介護につきものの腰痛...悪化させないためにできること
介護の現場で働くスタッフ、介護をする家族に共通の悩みといえば腰痛です。腰痛は悪化すると歩行困難になる場合だけでなく、最悪の場合死亡にいたるケースがあると言われています。今回は介護につきものの腰痛についてまとめてみました。
人の体重を支えることは、腰に大きな負荷が掛かる
移動するとき、立ち上がるとき、入浴の際など、介護をする人が介護される人の身体を支えてあげなくてはいけないシーンは頻繁に起こります。そのたびに介護をする人は、かがんだり前屈の姿勢をとったりしながら、抱き起す、持ち上げるといった運動を行います。
しかし、お年寄りであっても人間の身体は重いものです。介護される人の体重は、軽くても40kg前後、大きな人なら60kgや70kgを超えることもあります。このような重量を無理な体勢で頻繁に支えることにより、背骨や腰まわりの筋肉にはとても大きな負担が掛かってしまいます。
この状態が日常的に続くと、腰へのダメージが蓄積され、腰痛が起こります。また、車イスの方への食事介助、低いベッドでのオムツ交換、お風呂を手助けする際の中腰などの姿勢も、同様に腰への負担となります。
まずは手軽なストレッチを取り入れよう
腰痛を予防するため、また緩和するために有効なのがストレッチです。ストレッチは一人でも手軽にできるので、毎日決まったタイミングで行う習慣を身につけましょう。ストレッチを続けることで腰の疲労の軽減や血行促進の効果が得られ、また柔軟になることでダメージを受けにくい身体になることが期待できます。
ストレッチの方法はたくさんありますが、ここでは椅子に座って行える簡単なストレッチをご紹介します。
はじめに、椅子に浅く座り背筋をまっすぐ伸ばします。膝の上に手を置いたら、息をゆっくり吐きながら上体を前に倒します。倒しきったらそのまま5秒数えます。数え終わったら、ゆっくり元の体勢に戻します。
たったこれだけの簡単なストレッチでも、介護を始める前に行うと準備運動と同じ効果が得られます。ぜひ試してみてください。
痛みを和らげる効果が高い腰用サポーター
既に腰痛が始まってしまっているけれど、介護を代わってもらえる人がいない...。そんな時に役立つのが、腰に装着するサポーターです。腰痛ベルトとも呼ばれます。腹巻きのようにお腹から腰にかけて覆う形をしていて、伸び縮みする素材で作られています。
腰用サポーターを着用することで、腰にかかる負担を分散させ、痛みを和らげることができます。また、腰痛を予防する効果もあるため、これから介護を始める方にもおすすめです。
ただ、腰用サポーターで痛みがなくなっても、既に受けてしまったダメージが治るわけではありません。そのため無理はせず、完治するまではできるだけ腰を休めることが大切です。
負担をかけない体の使い方をマスターしよう
長く介護を続けていくにあたって最も重要なのは、腰にかかる負担を少しでも減らすということです。そのためには、無理のない動作と正しい姿勢を心がけることが非常に有効です。
まず、動作について。忙しい介護においては、急いで人を持ち上げるなど、急に動いてしまうことがよくあります。しかしこれは腰の周りの筋肉を緊張させ、腰痛の原因となります。そうならないよう、1つ1つの動作をゆっくり行うことを心がけて下さい。
次に姿勢についてです。何をするときにも気を付けたいのは、背骨をまっすぐに保つということ。背骨が曲がった状態では椎骨や椎間板に負荷がかかり、ヘルニアを起こすことがあります。
具体的な例として、低いベッドでの着替えの補助をするとき、片足の膝をベッドに立てて行うと背骨が曲がらずに補助ができます。また、靴の脱ぎ履きの際は、しっかり膝を曲げてしゃがみ、胸を張って手だけを伸ばすと良いでしょう。立ち上がるときの補助として手を取るときは、前かがみになるのではなく膝を曲げて下半身に力を入れることを意識してください。
姿勢や動作に気を付けることで、腰への負担を大幅に減らすことができます。これを自然にできるようになるまで、しばらくはしっかりと意識して介護に取り組みましょう。
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