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亡くなっても人である。最後のメイクに込められた想い

1950年代以降、病院や介護施設等、自宅外で死を迎える割合は増加し続け、厚生労働省が発行した『平成29年 我が国の人口動態』では、2015年の自宅外死亡の割合は87.3%を占めています。
近年、感染・腐敗防止(エンバーミング※1)と、個人の葬送・遺族ケア、2つの目的を持つ、「エンゼル・ケア(※2)」が、遺族ケアの第一歩として注目され始めています。
今回は家族の最後の大切な時間を共に作る死化粧師として活動するキュア・エッセンス代表の宿原(じゅくはら)寿美子さんにお話を伺いました。
宿原さんは、法医学の復元方法を学び、死化粧師の後進育成、専門学校や医療・介護施設でのエンゼル・ケア講座も多数開催しています。

※1:エンバーミング:薬品などを用いて防腐・保存のための処置を施すこと。特に遺体に対していう(三省堂大辞林)
※2:エンゼル・ケア:死亡した患者に看護師らが、遺族とともに、死者の旅立ちの準備を施すエンゼル・メイクなどの死後処置(『用例でわかるカタカナ新語辞典』出版/株式会社学研教育出版)

最後のメイク~ご家族が安心してお見送りできるように




―どのような経緯で“死化粧師”という専門の道へ進まれたのですか?

私の実家は三代続く葬儀社を営んでいます。祖父は元々宮大工で、町内の方たちが葬祭を執り行えるように、何かあった時に道具を作ったり貸し出す役割を担っていました。
時代の移り変わりの中で「式もやってほしい」というニーズに応えていくうちに、現代の葬儀社の形に繋がってきました。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の後、お父様が法医学教授で、渡米して特殊メイク等をされていた娘さんが始める死化粧に関する学校の開校案内が実家に届いたのです。
当時はアパレル業界から転身して大手の葬儀社に勤務しており、母に手渡された案内葉書を見た時、直感的に「何かが変わるかもしれない」と、受講を決めたのが始まりでした。

長年アメリカにいた芸術家肌の先生から教えていただく中で「私が教える立場になったら、どう教えていけば良いだろうか」と、色々な情報を収集・検証して、現在の形を作り上げました。
メイクの世界だけではなく、先生には色んなタイプの方がいますが“人に伝える”ことには責任が伴います。
専門学校や講習でお教えすることは、何かあった時でも自分がきちんと把握して伝えられるように、必ず自分自身で検証しています。



―死化粧師とは、具体的にどういったお仕事なのですか?

亡くなった方を綺麗にしてお顔を整えて、ご家族が安心できる状態にするお仕事です。
最初に対面した時は、それまでの経過を理解した上で、なるべく早く手当に入るために死亡診断書と、お身体の状態をすべて確認させていただきます。

どこかに点滴の跡がないか、傷がないか、自分の目できちんと見て、そのままでは心配な傷などがあれば、最初に処置をします。
後から出血したりしてご家族が驚いてしまうことのないように安心な状態にすることも、大切な仕事の一部です。

例えば、最終的な死亡原因は心筋梗塞でも、他の病歴の影響で死後変化に影響が出てきます。
最後まで安心安全な状態でご家族がお見送りできるようにするには、亡くなった直後のケアはとても重要です。
現状の課題は介護・医療の方たちとケアや連携について、どうお話をしていくか、だと思っています。

よく「映画の『おくりびと』のお仕事ですか?」と言われます。映画では美しい世界観が描かれていますが、私は映像的に綺麗に見せることには重きを置いていません。
あらゆる状態で亡くなる方がいて、お顔の状態もさまざまです。
ご家族に後悔が強く出てしまうのを、少しでも軽減したくて、最後のお顔に配慮した形でお仕事をしています。

―講演や研修も数多くされていますよね。どんなお話をされるのですか?

一般の方向けの講演では、葬送全般のお話をします。例えば「大切な方が亡くなった時の葬儀社さんの対応に違和感を感じたら、断って大丈夫ですよ、ゆっくり考えてください」とか。
きちんとお話を聴いてくれる葬儀社さんでなければ、ご家族に「あれで良かったのか」と後悔が残ってしまうことがありますから。
大切なお金をどう使うかは本来、葬儀社主導のことではないことを、葬送関係者がもっと伝えていった方が良いと感じています。

介護・医療の方向けの研修では、亡くなった直後のエンゼル・ケアが、その後の変化に大きく影響が出るので、適切な処置の方法をお伝えさせていただいています。
人は、亡くなった後も精一杯生きた証を見せてくれます。例えば最後まで点滴をうけて頑張った方は、時間が経つと点滴の痕から体液が漏れてきたり、出血したりすることがあります。
この時のご家族の「病院で、あるいは自宅で、あんなに頑張ったのに、なぜこんなことになってしまうんだろう?」というお気持ちは、病院や施設に届くことは、ほとんどないと思います。
エンゼル・ケアは比較的メイクに力を入れてくださる傾向があって、それ自体はありがたいのですが、まずは処置が大切です。
使う道具や方法をきちんとシェアして、お直し程度で済むように、双方が情報共有し協力して
ご家族が安心できるように繋いでいきたいです。

