こんな時はどうすれば?よくある認知症の対応具体例
認知症となると、生活のあらゆるところに支障が生まれてきます。暮らしの中の小さな困難はもちろんですが、場合によっては命が危険な状況に陥ることもあります。本人も困ることが多くなりますが、家族や周りの人がどのように対応して支えていくかという事も重要です。どのような対応をしていくべきか具体例を通して考えていきましょう。
時計が読めなくなった時の対処法
時計が読めなくなるということは認知症になるとよく見られます。時計が読めないというだけではなく、時間の感覚を失ってしまうことによって時間を問わずに行動してしまうなどといった重大な問題につながることもあります。
視力の低下やアナログ時計で時間が把握しにくいということであれば、大きな文字のデジタル時計に変えるということで効果があったケースがあります。慣れるまで一緒に時間を確認すると時計を認識しやすくなるでしょう。
時計を読めなくなったと本人が気にしすぎてしまうと自信を失うことにもつながりますので、あまり強く指摘しないようにするのがポイントです。時計で時間が把握できないなら、周りの人が声掛けをして時間の感覚を持たせるようにしていくと良いでしょう。
冷暖房スイッチの入れ間違い
高齢になると生活に利用する機器の扱いにも不安が出てきます。特に冷暖房のスイッチを入れ間違え、熱中症になるケースも多くなっています。酷暑から冷房の利用が必須となっていますから、この点にも対応していく必要があります。多機能のエアコンなどはボタンが多く間違えやすいということがあります。利用するボタンが目立つように目印を付けるなど工夫をしてみましょう。場合によっては季節に応じて使わない器具のリモコンをしまっておくということも有効です。
洗濯機などの身近な器具でも扱いが難しいことがあります。間違えると怪我などの原因になりますから、手順が分かりにくいものなどは押す順番に数字を付けておくなど分かりやすくしておくことが大切です。
認知症の見守り・家族に出来ること
認知症の症状として、徘徊があります。知らない場所に行ってしまい帰ってこられなくなるほか、交通事故などに巻き込まれる恐れがあります。線路に立ち入って列車事故をおこし、多額の賠償金を請求されるケースもあります。
自ら車を運転する認知症高齢者の場合、他の人にけがをさせることもあるのです。そのため、家族の見守りが重要になります。一緒についていられないならば鍵を二重にかけて外に出にくくしたり、玄関などにセンサーを付けて出て行ったことを分かりやすくするということができます。GPS付きの機器を持たせ、居場所を把握しやすくすることもできるでしょう。車の場合は、認知症が疑われる状況になったら返納を勧めるなどということも安全のために重要です。
バリデーション
どうしても認知症の高齢者に対してつらく当たってしまうことがあります。親などこれまで尊敬してきた人が普通に出来ていたことが出来なくなっていくということは家族としても信じたくないことで、それを責めてしまうという気持ちは仕方ないものでもあります。しかしそれでは高齢者もつらいですし、責めてしまう家族もつらくなります。
そこで取り入れたいのがバリデーションという考え方です。認知症の人の行動を責めるのではなく、まずはそのまま受け入れるという形です。理不尽なことを言われたときにも、まずはおうむ返しのように相手の話を受け止める形で繰り返すとぶつかることが少なくなります。目線を合わせて優しい口調で話すということも効果的です。このように、ワンクッションおいて向き合おうとすることで介護する側の気持ちも少し落ち着くのではないでしょうか。
まとめ
認知症の方への対応は難しいものです。理解しがたい行動や、思い通りにならないことが次々に起こり、介護する家族も疲弊しやすくなります。まずは高齢者の気持ちを受け止め、できる範囲で見守るということを意識してみましょう。どうしてもできない部分については、GPSやセンサーといった機器を利用するのも大きな助けとなります。自分たちだけで対処しようとせず、地域の人々に理解をしてもらうことや介護サービスに助けを求めるなども介護を継続していくための大きなポイントになります。
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