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「抱きしめて看取る」~マザー・テレサの夢の続き

日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行し、65歳以上の人口は現在3,000万人を超え(国民の約4人に1人)、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年以降、医療・介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。
今回は、この2025年問題を解決するために「在宅での看取り」の仕組みを構築し「看取り士」を育成する、日本看取り士会代表理事の柴田久美子さんにお話を伺いました。

(C)fountain

愛こそが生きる意味。暮らしの中で看取りたい


―「看取りのプロデュース」を始めたキッカケをお聞かせください。
私は元々高齢者さまが大好きです。
いつも「幸い」と書いて「幸齢者さま」と表現しています。
「赤ちゃん、お年寄り、旅立つ人、この3つをとにかく大事にして暮らしなさい。」というのが母の教えでした。

マクドナルドに勤めていた頃から「将来は施設をやりたいな。」とイメージしていました。
企業戦士を辞めて「何をしようか。」と思った時です。
スピリチュアルな話ですが、ある日電車の中で「愛こそが生きる意味」という、マザー・テレサが聴いた言葉を、私もそのまま聴きました。
「あ。これなんだ。自分が生きていく道は。」と、父の死に思いが至りました。
「愛こそが生きる意味」
この言葉が降りてきた時、父の死の鮮明で清らかな空気感が蘇って「この場に立ちたい。」と思ったのです。

「看取りの道に入る」と言っても学ぶところもなく、看護師か介護士で悩みました。
私は父や祖父と同じように「自宅で、注射やモノが介在せずに看取りたい。」という想いが強くありました。
身内の最後を私が身体で受け止めた経験から、それがしたいな。と思い、介護士になります。
26、27年前は、とにかく施設で亡くなられても病院へ運ぶという時代でした。
病院に運ぶとどういう状態になるか、たくさん見てきて「じゃあ運ぶ先の病院も施設もなければいいんだ。ないことが幸せだな。」と思って、離島に渡って14年間暮らしたのです。

島では独居、ご幸齢になられると止む無く本土の特別養護老人ホームに入居される方がいらっしゃいます。
島のおばあちゃんに「行きたくない。儂は何にも悪いことしてないよ。何で出なきゃいけないの?」と、すごく泣かれたことがあって、もうそれが私はすごく辛くて。

マザー・テレサの「愛こそ生きる意味」という言葉。
そのために島に渡ったのに「何も出来てない。」と、あまりにストレスが溜まりすぎてガンになりました。
手術に臨む時、枕元にマザー・テレサの写真を貼って、神さまに駆け引きしました。
「治してくださったら、私は“看取りの家”をします。とにかく治してください。」と。
無事に手術が終わって島に帰ると、計らずも集会所が売りに出ていて「お金もないけどやろう。」と決めて、看取りの家を開所しました。


(C)國森康弘

「看取り士」と名乗ったのは本土に出てからです。
本人が「家に帰りたい。」と言っても家族が「帰さない、帰せない」現実に驚きました。
あるおばあちゃまと出会った時、私の手を握って「家に帰りたい。」という言葉と「寂しいよ。」と「ここに寝て。」という3つの言葉をずーっとリピートされました。
私はその方を抱いて「大丈夫。帰りましょう。」と言ったんです。

言ったらしないといけないでしょう?約束だから。
「どうしようか?」と思った時に、じゃあ私が「看取り士」と名乗って、無償ボランティアでエンゼルチームを組織したら、この人は帰せる。ってプランが上がってきたんです。
1人のおばあちゃんにキッカケをいただいて、今の形ができて、おばあちゃまは家に帰ることが出来ました。
すごく喜んでくださって、この活動がスタートしたんです。
現在、看取り士250名とエンゼルチーム279支部の皆様が全国で活動をしています。

―24時間対応実現のためには「エンゼルチーム」の仕組みが重要なのですね。
現状の介護保険制度では、在宅で終末期を支えるために求められる24時間介護のフォロー仕組みがありません。
エンゼルチームは、24時間体制の見守りを誰にも過度な負担をかけずに実行する取組みです。
訪問介護員による専門技術と、ボランティアのエンゼルの方々による見守りで、ご家族の負担を軽減出来ます。

