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【前編】『身軽に生きる』今この瞬間を大切にする生き方ー矢作直樹氏

「死を心配する必要はない」30万部を超えるベストセラー『おかげさまで生きる』の冒頭でそう語る矢作直樹・東京大学名誉教授。
2017年3月末まで東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部部長を務め、生と死の境界線で命と向き合い続け、確信した“魂”の存在。
現在は執筆・講演活動、“日本のこころ”を取り戻すために「我が国のこころ塾」を主宰し、“いかに生きるか”を考える機会や日本の歴史・文化・伝統を学ぶ場を提供しておられます。
与えられた目の前の仕事に没頭し続けることを日々大切にする矢作名誉教授に、今回は2回に渡って近著『身軽に生きる』、30万部超ベストセラー『おかげさまで生きる』について、お話を伺いました。

「足るを知る」ことで取り戻したい“古き良き日本人のこころ”





―矢作先生は、なぜ医師を志したのですか?
実は積極的な理由はなくて、免許ものだと潰しがきくから、という消極的な理由です。
最初はエンジニアになりたかったのですが、理数系があんまり得意じゃなかったんで。
エンジニアの理数というのは一生やることなので“才能+努力”どちらかが欠けるとダメで、自分はどうも、どっちもなかったんですね。
文系はあまり興味がなかったので、当時の司法試験みたいに難しくないし、とりあえず無難なところでっていうくらいですかね。

―年5冊以上のペースで執筆されていますが、本を書くキッカケは何でしたか?
書籍という形でなくとも良いのでしょうけれど、たまたま機会があったからです。退官する10年ほど前から「このままだと医療はもたないな」と思っていました。
医療は“進歩すればするだけ、人々が不満足になる”というパラドックスがあって、供給が需要を生んで悪循環になってしまうんです。
レベルが上がると、満足は感じなくなるでしょう。つまり医療レベルが上がると、もし助かる方を望む人が多ければ、助かるのが当たり前になりますね。
助かる確率が非常に高い場合、助からない人は「なんで自分が」と不満に思うでしょうし、助かる人は当たり前だと思うでしょうしね。
もし確率が二分の一だったら大分趣が違いますが、それはどの業界でも一緒ではないでしょうか。

受け手側が“満足する心“を失っている中でサービスを向上させるのは、むしろ不幸になると思うのです。
いわゆる「足るを知る。“古き良き日本人のこころ”を思い出しましょう」と言っていかないと、医療が多少ずつ進んだところで、ほとんど意味がありませんから。
その場でも満足しない人や、後から気が変わる人もたくさんいるでしょうし、医療者側もやりにくくなってしまって、無難にやっているということもあるのではないでしょうか。

―医療現場でパラドックスを感じて「足るを知る」「おかげさま」のこころを拡げていかなければと思われたのですか?
サービスは、やはり満足してもらえないといけませんのでね。
満足をしてもらうのに供給側の問題と、需要側の問題とがあるので、供給側のできることをやりながら、需要側の喚起を促すというように、両方やっていかないと、なかなか間に合わないのではないかな、と思いましたね。

老いをあまり気にせず“今この瞬間”の自分を大切にする


―ではここからは、ご著書『身軽に生きる』について、お伺いさせてください。まずは究極の健康法“スマートエイジング”について、お教えいただけますか。



うまく加齢と付き合う。そんな意味です。
老化・加齢現象(エイジング)は一つの必然なので、程度を気にするよりも、老いのプロセスを受け入れる楽しみ、というのもあります。
例えば若い頃なら、もちろん体力もあるでしょう。病気もすぐ治るでしょう。頭もよく回転するでしょう。
段々年を取ると、そういうものが失われて、肉体も衰え、病気にもなり、あるいは集中力も鈍って、意欲も減退して、不注意にもなって、という風になるけれども、それはそれで段々あちら(あの世)へ行く準備のようなところもあるので、誰かと比べる必要もなく、それを楽しめばいい、ということです。
楽しむという気持ちと同時に、楽しめる時は、自分のからだも含めて周りに感謝をするようになるのではないでしょうか。
そうすると、病気や色々なことを気にしてからだが衰えてくる、しわくちゃになっていくのが“結果として”遅くなると思います。
コツは健康かどうかなんていちいち気にしないで、食も運動もほどほどに楽しむ、好きなことに没入することですね。

―老いのプロセスを楽しんで、あまり気にしないことがコツなんですね。
全く気にしないというのでもいけないんで、朝起きた時くらい鏡を見て、自分の顔が“にこやか”になっているか、は見てほしいところです。本人が一番良い観察者ですからね。
電車に乗っている人を見ると、大変だとは思いますが顔つきが気になります。口を曲げて眉間にしわを寄せていては、福の神が逃げて行ってしまうかもしれません。

