仕事や家庭の都合で、遠距離介護の必要に迫られることも少なくありません。常に目を配れないため不安が伴いがちですが、ポイントを押さえておけば遠距離介護でも安心です。また無理な呼び寄せは、逆に両者にとって負担になる可能性もあります。
遠距離介護の例やポイント、呼び寄せ症候群などについて紹介します。
遠距離介護についての概要
遠距離介護とは、遠くで暮らす親に対して介護が必要になった際に、遠距離のまま介護する場合を指します。家を離れて就職・結婚したり、転勤が多かったりという現代において、増えつつある介護スタイルです。メリットとしては、親が住み慣れた地域で暮らしつづけられる、子ども家族に対する遠慮をしなくて済む、介護者の介護ストレスを軽減できるなどがあります。一方デメリットとして、各種介護サービスの利用が欠かせないため金銭的な負担があり、常には目を配れないため不安が伴うなどが考えられます。
遠距離介護で利用する介護サービスとしては、訪問介護サービスや食事の宅配サービス、家事代行サービスなどがあります。また場合によっては、福祉用具をレンタル・購入したり、家をバリアフリー化したりする必要があります。
遠距離介護の具体例
遠距離介護の例で多いのは、日頃は訪問介護サービスを利用し、週末や月に数回親の元へ帰省するというパターンです。家事や身の回りのことは日中ヘルパーさんに依頼し、夜に高齢者が自分でしなければならない雑事を極力減らしてもらうようにします。
近所の住民にも事情を説明しておき、異変があれば知らせてもらえる仕組みを作っておきます。介護のレベルによっては、家で高齢者が動く際の負担を減らすため、手すりをつけるなどのリフォームも行います。そして帰省できる日に泊まりがけで実家に滞在し、細かいサポートや精神面のケアを行うのです。最近では通信技術の発達に伴い、パソコンやタブレットで顔を見ながらの通話が手軽にできます。通信サービスを利用して、ヘルパーさんのいない日や夜間の様子を確認することも、よく利用される手段です。
遠距離介護のポイント
遠距離介護のポイントは、家族が行う介護と、ヘルパーさんや近所の人に頼む介護・対応を明確に分けておくことです。それにより、高齢者の負担も家族の負担も軽減し、ストレスによるぶつかり合いを避けることができます。
同じく重要なポイントとしては、普段や緊急時に連絡できる手段を確保しておくことです。携帯電話か固定電話か、自宅か介護施設かなど、最も連絡が取りやすい方法を予め打ち合わせしておくことで、危険を回避することができます。また持病や薬、かかりつけ医の情報を把握しておく、通帳など大切なものの保管場所を聞いておくことも大切です。
あとは高齢者の生活リズムやよく行く場所を理解し、まめに連絡を取り合うことで、スレ違いや異変の見逃しを防ぐことができます。
呼び寄せ症候群とは?
子ども家族の元に高齢者を呼び寄せることが、必ずしも両者の幸せにつながるとは限りません。呼び寄せ症候群というのは、田舎の親を都会に呼び寄せることで、逆に介護や認知症の状態が進行してしまうことを指します。住み慣れた場所を離れ、知人がおらず文化も異なる地域に飛び込むことで、高齢者のストレスや孤独感が増し、心身が弱ってしまうのです。また、子ども家族に対する気兼ねもストレスになりえます。
親に介護が必要になった時は、まず本人の意志を確認することが重要です。もし地元で暮らし続けたいというのであれば、家族・親族や近所の人、かかりつけ医などと相談しながら、対応を考える必要があります。
ケアマネージャーや地域包括センターでも、地域の特徴や高齢者の状況に応じた最善策をアドバイスしてくれます。
まとめ
遠距離に暮らす親に介護が必要になった時は、親の意志と自分たちの都合・意志が折り合う、折衷案の模索が大切です。無理に呼び寄せると、お互いの負担になる場合があります。現代の日本では、認知症サポーターなどのボランティアや、地域包括センター、ケアマネージャーなどの相談・支援体制が整ってきています。また高齢者見守りのためのサービスを展開している企業も増えており、遠距離のまま介護することは不可能ではありません。最低限のポイントを抑えながら、無理なく介護と付き合いましょう。