エンゼルさんは近隣地域の方々で組織し、ボランティアで見守りと緊急連絡を主に行います。
最大でも1日3時間、ご都合の良い時間に出来る範囲で、幸齢者様に寄り添って頂きます。
一番大事なことは、専門的なことではなく、ただ、そばにいる、手を握る、身体をさする、ことです。
各地域に支部があり、ご協力くださるエンゼルさんを募集していますので、ぜひ世代を超えて多くの皆さんにご協力をいただきたいです。
(申込フォーム:http://nagominosato.org/support/#id_03)

「はじめての不安」にも24時間で対応


―「自宅で看取りたい」と思っても不安に思うご家族が多くはありませんか?
看取り士に連絡してこられるのは初めての方がほとんどです。
「この先病状がどうなっていくのかな。」というのは不安がられます。
例えば「痛くなったらどうしよう。」だったり、「急に亡くなられたらどうしよう。」とか。

看取り士というのは、ご契約頂いた段階から24時間対応です。
お電話1本で駆けつけることが出来ますので、24時間対応で誰かが来てくれると思われると、とっても安心なのかな。と思います。



本当に終末で、その時が近づいて来た時には、ご家族の不安の度合いにもよりますが、24時間体制でエンゼルさんと私たちが寄り添うことが可能です。
24時間滞在して、ずっとお家にいてくれたら不安は解消出来ると思いますよ。

ー24時間対応は心強いですね。ご家族が救急搬送を迷われることはありますか?
その「見極め」はすごく大事で、経験のないご家族では厳しいと思います。
そういう意味でも24時間対応している私たちにお任せ頂ければ良いかなって思います。
救急搬送すること自体は決して悪いことではないと思うし、救われる命は救われてほしいと私は思います。
だから病気は基本的に病院で治した方が良いと思います。

看取り士は、その方が安らかに日々を暮らせる道を「いま」、「いま」、「いま」でその方と一緒に考えます。
例えばエンディングノートを私たちもPRしていますが、こうしないといけない!と家族が思う必要はないんです。
ココロって、ころころ変わるじゃないですか。それが前提です。
「心は変わって良い。特に終末においては変わって良い。その変わっていく心に寄り添っていく。」というのが私達の想いです。
だから「尊厳死」と言われる、それをどこまでも求めています。


(C)國森康弘

―変わる心にすらも寄り添うのですね。病院で入院中の方にも対応なさるんですか?
対応します。
例えば、お姉さまからのご依頼で、若年性アルツハイマーの男性の幸齢者さまのケースがありました。
数年前からお話が出来なくなり、胃ろうを設置されて、その液がもう入らないので、経管栄養、カテーテルをつけることを医師から勧められました。
お姉さまは見ていられずに「もうカテーテルをつけたくない。」と伝えると、医師から「あなたは見殺しにするの?」と言われる。
それでお困りになって、電話を頂いたのです。

私達が駆けつけて、その方の本心、その方自身はどう思っているのか。を聴かせて頂きました。
ずっと長く話されていなかった方ですから、懲りなく懲りなく、その方のご意向を探っていくと、ちゃんと答えて下さいます。

エンゼルチームを派遣して、手を握っていると、弟がこんなにいのちを輝かせていた時代はもしかしたらないのかもしれない。
1対1で手を握っている光景を見て、お姉さまがすごく喜ばれて「エンゼルチームさんてすごいですね。」とおっしゃっいました。
私達は1ケ月で引き上げましたが、その方はその後、回復なさいました。

手を握って、ずっと側にいるってすごいことじゃないですか。
ベッドの周りがキラキラ輝いて見えたと、すごく感動されて「きっと弟はほんとうに幸せです。」と仰っていました。

「やさしく、やさしく、やさしく」皆で見送る豊かな社会


―「看取り」の相談をしたい場合には、どのようにすればよいのでしょうか。
まずは、お電話で看取り士会本部へご連絡頂いてから、ケアマネージャーさんか、病院なら相談員の方を含めた面談をして、ご契約をさせて頂きます。
ご自宅にいらっしゃる場合でしたら看取り士と、ボランティアで寄り添うエンゼルチームをケアプランの中に入れて頂きます。

面談の際は、ご本人、ご家族、別々に4つの質問をさせて頂きます。
「色々な要望、今後どこで誰と暮らしたいか、医療はどうなさるか、今困ってらっしゃることは何か?」
この質問を基に、ご本人の優先順位を高く、ご家族と調整させて頂きながら、その方の生活全部をプロデュースしていくんです。
私たちは、ケアチームの一員でありたいと思っていますので、皆さんと連携を取り情報を共有しながらやっていきます。