近年は、病院によって色々な治療の方法があり、亡くなる直前までたくさん点滴をされて、点滴過多ではないか?という状態の方も見受けられます。
身体に水分を蓄えすぎていると、亡くなってからの死後変化が出やすいことがあることも、医療や介護の方たちには知っていただきたいです。

遠い親戚のように、ご家族と支度を整える


―宿原さんはお見送りの支度をご家族と一緒にやることが多いのですよね。それはなぜですか?

私自身の体験としては、義母が亡くなった時、家族のショックが大きくて「どうしようか」と思い、皆で一緒にメイクをしました。
もちろん皆悲しいのですが、義母との思い出を話しながら最後に綺麗にする、あの時間は家族にとって、とても大切な時間だと実感しました。

ひと昔前は家族が白装束を着せていましたが、徐々に葬儀社がやるようになって、今やそちらが当たり前になっています。
お支度の前には必ず、「どなたか一緒にやりますか」と聞いて「やりたい」とおっしゃる場合は、補助をさせていただくようにしています。
こちらが全てしてしまうことはご家族が亡くなった方に向き合う時間を奪ってしまうと感じたからです。

―ご家族と近い距離で亡くなった方と接するかと思います。どのようなスタンスを大切にしていますか?

“亡くなっていても人であり、自分の大切な人だったら“というスタンスで関わっています。
お世話になっている葬儀社の方が「僕たちは、そのお宅の遠い親戚で、たまたま葬儀関係の人間という立ち位置なら、ご家族が一番安心するんじゃないかな」と仰っていました。私自身も同じ立ち位置でいます。

幼い頃は、近所で葬儀があると町内の人たちがお料理を持ち寄ったり、夜通し飲んだり、ある意味賑やかに見送っていました。
色んなケースがありますが、死をただ悲しい方向に持って行こうとするのは、私には違和感があります。
見送るご家族が、自分たちを責めていらっしゃるケースでは、ご葬儀の後がとても心配です。
私たちは、ご家族が誰にもいえない、後悔も含めたお話を聴くことができる立場にいますので、対話がすごく大事だと思っています。

よく同業の方に講習でメイクを教えているのですが「宿原さんはいつもお客様とどのように接しているんですか?」と聞かれます。
私は亡くなった方と、そのご家族を一番大事にしています。状況によりますが、あまり堅苦しい雰囲気ではやっていません。
初対面の方の場合は、まずは大切な方が亡くなるまでの状況やご家族の心情を、世間話的に伺います。
特に施設で亡くなられた場合「最期くらいは家に帰らせてあげたかった」と、事情があって出来なかったことへの後悔を感じることが多いので、皆さんにとって「どんな送り方が一番良いのか」も一緒に考えます。

―ご家族との対話を重視されているのですね。印象に残っていることがあればお聞かせください。

処置やメイクの時間は思い出を振り返る時間です。あるご葬家のご長男の方と一緒にお母様の旅支度で脚絆をつけた時のことです。
ご長男が、足元を少しめくった瞬間に手を止めてお母様の痩せ細った足を見ておられました。
その瞬間「お母さん、足が長いんですね」と思わぬ言葉が私の口から出たんです。
すると、それまで寡黙だったご長男が、色々お話をしてくださいました。

「昔薬局をやっていて、レジに立っている母の姿が子ども心にすごく格好良く見えてね」と。
お話をしていくうちにポツリと「母はこういう色の口紅をつけない人で、こういうのって変えること出来ないよね。」と相談してくれたのは、とても印象的でした。

最初にお話した時には、病院で施されたエンゼル・メイクを「触らず、そのままで良い」とおっしゃっていました。
私はそういう時でも「その方がおっしゃっているのは、本当の意味でOKか」をすごく考えます。
一度良いと言っても、本当に良いのか、遠慮しているのか、お話を聴く中で判断していきます。

ご葬儀の時、自分たちはあまり口出ししちゃいけないと思っている方は案外多いです。
私は「自分たちの大切な人の最後に、口出ししちゃいけないことなんてないですよ。分からないことは、こんなことまで、と思わずに何でも聞いてください」とお話するようにしています。

瞬時に仕上りを組み立てる“プロの技”


―なぜアメリカで、骨格や復元の勉強をされたのですか?

