書いて半分、渡して完成
―誰でも短時間で書けるようになる「笑い文字」とは、どんなものなのでしょうか?
笑い文字は、笑顔と共に、感謝や喜びを伝えるコミュニケーションツールです。
ですから「書いて半分、渡して完成」というコンセプトで、書いたら必ず人に渡す。というルールを設けています。
笑い文字は、文字を書くことさえできれば、どんな方でも1日でマスターできます。
「字や絵がヘタで」と自信がない方でも、大丈夫です。全国で約300名(2017年秋)の講師が講座を開催しています。
笑い文字は大切な方に、思いを伝えるツールです。
仕事柄「言いたいことを言えていない」と後悔する声をたくさん聞きます。
介護経験者の受講者さんからは「お姑さんは、私が書いた笑い文字を胸に抱いて亡くなりました」、「紙の角が痛いはずなのに、パジャマの中にいつも入れていました」といった感謝の言葉を日々、多くの方からいただいています。
例えば、許せない気持ちを伝えられなかったり、和解できていなかったり、最期まで怖くて会えなかった、そんな後悔の気持ちが、笑い文字を自ら書いて渡すことで、ほどけるかもしれません。
介護や看護に関わる方たちのコミュニケーションツールとして活用いただけたら嬉しいです。
―どのように「笑い文字」を活用するのがオススメでしょうか?
私は同時期に3人の介護をしていた経験があります。
それまで気軽に行けていたランチに行けなくなり、ちょっとした外出すら、できにくくなりました。
当時は自分だけが苦しい気がしていたのです。
笑い文字があると、人と繋がることができます。
何かしてもらって「ありがとうございます」と言う時、疲れているとため息交じりになりますが、そんな時でも笑い文字の「ありがとう」には、満面の笑顔とハートが書いてあって、気持ちが伝わる可能性が高くなります。
例えば、ベッドで寝ている方でも、紙と筆ペンがあれば書くことができます。うまく言葉が出なくても、表情が作れなくても、お世話になった方に、笑顔いっぱいの「ありがとう」を届けることができます。
“いつも暗い顔をした奥さん”に見えている方が「実は疲れているだけで、ほんとうは心に笑顔を持った人なんだ」ということが、文字と一緒に伝わります。
そこから周囲と会話が始まったり、悩みを打ち明けやすくなったり、人間関係の質が変わる可能性があります。
笑い文字で書くのは満面の笑顔だけ。
自分が書いたものに自分が癒されるのです。
1日の終わりに、自分に1枚書く。その1枚を翌日誰かに渡すと、喜んでいただける。
感謝と喜びの循環に活用していただけたらと思います。
介護士さんやケアマネージャーさんなど、お世話になっている方に渡すと、とても喜ばれます。
どこかに入所している方がある時には、枕元にいっぱい笑い文字を貼っておくと良いですよ。
実際は絵ですが、脳は笑顔の人がいるように認識するので、ご本人の気持ちが落ち着きやすいと思います。
夜中にふと目が覚めた時、「あぁ、1人だ」と思うのではなく、例えば息子さんが書いた笑い文字が目に入って「大丈夫だよ」と言ってくれているように感じられたら素敵ですよね。
笑い文字で書く顔は、男性でも女性でもなく、年齢もありません。
自分に見える日もあるし、子ども、孫、パートナー、お友達、その日に一番見たい顔に見えるのです。
1枚の絵で、色々な人が見守ってくれているような気持ちになれます。
介護する側も、笑い文字が目に入ると心が和んで、みんなに優しい気持ちが溢れてくる可能性があります。
ほんとうの思いが届く“究極のコミュニケーションツール”
―どのようなキッカケで協会設立に至ったのですか?
