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認知症があっても大丈夫”共感のギャップを埋める“VR認知症プロジェクト

認知症を問題と定義するのではなく、認知症になっても生きやすい社会をつくろうとしている企業があります。認知症を体験できる「VR(※1)認知症プロジェクト」に取り組んでいる株式会社シルバーウッド。高齢者住宅の運営から、テクノロジーを用いたアプローチまで幅広く事業を展開しており、現在、注目を浴びています。今回は代表取締役下河原忠道様にお話を伺いました。

知識だけではなく、体験する事で“共感のギャップ”を埋める



―VR認知症プロジェクトとはどのような取り組みですか?
認知症のある方がどのようなご経験をされているのか、VRを用いて疑似体験が出来るプロジェクトです。例えば、「ここはどこですか」という作品があります。こちらは電車に乗ったものの、乗り換える駅が分からなくなった設定で作っています。もちろんVRですから、360度見渡せて、その場にいるような感覚を体験することが出来ます。

座学では徘徊、記憶障害といった認知症の代表的な「知識」は身に付くかもしれません。だけど、それで、本当に認知症の方の「気持ち」「感情」は分からないのではないでしょうか。そうした違和感から、こちらのプロジェクトを開始しました。

―知識のみだと、どうしても分からない部分はあるかもしれませんね。
そうなんですよね。「分からない」から、気持ちの共感のギャップが起きてしまう。例えば、知人が風邪を引いたとして寝込んでいる。誰もが1度は風邪を体験した事があるので、その人の気持ちを理解する事ができるんです。ただ、認知症はあらゆる人が理解できるものではありません。だから分かりにくい部分があります。

―それは、認知症になった事がないから、でしょうか?
はい。経験をした事がないとどうしても、その人の「気持ち」が分かりづらいと思います。そこに「共感のギャップ」が生まれてしまいます。

実際に体験してみますか?

―よろしいですか?
やっぱり自分で体験すると一番分かりますからね(笑)



―(体験してみて)その場にいるような臨場感が凄いですね。
VRの映像コンテンツは認知症の当事者の方にヒアリングしてストーリーを作っています。
かなり、現実に即した映像体験になっていると思います。

―介護離職の問題から一般企業が自社の社員に受けさせたい、といった要望も多いと聞きました。
そうですね。全国の一般企業様から多くのお問い合わせをいただきます。他にも自治体、医療法人、社会福祉法人など様々なニーズが増えています。この前は、厚生労働省でもVRの体験会を開きました。認知症の方と一緒にどう生きていくか、みなさん新しいアプローチを考えているのではないでしょうか。

認知症は不便ではあっても、不幸ではない。認知症の方と一緒に暮らす地域を実現したい



―なぜVR認知症プロジェクトをはじめられたのですか?
以前から、認知症に対する偏見をなくしたいと思っていました。よく「認知症予防」という言葉を聞きますが、あの言葉はあまり好きにはなれないんですよね。「予防」の単語の中に、認知症はなってはいけないもの、という偏見が入っている気がします。

認知症は不便かもしれませんが、決して不幸ではない。ただ、なぜそのような偏見が社会に生まれてしまうか。それは、私たちが「認知症」をきちんと知らないから、だと思います。

―確かに、知ろうと思ってもなかなか手段が見つからないかもしれません。
座学で学べる形式の認知症の講座があるにはあります。ただ、座学で学んだとしても知識は得られますが、イメージはしづらいです。なぜなら、自分が認知症になったことがないから。
なったことがないから、分からない。分からないから、そこで想像することをやめてしまう。

だから、認知症になりたくない、で終わってしまう。かといって、決め手になる学習スタイルもない。

―座学だけでは単なる「知識」になってしまうかもしれません。
はい。そこで、疑似体験が出来るVRに着目しました。VRを利用すれば、認知症の1人称体験が出来ます。つまり、認知症の方が何を考えて、どのような気持ちになるか、考えるきっかけになるんですね。

例えば、認知症の方の行動に徘徊、があります。しかし、本人にとってその行為は「散歩」かもしれない。若年性認知症の当事者である知人は「認知症になった途端、徘徊という言葉で差別しないで欲しい」と言っていました。

―どこか見えない線が引かれている気がします。
そうですよね。介護施設では、徘徊等による事故を防止するために一般的には鍵を掛けますが、私たちが運営する住宅施設では鍵を掛けません。確かにリスクはあるかもしれませんが、生きている限りすべてのリスクを排除する事は出来ません。むしろ、「見守り」という名の過剰な管理に違和感を覚えるんです。

認知症の方と一緒に暮らす地域を実現するにはどうすればいいか。考えた結果、住宅施設に子どもたちが気軽に寄れるよう入居者が店長を務める駄菓子屋を作りました。すると、1日多い時には200人ぐらいの子どもたちが寄ってくれるんですね。

―1日200人ですか?それは凄いですね。
一ヶ月の駄菓子屋の売り上げ40万円です。笑 今までは、駄菓子屋が高齢者の方と子どもの交流の場でしたが、すっかり減りましたよね。これからも、認知症の方が安心して暮らせる地域にしたいと思っています。

我々が変わる事で認知症は問題ではなくなる



―今後はどのような取り組みをお考えですか?
認知症の方と接する機会が多い、接客業界へVR体験会の提案を進めています。コンビニの従業員の方は認知症の方と接する機会が、実は多くあります。

―外出して買い物、となるとやはり多いのは接客業界ですものね。
厚生労働省の調べでは、認知症のある方が地域で暮らしやすくなるために「あったらいいと思う」と答えた割合で、スーパーや商店などで商品選びや支払いを手伝ってくれる「買い物サポーター」が66%と高いニーズを示しています。買い物をされる認知症の方の気持ちを考えるきっかけを作れれば、と思っています。また、別の動きですと学生向けのコンテンツの計画があります。

―学生向けですか?
はい。「17歳の認知症」というタイトルでコンテンツの作成を進めています。例えば、普通の学校生活を送っている17歳の高校生が認知症になったとしたら、どのような事象が起こるかを体験出来ます。スマートフォンで友人とやり取りしていても、同じメッセージを何度も送ってしまう。昼休みに食事を買いに行き、同じモノを何個も買ってしまう。そのことを友人に不思議がられる、などを想定しています。

―若いうちから認知症への理解が深まれば、偏見が減るかもしれませんね。
私は認知症自体が問題ではなく、おかしいのは取り巻く社会的な心理環境だと考えています。これからは、認知症になったらダメだ、ではなく認知症になってもいい、と思える社会を作っていきたいです。

※1 VR:バーチャルリアリティ(英:virtual reality)。仮想現実。

VR認知症プロジェクトへのお問い合わせはこちら

VR@silverwood.co.jp

組織概要

株式会社シルバーウッド
http://silverwood.co.jp/

執筆者

取材・文 gCストーリー株式会社佐藤
撮影 gCストーリー株式会社高橋

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