え」になる


―どうすれば「弱さ・無力」を認めた上で「これで、良い」と思えるのでしょうか。
誰が「これで良い」と言うのか?自分が自分に言い聞かせるのではないと思います。
親の力になりたい気持ちがある。でも実際には力になれない事例がいくらでもある。そういう時に出来ない自分を「これで良い」と認める誰かが必要です。

私は医師として「患者さんの力になりたい」と思いながら、患者さんの力になれないことがあります。
患者さんは「まだ生きていたい」でも間もなく別れが来る。30代まだ前半。お子さんは小学生。親として絶対に生きていたい。
でも力になれない。足が遠のく。それでも出来ない自分を「これで良い」と認める力がどこかから湧いてきます。

「これで良い」とは自分で自分に言い聞かせているわけではありません。自分の場合、不特定多数の人からの「許し」に近い感覚です。
出来ない自分を、誰かから許される。それがないと本当の意味で困難と向き合うことは出来ないのではないでしょうか。

誰が「これで良い」と許してくれるのか?親の介護にあたる子どもとしては、出来たら親から許されたいかもしれません。ただ親だけではなくて、そこには不特定多数の「善意」がありますね。
例えば友人が「そんなに出来なくても良いんだよ」と言ってくれる。ケアマネさんや、医療・介護従事者、もしかするとご先祖もいるかもしれない。
人はただ苦しむのではなく、その苦しみを通して、自らの支えに気がつくのです。それに気がつくと「出来ない自分でありながら、そこにいて良い」だから逃げずにいられるのです。

「誰かの支えになろうとする人こそ一番、支えを必要としている」
これは私の言葉ではありません。私の「いのちの授業」を聴いてくれた高校生の言葉で、座右の銘としています。

―エンドオブライフ・ケア協会の描く未来像をお聞かせ下さい。
私は「世の中で1番苦しむ人の力になろう」と、高校2年生の時に医師を志しました。その気持ちは今も変わりません。

「だれもが生きてきてよかったと思えるように。自分の人生に誇りを持てる最期を迎えられるように」
約800万人の団塊の世代が75歳以上となる2025年まで、時間は限られています。
「目の前に苦しむ人がいたら、人生の最期まで関わろうとする」
1人でも多く、志のある、このテーマに関心を寄せる仲間を増やし、医療・介護に関わる全ての人が行える援助を普及していきます。
同時に、人生の最終段階とはどういったものか、社会的な認知を向上させるための活動にも、引き続き積極的に取り組んで参ります。



超高齢少子化多死時代において、社会の重要な戦力である40代から50代の団塊ジュニアが親や配偶者の介護と看取りに直面し、苦しむことがこれからますます増えていきます。様々な制約を抱えながらも、家族と自分が穏やかさを保ちながら、仕事と介護をどのように両立していくのか。地域や企業の講演活動等を通して貢献していければと考えています。
制度を紹介することだけでなく、親の介護をする子どもとしての自分の苦しみとの向き合い方、仕事との両立の可能性など、生きていく上での様々な困難と向き合う。その可能性をお伝えしていきたいと思います。


お問合せはこちら

組織概要

一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会HP:https://endoflifecare.or.jp/
めぐみ在宅クリニック(在宅療養支援診療所):http://www.megumizaitaku.jp/

参考文献

『人生の意味が見つかるノート』小澤 竹俊著(アスコム)
『今日が人生最後の日だと思って生きなさい』小澤 竹俊著(アスコム)

参考サイト

NHK『プロフェッショナル仕事の流儀 第317回』:
http://www.nhk.or.jp/professional/2017/0306/
NHKスペシャル『最期の願いをかなえたい~在宅でガンを看取る~』:
https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20080224
映画『うまれる ずっと、いっしょ。』:
http://www.umareru.jp/story/

執筆者

取材・文:gCストーリー株式会社 阿南
画像提供:一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会

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