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自分で自分らしさを取り戻すために。マギーズ東京センター

厚生労働省『平成26年受領行動調査(概数)の概況』によると、外来患者の診察時間は67.7%が10分未満です。
外来受診の目的は診察・治療・検査等の受診が主のため、病気に伴う日常生活の不安や詳しい治療方針、心身の影響などについては、なかなか医師にじっくり相談することは難しい状況にあると言えます。
今回は、がんに影響を受けるすべての人に専門的サポートと第二の我が家のような居場所を提供するNPO法人maggie’s tokyo(マギーズ東京センター)センター長の秋山正子さんにお話を伺いました。
マギーズ東京センターは、相談者に無料で支援を提供するためにチャリティ活動やクラウドファウンディングに積極的に挑戦し続けています。

がんとともに生きるすべての人の“第二の我が家”


―マギーズセンターとは、どのような場所か教えてください。

「マギーズキャンサー(がん)ケアリングセンター」(以下、マギーズセンター)というのが正式名称で「マギーズ東京センター」が日本の第1号です。

ご本人、ご家族、ご友人など、がんに影響を受けるすべての人が、月曜~金曜10時~16時の間、予約なしに気軽に訪れ、安心して話すことができる場所です。

皆さんがリラックスできるよう、入ってすぐに大きなキッチンテーブルがあります。
小さいながらも自然を感じられるお庭、ゆったりしたソファ、病院でも自宅でもない、第二の我が家のような空間。
そこには医療知識を持つ看護師・保健師・心理士などがいて、まるで友人のように訪れる人を迎えます。



必要に応じた専門家からの心理的、実用的、社会的なサポートによって、ご自身の力を取り戻していきます。
マギーズセンターは宿泊施設ではなく、治療や検査、施術を行う医療機関でもありません。

静かに時を過ごし、話したい話を聴き、一緒に考える。
必要な情報を選ぶお手伝いをする。
とまどい孤独な時に、いつでも訪れられる場所が、マギーズセンターです。

―マギーズセンターは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。

マギーズセンターは、イギリスで1996年に生まれました。
そこに行けば、自分の考えに少し整理がついて自分の足で、前に進める。そんなご本人が主体の相談支援の場をぜひ作りたい。
治療中でも、患者ではなく一人の人間で居られる場所がほしい。

造園家のマギー・K・ジェンクスさんご自身が、患者として感じたがん体験による願いをキッカケに始まり、20年が経過した新しい動きです。

マギーさんの願いはご主人であり建築評論家のチャールズ・ジェンクスさん、担当看護師のローラ・リーさんによって実現し、イギリス国内に約20か所(2017年時点)、日本、香港、オーストラリアにも広がっています。



いま日本のがん医療は、高い率で外来治療にシフトしています。
体力を落とさずに治療ができ、手術の手技、新しい放射線療法の開発など、様々な医療技術が発展し、入院しなくて済むという利点があります。

しかし、外来ではなかなか医療者との接点が少なくて、ゆっくり話を聴いてもらい、自分が何に困っているか、話をしながら整理していく時間が取りにくい。
それは良い悪いではなくて、がん患者さんが多くなっている日本では、“話をゆっくり聴いてもらえる場所”が必要です。

マギーズセンターを「ぜひ日本にも」という思いでNPO法人をつくり、資金集めをして2016年10月10日にマギーズ東京センターを江東区豊洲にオープンしました。
日本で初めてイギリスの正式な承認を得て、マギーズ国際ネットワークの一員として運営しています。

―全国展開されている「暮らしの保健室」はマギーズセンターの準備室としてスタートしたのですよね。

2008年11月、国際がん看護セミナーでイギリスのマギーズセンターの発表に目を見張りました。すぐにイギリスへ行き、現場で動いている様子と、建築と環境が作る癒しの空間を体感しました。
地域の中の相談室としてベースにマギーズセンターの考え方を取り入れた”暮らしの保健室“をオープンしたのです。

高齢化の進んだ団地の中で、がんに限らず、すべての人の相談に乗るカタチです。
小さいながら環境を整えて、予約なし、相談無料、何が心配か・何から手をつけて良いか分からない人でも相談オーケー、という場所を開きました。

その結果、安心して話を聴いてもらえる居場所、ボランティアさんが活躍する場所となりました。在宅医療介護の多職種の連携の場にもなって、暮らしの保健室は皆さんから着目いただき、全国約50か所(2017年時点)に増えています。

2014年4月、この暮らしの保健室に日本テレビ記者だった現共同代表の鈴木美穂さんが来ました。
彼女は24歳でがんを経験した当事者としての思いの中で、闘病中の方を支援する活動をしていました。
病院だけではなく病院の外にリラックスできる場所があって、皆が集う場所がほしいという思いがマギーズセンターと同じ方向でした。

「日本にマギーを作りたい」
鈴木さんと出会い、仲間が集い、一気に様々なプロジェクトが動き、ここまで来ました。



あなたの人生はあなた自身のもの


―マギーズセンターが目指す在り方について、お聴かせくださいますか?