―ご著書に、死を心配し過ぎず「今この瞬間を楽しむ」とありましたね。
他界するという敷居があるので、なかなか難しいと思うのですが「こっち(この世)より、あっち(あの世)の方が良いんだ」と妄想でも良いから思えたら大分変わるのではないでしょうか。
実際にあの世があればそれで良いし、なければないで、気楽で良いじゃないですか。「どっちでも良いんだ」と、どこかで思えるようになるかどうかですよね。

子どもの頃、皆さんどなたも覚えていると思うのですが、楽しいことがあれば、ごはんを食べることすらも親が呼びに来ない限りは忘れて、一所懸命遊んでいる、あの感覚を大人になっても忘れないようにしたいものです。
やっぱり何か一つ好きなこと、没我状況になれるものを持っておく、というのが実際的な方法ではないでしょうか。

「お天道様に生かされている」感謝と共に“身軽に生きる”


―食事については、どのようなことに気をつけているのですか。
特に気をつけてはいないんです。6~7年前からでしょうか。自然に肉食をしなくなって、食べる量が少し減りました。
ある時イメージで、牛が悲しそうな顔をして目の前に見えたんですね。そしたらなぜか「あ。もう殺生はいいや」と思って。ですから1日にして肉も魚も食べなくなりました。
私の食生活は野菜と果物が中心で、穀類、豆腐、パンも食べます。

人さまに「こうしたら良い、ああしたら良い」ということは全くなく、三食にこだわらず、自分が食べたいと思うものを食べたい分だけ食べれば良いと思うのです。

私が自分の体験や人さまを観ていて気づいたことは、栄養学の指標というのは、無理をせずにその状態になっている人は、あまり気にしなくて良いのではないかということです。
私自身で言えば、たんぱく質を摂る量は少ないと思います。人間のからだは半年から1年で細胞が全部入れ替わるはずなのに、変わらず生きているということは、恐らく今のような食事で大丈夫なのだろうと思います。
「食べたものが自分のからだを構成する」若い頃からの食生活の乱れは加齢に伴い、からだの内外にはっきりと出ます。
楽しみながら、感謝の気持ちを持って、作法を守って食べる。この3つを大切にしています。

―運動は日頃からしているのですか。
私自身は決めごとがなく、一切を習慣化せず、動きたい時は動く、動きたくなければ、動かない。気の向くまま好き勝手にやっています。

人間は元々獣ですからずっと同じ姿勢でいると、段々心身が硬くなってしまいます。
ですから可能ならば、1時間に1回、階段の昇り降りでも何でも良いので、とにかく伸びをするだけでも、同じ姿勢を解放すると良いですね。

―祈りや感謝のエネルギーも「すこやかさ」に作用するのでしょうか。
祈りの力は、実はとてつもなく大きいんです。本気で思うかどうかだけで、どなたでもできます。
神事とはそもそも祈りで、高次元の意識体と繋がるのです。意識体が共鳴するのですが、悪いものだと憑依というわけです。
空気中にも電磁波がたくさんありますでしょう。それと一緒で、肉体のない意識がたくさんいるわけです。

まず自分から他者のことを純粋に祈ること。何ごとも「ギブ(与える)」が先です。
思いは相手に届きますので、相手も気付かないうちに自分に対して祈ります。するとその思いが知らないうちに自分へと返るのです。

―身軽に生きる知恵としての「シンプリスト」について、教えてください。
「単純化する人」という意味であり、そこから派生して「生活スタイルを統一する人」とも解釈されています。
足るを知る、自然との共生、シンプルなくらし、環境からの学び、色々なものの複合だと思います。
歴史的に見渡すと、日本にはシンプル、つまり「単純」があふれています。
寺社仏閣の工法、神道、着物、浴衣、褌、風呂敷、シンプリズム(単純主義)の極みです。
全部生かそうという精神は、すなわち大切にするということです。
いらない物を買ってしまう前に「本当に必要?」と自分に問いかけることが大切です。
捨てる習慣より「問いかける習慣」を身につけるとムダな消費が消え、ムダな生産も消えます。

私たちは皆、地球に住まわせていただいています。「お天道様に生かされている」この事実を、いつも忘れたくないものです。



組織概要

矢作直樹事務所HP:http://yahaginaoki.jp/
著作リスト:http://yahaginaoki.jp/book-list/
Facebook:https://www.facebook.com/naoki.yahagi.77

参考文献

『身軽に生きる』矢作直樹著(海竜社)
『おかげさまで生きる』矢作直樹著(幻冬舎)
『人は死なない ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索』矢作直樹著(バジリコ)

執筆者

取材・文:GCストーリー株式会社 阿南
編集:GCストーリー株式会社 佐藤
画像提供: 矢作直樹事務所、GCストーリー株式会社

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