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音楽の力で介護現場に奇跡を起こす。「歌う」レクリエーション

2025年には65歳以上の認知症患者数が約700万人、高齢者の5人に1人は認知症になると見込まれています。(『平成28年版高齢社会白書』より)
これまで「予防できない」と言われていた認知症ですが、近年の脳科学研究では、記憶・学習等の脳機能、認知症やパーキンソン病等の脳病態等が明らかになってきています。
今回は「生涯現役」をテーマに、音楽の効果を活用した健康促進、介護・認知症予防に取り組む、日本音楽レ・クリエーション指導協会理事長の堀口直子さん、会長の小野惣一さんにお話を伺いました。


音楽の力で高齢者の方に活力を。全国500か所以上でコンサート


―音楽レ・クリエーション指導協会は、どのようにして生まれたのでしょうか。
以前、介護施設でクラシックを演奏をした時の体験がキッカケになりました。

「どうすれば喜んでもらえるんだろうか?」と自分なりに調べていくと、皆さんが聴きたい曲はもっとポピュラーなものだと分かりました。

高齢者を始め、たくさんの人に「もっと音楽を楽しんでほしい。」と思い、脳科学などの専門家の先生のお力を借りながら、音楽の良さを論理的・科学的に研究しました。
現場を知るために、実際の介護現場でも働いて、音楽がもたらす奇跡を目の当たりにしてきました。

例えば、前頭葉損傷で失語症になった人が歌を歌える。
今まで誰ともコミュニケーションをとれなかった人が、急にハーモニカを吹ける。
それは小さい頃から培っていた音楽との共感です。
10代、20代の青春の曲を思い出すことによって「実は脳ってまだまだ活性化できるんだ!」という気づきが1つの原点です。

実績として、認知症患者のための「音楽療法コンサート」や各地域での「音楽健康塾」は、全国で500回以上開催しました。
音楽の力をもっと介護の現場に広げ、地域での認知症予防活動を広げていくために「音楽レクリエーション指導士」1万人の育成を目指して、協会を起ち上げたのです。



楽器・楽譜は不要! ただ「音」を「楽」しむ認知症予防


―「音楽レクリエーション指導士」はどんな方向けの資格ですか?
音楽レクリエーションを指導してみたい方なら、どなたでも向いています。
現状、60%が介護従事者、15%が音楽関係者、15%の方がご家族の介護をされている方が受講されています。
テキストは台本形式になっていて、3級で6時間の講座を受ければ、翌日からすぐに介護施設や高齢者福祉イベント等で60分位の音楽レクリエーションの指導が出来ます。

音楽は楽器が出来なきゃダメ、歌がうまくなきゃダメと、ハードルが高く感じる方が多いと思います。
この資格は「楽譜も楽器もいらず、歌う必要もありません。」。
3級の講座1回で、20個のネタを習得することが出来ますので、組合せを工夫しながらお使いいただけます。

音楽療法は専門領域であり、楽器ができなくてはならないと思われがちです。
音楽は字の如く楽しむものです。下手でも全く問題ありません。

これまで、3級の90分ダイジェスト版セミナーを最大開催人数400人で開催しました。


ここから認定指導士になってくれる方をいかに増やしていくかが私たちの課題です。

―楽器や歌が出来なくてもチャレンジ出来るのですね。
はい。
楽譜は見ただけで敷居が高いと感じる方も多いので一切載せていません。

具体的な例としては、20人位の高齢者に対して「でんでん虫をやりましょう!」と笑顔で、右手がチョキで左手がグーで、と手を動かす作業をします。
歌いながらやると、指示が早口になったり音楽がズレてしまったりするので、歌は参加者の皆さんに歌ってもらいます。



指導士は、皆さんが出来ているか、出来ていないかを見ます。
出来ていない方には「間違っても良いんですよ。新しいことに挑戦することが良いんです。良い笑顔ですねぇ。」と褒めながら、認めながら進めていきます。
初めての人でも、テキストの台本の台詞を見ながらやっていくことができます。

―現場体験のために特別養護施設で勤務されていた、と伺いました。
ホームヘルパー2級を取得して、夜勤もしていました。
夕暮れになると、徘徊をする方がいらっしゃるのですが、このうち90%が16:00台と17:00台に徘徊すると言われています。

施設では、音楽の副作用とも言えるケースを体験しました。
例えば、夕方に「ふるさと」を歌うと故郷を想像してしまい、老人ホームではなく「家」へ帰りたくなって、徘徊してしまうのです。
「家に帰りたい。」と言っても人それぞれで、自分が子どもとして帰りたい場合もあれば、子どもが小さいから早く帰ってあげなきゃ。という時もあります。