2014年、お友達で講師もしてくれていた女性が、43歳の若さで亡くなりました。
お通夜に駆けつけると、棺の中も外も参列者から贈られた笑い文字でいっぱい。とても感動して衝撃を受けました。
「笑い文字は、皆さんが“最期に渡そう”と思ってくれる究極のコミュニケーションツールなのだ」
考案した私自身が、“ただかわいいもの”と思っていた笑い文字は、共に生きた喜びや感謝を伝える力を持っているとわかったのです。
その方はご主人を亡くしていて、高校生と中学生のお嬢さんが喪主を務めておられました。
笑い文字は、お嬢さんたちにも贈られ、癒し、なぐさめることにも使われていたのです。
その折に書いた弔辞の最後に、まだ存在もしない協会の名を震える手で書きました。
『笑い文字普及協会理事 廣江まさみ』
書いた以上は、彼女との約束です。
「必ず実現しなければ」と思っているところに、偶然ご縁をいただいた司法書士の方が「無償で作りましょう」と協会の設立にご尽力くださって、誕生しました。
笑い文字を書いて渡すことで、自分の感謝や喜びに気がつき、人生が変わっていく方が大勢いらっしゃいます。
こういった人の善意や心の美しさに支えられた、たくさんのエピソードや、そんな方たちとの学びの中で『感謝と喜びの循環する世界を作る』という協会の理念が生まれました。
―笑い文字なら、大切だけど直接は言いにくいことも伝えることができそうですね。
私はよく「笑い文字を贈りたい人に、大事にしてほしいことは何ですか?」と聞きます。
質問すると、皆さん自分がしてほしいことではなくて、その方のことを思って、すごく考えてお答えになります。
実例を1つお話しますと、先日ガンを患っておられるお母さんの名前を書いてください、とお願いされました。
喜んで書かせていただいてから「お母さんに大事にしてほしいことはありますか?」と質問しました。
「元気で仕事が大好きだった母は、病気になって迷惑をかけていることを申し訳ないと思っているのです」と仰いましたので、『迷惑をかけてほしい』と笑い文字で書いて、その方にお渡ししました。
それを渡してもらったお母さんは、少し時間が経った時に「迷惑をかけよう!」と決心するかもしれません。
看護する側にしてみれば、生きてくれることが一番でしょうけれど、お世話もさせてもらえないのは嫌だと思う方も多いと思うのです。
時には看護する側に迷惑なこともあるかもしれませんが、その迷惑をかけてあげないといけないのではないかと、私は思っています。
相手を思うから、遠慮して言わないのなら、相手を思うからこそ、遠慮しないで言う、ことも良いのかもしれません。
―笑い文字を見ていると、自然と笑顔になる方が多そうですね。
笑い文字は、実は脳の働きを活用しているのです。
脳は人の顔や表情に対して非常に敏感であると言われていて、どんな時でも人の顔、特に笑顔を探すようにできているそうです。
さらに、ミラーニューロンといって、相手の行動を見て、鏡と同じように自分も同じように反応する神経細胞が働きます。
絵や作り笑いでも、笑顔を見れば笑顔になります。
逆に、不機嫌そうな人と長時間一緒にいると、自分の表情や気持ちも同じようになるように作用します。
私も介護をしている時はしんどくて笑顔でいられませんでしたが、今は「なぜ笑うとよいのか」の脳の仕組みとノウハウが分かっているので、笑顔で過ごすようにしています。
“感謝と喜びが循環する世界”を日本から
―廣江さんが大切にしている考え方を教えてください。
「自分で止めない」ということを大切にしています。
止めているつもりがなくても止めていることもありますので、常に自分自身に問いかけています。
協会のことも同様に、講師のトレーナー(教育係)がいて、自分が教えた人が上手に指導できない時に「上手くないけど一生懸命やっているから」と見過ごすのは“止めていること”だと考えています。
トレーナーに止めているつもりがなくても、その講師から習う何十人、何百人が、結局書けなくなるわけです。
「ちょっと先まで考えた時に、止めていることにならないか?」を常に講師の皆さんと確認しています。
―印象に残っているエピソードがあれば、お聞かせください。
男性の方が笑い文字を渡すと、気づきを得る方が多くいらっしゃいます。
日頃から「ありがとう」を伝えていたつもりだった方は、笑い文字で奥さまの名前と「いつも、ありがとう」と書いて渡したら、信じられないほど喜ばれたそうです。
普段、言っていたつもりの「ありがとう」が伝わっていなかったことに愕然とした。と仰っていました。
60代の男性は「ありがとう」の笑い文字を奥さまとお母さまに渡したら、奥さまから「結婚してから、これまでで1番嬉しいプレゼントだった」と言われて、やはり驚いたそうです。
長年連れ添って、今さら身内に渡すのは、実は勇気がいることです。
「うちの妻(夫)に、今さら渡しても喜ばないよ」とおっしゃる方も、変わります。
笑い文字のコンセプトの一つは『書いて半分、渡して完成』です。渡さないと何も起きません。
私は、恥ずかしいと思うことも「一生に一回でいいから、やっておきましょう」とお伝えしています。
「一生に一回だけ、お父さんに大好きって言っておこう」とお伝えして、実行すると世界が変わります。
「おとうさん、だいすき」って書いて渡すと、お父さんが喜んで、泣いたりするのです。
そこから作られる関係には、感謝と喜びが巡ると思いませんか?
―今後「笑い文字」を通してどのような未来を実現したいとお考えですか?
まずは日本発信の文化にしたいです。
協会の理念「感謝と喜びの循環する世界を作る」を実現したいのです。
笑い文字は、書いて渡すだけで感謝と喜びを循環させることができる良い道具になります。
講師になって数年経つ人の中には人間関係が「全てが変わる」と言う人も少なくありません。
書いて渡しているだけで、ほんとうにやると1ケ月ほどで変化があります。
「ありがとう」を探すようになり、自分の生活の中にあふれる「ありがとう」と言う場面の多さに驚く方が多いのです。
笑い文字をお互いに渡すことが当たり前の社会になれば、笑顔、感謝、喜びが連鎖し、自分の思いを人に伝えることが容易な社会になります。
日常はもちろん、学校や企業の教育、冠婚葬祭など、大切な場面に笑い文字を書いて渡す習慣を、日本から世界へ発信します。
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組織概要
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参考文献
『あなたは大事な人 幸せを呼ぶ笑い文字』廣江まさみ著(みらいパブリッシング)
参考サイト
文化庁『平成26年度 国語に関する世論調査』
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/
執筆者
取材・文:GCストーリー株式会社 阿南
編集:GCストーリー株式会社 佐藤
画像提供:一般社団法人 笑い文字普及協会
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