私たちが目指すのは、教え悟し、指導することではありません。
ご自分で“自分らしさ”を取り戻し、自分の足で歩いていけるように、エンパワーメント(力づけ)することを目指します。

それぞれの方の体験を伺いながら、その方が自分らしさ、ご自分の強みを見出し、病気も含めて厳しい状況はあるけれども、解決策を自分で見出していく。
その支援をすることが基本です。

―秋山さんのマギーズセンターへの“思い”をお聞かせください。

「あなたの人生はあなた自身のもので、それはどういう状態であっても大事にしてもらいたいし、それを大事に考えたい」そう思っています。

私たちは、直接触ってとか、医療処置をしてとか、そういうことをするのではありません。
ある意味ケアの本質というのか、元々の看護の源流に触れるもの。

その原点からスタートして、その人生の中で“がん”という体験をしたこと。
「それは決してすべてマイナスではなくて、辛い体験も色々あったでしょうし、大変なことももちろんあるけれども、それを含んだあなたを理解したい」
仲間と共に、この思いを大事に接していくと、皆さん自分の気持ちを開いてよく話をしてくださるのです。

本音が言えるというのか、そこのところに思いが至らないと、話そうという気にもならないですよね。
その人の持っている力をとにかく引き出す。

「どうぞ話してください」
そこが、強い思いです。



具体的に社会・経済的なこと、人間関係の悩み、家族関係の悩みを抱えて来られる方もいらっしゃいます。
がん治療そのものについての会話はもちろん多いです。
深いところにある、その人の人生に関わることを伺う立場です。

「どうしなさい、こうしなさい」ではなく“その方がどう捉えて、次の一歩を踏み出すか“。
もし必要なら、色んな情報を一緒に集めて、一緒に選びながら、考えるヒントがその方に生まれてくるまで待つ、というスタイルです。

「自分たちもゆっくり話を聴きたいけど中々できない」という病院の相談支援センター、医師や看護師さん達、ケースワーカーさんからご紹介のお話がきたりもします。
連携をとりながらやっていけば、ご本人にとって1番良い状態で治療を受けられて、次のことを考えていけるかなと思います。

1年間で来訪者が6,019人を数えました。
私たちの広報活動だけの力ではないと思います。
「自分たちも聴きたいけど聴く時間がない。そこをお願いしたい」
がん拠点病院をはじめ、患者さんとの窓口にいる方達の思いが繋がっていった結果だったと感じています。

マギーズ東京センターに持続可能性を持たせるため多くの方に知ってほしい


―マギーズ東京センターでは参加型のチャリティイベントや広報活動に注力されていますね。

マギーズ東京は若い方たちと、従来の私の仲間とが、一緒に運営をしています。
若い人たちの情報発信の仕方というのは、SNSを利用して非常に拡散していきます。

チャリティの文化が育っていない日本で、こういうチャレンジは本当に挑戦的なことですよね。「楽しみながら参加をして、その一部がこういう活動に少しでも役に立てたらいいな」と思う人が増えてきています。


[マギーズ一周年記念フェスティバル]

もちろん、従来通りの寄付会員になっていただくスタイルもあります。
色々な財団等の事業助成へのエントリーも継続しています。

―現在、取り組み中の課題はありますか?

主に3つの課題に取り組んでいます。
1つ目は、この場所をどうしていくのかです。
現在のマギーズ東京センターの在り方は、仮説という形で2020年までの限定使用です。
「2020年以降も必要」との声が高まっている中、オリンピック・パラリンピック終了後には、この一帯は高い建物も建設されるでしょう。
建築も含めた在り方を考えていく必要があります。

2つ目は、資金面のことです。
チャリティで運営していますので、資金面のことは毎年寄付を募っています。
色んな事業助成の申請を繰り返していかなければならないので、ファンドレイジングも課題です。

3つ目は、活動を日本に広げていくための下地作りです。
マギーズ東京センターができて1年の間に、全国各地で似たような動きをしようとしている人達が出てきています。
正式に「マギーズ」という名称を使って活動ができるためには、国際ネットワークの一員として、承認を得る必要があります。
ただ建物を建てれば良いというのではなく、相談支援の在りようや、研修に取り組んでいます。
1月の研修募集には、定員を遥かに上回るご応募があり、関心の深さを感じています。

今のところ相談員の多くは、看護師、保健師、心理士が中心です。
研修には、イベントの時に手伝ってもらうボランティアさんや、お庭の手入れや道案内のボランティアさんにも参加して頂いてきます。

その方達も、マギー流のヒューマンサポート、決してこちらが押し付けたり、根掘り葉掘り聞いたりしないという原則をきちんと研修した上で、入っていただいています。

―マギーズセンターの今後の活動について、どんな未来を描いていらっしゃいますか?

まずは、マギーズ東京センターを今後恒久的に展開できることです。
特に東京は人口が集中していて、がん患者さんも周辺に多いので、きちんとしたモデルになるものが続いてほしい、というのが一つです。
私よりも一回り下の経験を積んだ方達が、後に続いてくださってサスティナブル(維持・持続可能な形)にしていってもらいたいと思います。



建築としてもこのマギーズセンターは大変注目いただいています。
ここが狭くなってきた場合には、名のある建築家の方にデザインをチャリティでしていただいて、新しい建物が建つこともあり得ます。
その為にも、多くの方にこの活動を知っていただきたいです。

お問い合わせはコチラ

寄付・ご支援はこちら

http://maggiestokyo.org/donate/

組織概要

マギーズキャンサーケアリングセンター/マギーズ東京センター
HP:http://maggiestokyo.org/
Facebook:https://www.facebook.com/maggiestokyo/

参考サイト

厚生労働省『平成26年受領行動調査(概数)の概況』:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/14/dl/gaikyo-all.pdf

執筆者

取材・文:gCストーリー株式会社 阿南
画像提供: マギーズキャンサーケアリングセンター/マギーズ東京センター

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