―柴田さんが描く「マザーテレサの夢の続き」のビジョンをお聞かせください。
やっぱり私は「帰りたいよ。」と言っている方々を、家に帰してあげたいですね。
もちろん私たちは病院でもホスピスでも対応させて頂いているんですけれども「帰りたいよ。」って言われた日は、それがずっとじゃないにしても帰してあげたい。

特別養護老人ホームに入居されて、自傷行為で自分を叩いてしまうことで、辛さを示される方がいらっしゃいました。
「看取り士が寄り沿って、1日だけでも一緒に帰りますよ。そう施設長に言って下さい。」とお伝えしました。
施設では1人の利用者さんの帰宅希望を叶えると、施設のスタッフが抜けてしまい、施設長としては困りますよね。
ですから「看取り士が対応させて頂いて、1日だけでも帰してあげたら?」という提案を昨日したところです。

終末に入って来て、わがままを聴ける社会、それがその国の豊かさだと思いますね。
皆で思いを叶えてあげられる豊かさがあってほしいな、と。
それは私自身のことだし、皆さんのことだし、今ここで私がそれをやらないと、私自身はしてもらえないじゃないですか。

私も最後はワガママに生きたいので、花の時期には桜を観に車椅子で行きたいし。
私はなごみの里という看取りの家をしていたのですけど、晴れた日はベッドごと外に出て自然の風を感じてもらうとか、そういうことが大事です。
それは決して、わがままではなくて、人間として当たり前のことですよね。
皆が現状の終末ケアの在り方を「私無理です。」って言って下さると、少しずつ変わっていく。
まず現実を見て頂かないと、変わっていかないですよね。


(C)國森康弘

―2025年には団塊世代800万人が幸齢者になります。こころの「豊かさ」が益々重要ですね。
日本には元々「やさしく、やさしく、やさしく、自宅で幸せに見送ってあげられる文化」がありました。
この文化を取り戻します。
決して家に帰ることは大変なことではないんです。
専門職の方や周囲の方が、ご家族に「大変ね。」っておっしゃることがあります。
その「大変」という言葉を家族は持って帰るんです。でも違うんです。大変じゃないんです。
今これだけ、介護保険制度も医療保険制度もあって、尚かつ看取り士とエンゼルチームっていう最強軍団がいて、それで家に帰るって、何も大変なことはないんです。

それこそ20年位前は大変だったかもしれないですが、今は気軽に相談して気軽に帰ってほしい。
もう本当に呼吸が苦しくなったりしてダメな時は救急車もあるじゃないですか。
別にそれがいけないわけじゃない。
だから取りあえず帰そうよ、その時。取りあえず帰ろうよ。
取りあえず帰す。という気楽さです。

私は医療のない島で14年間暮らして看取ってきましたけれど、なごみの里を本土でした時に「救急車が呼べるんだ!」ってすごく驚きました。
もちろん、かかりつけ医さんはいます。でも、救急車が呼べるという「手立て」がある。
「絶対こうじゃないといけない」わけじゃなくて、色々あって良いんですよ。お家に帰られても。
こんなにたくさんの選択肢がある今は、すごく幸せだと思います。
こうして皆様と共に「私の夢、全ての人が愛されていると感じて旅立てる社会創り」に 尽くしていけますことを幸せに思います。


(C)國森康弘

お問合わせはこちら

団体概要

一般社団法人 日本看取り士会:http://mitorishi.jp/
一般社団法人 なごみの里:http://nagominosato.org/
エンゼルチーム登録フォーム:http://nagominosato.org/support/#id_03
Facebook:https://www.facebook.com/mitorishi/?fref=ts

参考文献:

『幸せな旅立ちを約束します 看取り士』柴田 久美子著(コスモトゥーワン)
『死なないでください』柴田 久美子著(アートヴィレッジ)
『抱きしめておくりたい―看取りの日々を生きる』柴田 久美子著(西日本新聞社)
『ケアのカリスマたち 看取りを支えるプロフェッショナル』上野千鶴子著(亜紀書房)
『今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~』http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html

執筆者

取材・文:gCストーリー株式会社 阿南
画像提供:國森康弘、日本看取り士会、なごみの里

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