アメリカに行ったのは、先般申し上げた「人に教える立場にある以上、きちんとした基本が絶対にあるはずだ。自己流はないだろう」という考えからです。
まして、筋肉や骨格は人によって違うので、どこで勉強できるかを探し始めて、国内だと医療の大学に入り解剖学を学ばないと難しくて。
色々調べて、偶然見つけた顔復元ワークショップの第1回に参加して学ばせていただけたんです。
そこからのご縁で、オーストラリアの顔面復元の学会に紹介で参加する機会もいただきました。

ビューティーメイクもそうですが、きちんと学んでいる方たちは骨格をしっかり学んでいます。
死化粧は従来、あまり骨格は重視されていませんでした。私は相手の骨格をしっかりチェックしながら”どこにメイクを施せばその人に合ったメイクになるか“のメソッドを形にしました。



復元に関しても“骨格をどう見るか”から勉強します。今まで基本がなかったものを、きちんと作って、次の人たちが更に磨き上げて、次につなげて伝えていく。
「ちゃんとした継承の形をつくらなきゃ」というキッカケになってくれました。

―今までは伝統的なものが受け継がれてきた分野だったのでしょうか。

「先輩の見よう見まねで覚えなさい」という職人さんのような伝え方でした。祖父が宮大工だったので、それも気持ちとしては分かります。
子どもの頃は祖父の変わった定規を「どうやって使うんだろう?」と眺めていて、きちんとした計算の上で、ある程度形が決まったら大枠だけ書いて作ってしまう姿をよく覚えています。
そこは長年の経験だったのでしょうが、基本になるものは必ずあった上で、応用して広がっていくと思うのです。
死化粧を学び始めた時に「人に教えていくのに基本ベースがないのはおかしいな」と感じました。

メイクと復元の基本をきちんと学ぶことによって、やっていけばいくほど自分のやり方が生まれていきますが、そこから更に上に行こうとした時に、必ず壁にぶつかります。
その時に主となる基本があれば、そこに立ち戻ってもう一度組み立て直すことができますが、基本がないと戻りようがなくなってしまうんです。
人に教えるということは責任が伴うので、基本は大切です。

―立ち返る軸をしっかり作る、ということなのですね。

美術のデッサンやお花も、最初は基本を習得して、どんどんやりながら皆さん自分のオリジナルが出てくると考えると、基本ってすごく大事だと感じます。

―先生としても、死化粧を教えていらっしゃるのですよね。

今は私たち世代も含めて全体的に、想像力や創造力が弱まっているかもしれません。
最終的にメイクは、その方をパッと見た時に、例えば傷があったら、どの色とどの色を使うか、頭の中で瞬時に組み立てるんです。
やりながら考えていたら綺麗に仕上がりません。
まず自分の頭の中で「この色とこの色を合わせて、ここにこうして...」と想像するように指導しています。



復元が必要な時も同じで、材料や処置を頭の中で一度組み立ててしまえば、スムーズに進めることができます。
考えて想像する力をつける訓練が必要ですね。
長く企業研修でお付き合いさせていただいている場合は、最初はメイクではなく、マンダラの塗り絵を使って、個々の色の使い方の傾向を見ることからはじめます。
特に女性は自分の顔をメイクするので、自分のクセが出て濃くしてしまうことがあるんです。
足すことは後からできますが、最初から濃くしてしまったものを薄くしていくのは、皮膚に負担がかかるので、最初はできるだけナチュラルにメイクするやり方を教えています。

―最後に、今後どのような“おくりかた”を広げていきたいか、お聞かせください。

今までは、亡くなってお見送りするのは葬送事業の方たちのイメージが強かったと思いますが、私はもっと“多様化”して良いと考えています。
例えば施設なら、ご自宅に戻れない方や、身寄りのない方もいらして、葬儀社さんではなく施設職員の方がケアをして、皆さんでお見送りすることも可能です。
ご家族がいらっしゃれば、ご家族が納得出来るおくりかたを広げていきたいと思います。

“グリーフケア(悲嘆のサポート)“という言葉が聴かれるようになってきましたが人に個性があるように、悲しみも一人一人違います。
大切な人が病気になったり、命を終えた時、人の感情の表出は千差万別です。
専門職の立場での対応だけではなく、同じ人を最後まで連携してサポートしていくことがこれからは必要になっていくでしょう。
私は、生から死で終わりではないと思っています。何故なら人の死は遺された方にとっての生に繋がっていくからです。その為に他職種が連携し安心したその後のサポートをしていく場を作っていきたいと思います。



お問い合わせはコチラ

組織概要:

株式会社キュア・エッセンス:http://www.cure-essence.com/

参考サイト:

日本ヒューマンセレモニー専門学校:http://www.humanceremony.ac.jp/
MEDプレゼン「~Hand in Hand~ 死化粧師の立場から想う事。」(YouTube動画):
https://www.youtube.com/watch?v=uefJcy2si4s

執筆者

取材・文:gCストーリー株式会社 阿南
画像提供: 株式会社 キュア・エッセンス

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