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「死」についてフラットに話せる場。対等に学び合う死生学カフェ

静岡県のとあるカフェに、「死ぬこと、生きること」について学ぶ場があります。
死生学カフェでは、隔月の土曜日に30名程度の人が集まります。年代も性別も様々な人が話すテーマは「死」。

普段生活していく上で、「死ぬこと」について話す機会はなかなかないのではないでしょうか。
今回は死生学カフェの世話人代表でもある、静岡大学教授の竹之内裕文様にお話を伺いました。

対話するためには問いが必要である。「死と生」を学ぶカフェ




―死生学カフェでは何をされているのですか?

死生学カフェは、参加者同士で「生と死」について対話を通して学ぶ場です。最初は数名のグループで対話を行い、次に全体で話し合いを行います。
毎回30名前後の方が参加され、年代も10代から80代まで幅広い層の方が参加されています。
参加者に制限はなく、身近に「死」を経験された方もそうでない方も一つのテーマのもと話せるのが特徴です。

―「これだけ死について話せる場があり、嬉しかったです」といった感想が印象的でした。

死生学カフェでは「会話」ではなく「対話」を行っています。
そこが影響しているのかもしれませんね。

ー「会話」と「対話」ですか。二つの違いはなんでしょうか?

会話は「交流を深める」事を目的にしています。
例えば、世間話がイメージしやすいかもしれません。「今日はいい天気だねえ」だったり「身体の具合はどうですか?」だったり。

ー確かに私達が普段行っているのは「会話」ですね。「対話」は何が違うのでしょうか?

話している者同士に共通の「問題意識・テーマ ・問い」が生まれると対話になります。
たとえば「なんでこんなにあったかいんだろうね」といった会話から、理由や原因を探し始めるとそれは対話になります。

私たちはお互いの対話を通して、共に学ぶ事を大事にしています。

―「学ぶ」となると「先生と生徒」といった関係性を想像してしまいます。一方的な講義とは全く異なる形式なんですね。

はい。死生学カフェでは講義形式は取りません。ゲストに来ていただくときも、講義ではなく対話を通して「全員で考える」形式を取っています 。

お互いの違いが分かることも対話の重要な要素の一つではないでしょうか。同じことについても私はこう見るが、あなたはこう見る。対話によってテーマが奥行きを持って見えて来ます。テーマが立体的になる事も対話の1つの醍醐味です。

―立場や背景が異なる方が同じテーマのもと話す場、となるとファシリーテーションが難しいイメージがありますが、工夫されている事はありますか?

ファシリテーションでは、意見の背景やなぜそう思うのかを聞くようにしています。

私が先生でみなさんが生徒というわけではありません。生きる、そしてやがて死ぬという点では、全員が平等です 。
だれもが生き、死ぬにもかからず、生きること、死ぬことについてよく分かっていない。分からない者同士で共に学んでいくのが特徴です。

―あくまで、対等なんですね。

参加者の方が「こんなに話せる」と書いたのは、物理的にたくさん喋れたというよりも自分の本音の部分や深い部分を話せたとい部分が大きいのではないでしょうか 。

フラットな関係性で誰でも「死」について話せる場




―死生学カフェはいつ頃からはじめられたのですか?

2003年頃、私は東北大学に在籍していて当時から「生きることや死ぬこと」について、対話できる場所があればいいと思っていました。

最初にはじめたのは2015年の1月です。
立ち上げから、様々な試行錯誤を経て、現在の方向性に落ち着きました。

ー現在の方向性というと、対話形式でしょうか?

はい。世話人が役割分担しながら対話の場を作っていく形式です。

当初は、講義のようになってしまった面がありました。本人たちは講義のつもりはなくとも、一方的な関係になってしまいました。
リニューアル後は絵本を読み、グループ、そして全体で対話をしていきます。



―テーマを絵本にしたのはなぜでしょうか?

死について話す時、経験者か未経験者かで、言葉のボキャブラリー、話せる内容、構え、リアリティが異なります。 身近な人を亡くされた方は話す量が多くなり、未経験の人は何も分からずひたすら黙って聞く、という関係性が出来てしまう事が起こり得ます。
それも悪くはないですが対等な関係ではありません。

テーマを絵本に設定すれば、情報が一緒になります。

かつ経験者は経験者なりに未経験者とは違う視点から絵本に入っていき発言が出来るようになります。

目の前にいる人とのコミュニケーション




―竹之内様自身が他者とのコミュニケーション全般において丁寧な印象を受けます。

死生学カフェでのコミュニケーションが普段の場所とは違った姿勢を求めるからかもしれませんね。ファシリテーターとして、こちらのフィルターで相手を見ないように気を付けています。

―何か竹之内様のご経験が関係しているのでしょうか?

20歳から仙台市にある重度障害者のボランティアに行っていました。重度障害者の「自立ホーム」の泊まりのボランティアとして、筋ジストロフィー症を抱えた阿部恭嗣さんと出会ったことが大きく影響しているかもしれません。

その方はもともと新潟で生まれ少年時代に筋ジストロフィーを発症。 親元を離れて仙台の病院に入院しました。

筋ジストロフィーの方が亡くなる間際、別の部屋に移動されます。いなくなった仲間の消息を看護師さんに聞くと、元気になってお家に帰った、と答えたそうです。
そう答えざるを得ないんですね。

しかし当事者にしたら、自分達はただただ社会の片隅に押し込められ、社会から隔離される。死んだことさえ隠されてしまう。死の意味はなんなんだ、となる。人間として生きるのは簡単なことではない。

そこから、どうしたら誰もが自分らしく生きていけるのか、ということを考えるようになりました。

―阿部さんとの出会いは、大きな出会いだったんですね。

もう一つ大きな出来事があります。
私の息子は9歳ですが、ダウン症を抱えています。一般的な物差しで測るとアレができない、コレが出来ない、といった事象が発生してしまいます。

しかし、他の人と比べて出来ないことがあったとしても、その人に価値がないわけではありません。

私の子どもが、その子らしくめざましく成長していく姿を見て来ました。私が子どもと共に生きるためには、外の尺度や基準をあてがうことは役には立ちません。

時にはもちろん客観的な尺度も必要ですが、その子を理解しようと思ったらその子に軸足を置くほかないのではないでしょうか。

参加者同士で学び合う関係を理想とする




ー死生学カフェの今後についてはどのようにお考えでしょうか?

私たちの死生学カフェを見て、他の地域で、似たような取り組みを始めるグループがポツリポツリと出てきています。全国でネットワークを作って、お互いを高め合うような取り組みが出来ればいいですね。

また、カフェ設立当初からのメンバーが古民家を持っており、農地・山林とともにを無料で譲ってくれる事になりました。そこに塾のようなものを作り、哲学と対話を学ぶことができる居場所を作る準備をしています。

お互いに知らない者同士で共に学び合う場の提供が出来ればと思っています。

(了)





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お話を伺った人

静岡大学教員 竹之内裕文様

執筆者

執筆者:gCストーリー株式会社佐藤政也
画像提供:死生学カフェ

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