介護の悩みを職場で誰にも相談出来ない。会社の人に迷惑を掛けたくない。介護が原因で退職してしまう方はこのように思われているのではないでしょうか。介護休暇・休業など、仕事と介護の両立を支援する制度があるにも関わらず、自らを追い詰め退職を選ばれる事例が増えているようです。今回は株式会社NTTデータで介護離職防止に取り組まれる人事本部人事統括部労務厚生担当部長植野剛至様にお話を伺いました。
ー介護離職防止に関して、現在どのような施策に取り組まれているのでしょうか?
現在は主に介護に関する情報発信を行っています。2016年は4回にわたり、介護に関わるセミナーを実施しました。セミナー自体は2010年から実施しており、今までは年に1回のペースでしたが、2016年から4回にペースを上げました。
ーペースを上げた理由はなんだったのでしょうか?
2015年に国が新・三本の矢を打ち出しました。その中で「介護離職ゼロ」に関する目標があったことに加え、社内アンケートの結果からより情報発信に力を入れるためにペースを上げることを決めました。
ー社内アンケートにはどのような答えが多かったのでしょうか?
家族関係や、経済面などの比較的具体的な悩み、というよりも曖昧模糊とした不安が印象的です。
ー知らない・分からないといった部分が不安を増幅しているのかもしれませんね。
はい、おそらくそうだと思います。両親の介護は、いずれほとんどの方が直面します。いつか、自分が関わるけれども、具体的にどうしたらいいか分からない。その不安を、企業として何とか緩和出来ないか、と思った時にまずやるべきだと思ったのが積極的な情報発信でした。
ーセミナーはどのような内容を実施されていますか?
世の中の介護問題の現状や公的介護保険制度および社内の介護保険制度・サービスの紹介をはじめ、社内での介護経験者に体験談を話してもらうこともありました。これは社員の生の声なので聴講している方には響きます。離職せずに働きながら両立できている実現者が社内に居るという事実を共有することで、イメージを少しでも持ってもらえたと思います。
また、「働き方を考える、働き方を見直す」きっかけにもなったと思っています。
ーセミナーの他にはどのような取組をされていますか?
制度面では、元々導入していたテレワークの一層の推進と、より柔軟な働き方を可能とする就業制度への見直しなどに取り組んでいます。また、運用面では、相談しやすい組織風土の醸成とプロモーション活動の充実に力点をおいています。特に風土作りは、介護という性質上なかなか相談しにくいこともあるかと思いますが、階層別研修での啓発活動を行ったり、四半期に1度上司と部下の間で実施している面談において、介護など特質的なことについて把握したり様々な工夫も行っています。
せっかく入社してもらったからには、長く活躍してほしい
ー社内に相談出来る相手がおらず、抱え込み、退職を選んでしまう、とはよくお聞きしますが。
確かに、一般的によくお聞きする話ですよね。特に介護は、育児と異なり「期限」がありません。「終わり」が見えない事による疲弊感を感じる方もいるのではないでしょうか。そこで、悩みを抱え込んで退職してしまわれる方もいると思います。
ー最後には職場にこれ以上迷惑を掛けられない、と思ってしまわれるようですね。
そうですね。まず、退職される前に相談してもらえれば、企業として何かサポート出来たんじゃないか、と思ってしまいます。せっかくご縁があって入社されたのだから、長く働いて活躍して欲しいという気持ちがあります。優秀な人材が介護で会社を去ってしまう、というのは企業にとっても損失です。そこは仕組みや制度で、サポートしたいと思っています。
ー実際に介護離職に取り組まれている企業は少ないと思います。前例が無い中で実施されるのは大変ではないでしょうか?
はい。人事部門に所属する我々としても、試行錯誤の中で取り組んでいます。これからは、人口が減少する社会に突入します。 働き手も減る中で、社員の一人ひとりが働きやすい環境を整えていきたいですが、多くの企業と同様はじめての事なので難しい部分も多いですね。
ー介護離職防止に取り組む中で、最も難しい部分はどこですか?
やはり運用として定着させていくことではないでしょうか。制度の導入や見直しは適宜行いますが、雰囲気づくり、カミングアウトしやすい職場風土がなければせっかく社内に仕事と介護を両立支援する制度を作っても、誰にも使われず、結果退職を選んでしまう。制度だけ作って、終わり、というわけではないんですね。使ってもらって、社員が仕事と介護の両立が出来るようになることにこそ意味があります。そういう意味で職場風土の醸成と運用の定着が重要ですし最も難しい部分だと考えております。
また、こうしたことに取り組んでいくことで、まだ介護をする段階ではなくても、いつ自分が介護をする機会になっても安心だと思ってもらいたいですね。
このような思いから今後は、情報発信に加えて、共有できる人・相談した後にその後どうすればいいかも考えたいです。
実際上司に相談されても、上司は「介護のプロ」ではないので適切なアドバイスが出来るかどうか分からないんですよね。なので、相談された時にどこの機関に繋ぐのがベターなのかなど、ハブとなる管理者が一次対応出来るように一定の知識領域のインプットとフローを整備していきたいと考えています。
制度の導入ではなく、運用が目的である
ー今後どのような施策を行うご予定ですか?
現在企画中ですが、社員に対して行ったアンケートを反映した施策も実施していきます。
私どもの会社の規模になりますと、どうしても制度的なアプローチから入りがちで、制度自体を作るのはプロフェッショナルもいるのですが、それを実際に運用に載せていくとなると先程も申し上げましたが、組織風土の醸成など環境整備を企業全体で取り組んでいかないといけないな、と思っています。
風土を醸成する為にまずは、会社での取り組みを知ってもらう事が大事だと考えています。今後も様々なツールを活用して積極的な情報を発信していきます。従業員一人ひとりの多様性を尊重・受容できる企業をめざして地道に取り組んでいきます。
組織概要
株式会社NTTデータ
http://www.nttdata.com/jp/ja/index.html
執筆者
取材・文 GCストーリー株式会社佐藤
撮影 GCストーリー株式会社高橋
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