夕暮れの徘徊は、16:30から17:00に流れる「七つの子」、「夕焼け、小焼け」など、昔懐かしの音楽がいまだに流れているのが引き金になるケースもあります。

音楽には良い効果もあれば、使い方を間違えると、相手に好ましくないことを引き起こしてしまうケースもあります。
音楽のこと、脳のメカニズムの知識が重要なので、講座の前半はすべて理論をお伝えすることにしています。

―理論というのはどのようなものですか?
脳の仕組みについては、学者さんたちが世界共通で仰っている一般的な事実です。
音楽と脳と認知症について専門的に研究されている医学博士の先生に師事して、事実と文献を基に、実際に歌っている時の脳内はどうなっているのか、検証を行いました。
結果、歌っている時の脳内、書いている時、計算している時の脳内では、やはり歌っている時に全体が最も活性化していることが実証できました。
歌うという作業は身体に良いだけでなく、脳内血流を増加させ脳全体を活性化させる力があります。



現場では、この実験写真を大きく印刷したものを使って「ほら。歌っている時の脳内は、こんなに活性化するんですよ。」と参加者の方に伝えてもらいます。
特に男性は納得しないと行動しない傾向があるので、納得して取組みやすくなる効果が期待できます。

こうした知識を知っているだけで大分世界が変わってくるのではないでしょうか。
リズム、メロディ、ピッチ、ハーモニー等、音楽を司るものによって、人間の脳は全体が活性化し、体を動かす領域の体性感覚野は70%以上が起動しています。


死ぬまで忘れない「パーソナルソング」の効果


―認知症ケアに有効とお考えの「パーソナルソング」について、お聞かせください。
元気な時や成功した時の記憶と結びついている青春時代の曲や、大切なお気に入りの曲、その方のテーマ曲が「パーソナルソング」です。
ご自分の生まれた年に20歳前後を足した青春時代のヒット曲の中にあることが多いですね。
1人1人それぞれが、元気になったり、リラックスする「パーソナルソング」を持っています。

この曲には、死ぬまで忘れない曲が含まれていることが多いのです。



いつ聴いても元気になる、ウキウキする曲は、背景に思い出がくっついています。
ですから年代によって違うのです。
例えば1940年生まれの方は1960年前後のヒット曲に思い出の曲があるに違いないという仮説です。
その方たちと「この曲はどうですか?」と会話すると、高齢者の方は喜んで思い出を話してくれます。

―「パーソナルソング」で、とっても会話が弾みそうですね。
その方の「パーソナルソング」を再生して一緒に口ずさむだけでも脳は活性化すると思います。
認知症になった方でも、最後の思い出の曲は忘れません。
認知症になる前に、身近な人が知っておくことが大切です。

講座ではまず、ご自身の「パーソナルソング」を抜き出してから、ご両親、兄弟、身近な方たちの曲を知っておいてください。とお伝えしています。

―実際にケアに役立ったエピソードがあれば、お聞かせください。
特別養護老人ホームに「殺される」という被害妄想がある方がいました。
服を脱がされて無防備になるのが恐ろしくて仕方がないので、入浴拒否がとても激しいのです。
強烈な力で手すりを掴んで服を脱がせてくれず、無理に脱がそうとすると、相手が殺人者に見えていますから、「殺される!」と余計に怯えてしまいます。

その方は炭坑節が大好きで、「♪月が~出た出た~」がかかると必ず手拍子をするのです。
ご家族に理由を聴いたら、お祭りがお好きということでした。
入浴時にCDで炭坑節をかけて、鉢巻きをした職員に浴槽で待機してもらうようにしたら、毎回楽しそうに、すんなり入浴してくれるようになったのです。

もし「パーソナルソング」を知らなければ、先程のケースの方の場合、何が起きていくでしょうか。
脱がせるのが大変だから、マジックテープで簡単に着脱できる服に施設側の都合で変えられる、入浴頻度を減らす、といった対応になるかもしれません。
自立支援をどんどん出来ないようにしていってしまう可能性があるのです。

夜の徘徊も、その方の好きな曲をかけると落ち着いて眠れたりします。
捕まえて寝かせるより、その方の好きな曲を一曲、一緒に歌って寝る方が良いのです。
元気になる曲、リラックスする曲、怒りを発散させる曲、それぞれ違います。
介護職の方、ご家族の方にも、まずは自分の曲を先に知っておいてもらうようにしています。
意外と自分の好きな曲を省みることって、ないですよね。
介護する方も、自分が大変だと自分自身の健康の弊害にもなってきます。

私たちは、音楽の力で元気にする方法を、形にして体系化することで、同じように出来る人たちを養成しています。
これからは30代、40代の方たちが20年後、とても大変になります。
親世代が突然倒れて認知症になり、認知症の中期症状になってはじめて「どうすればいいの?手が付けられない、徘徊し始めた、介護施設数百人待ちって何?」と言って「自分の仕事をどうしよう。」とパニックになるのが目に見えています。

「今何もしなければこういう今の大変なことがあるからちゃんと知っていてくださいね。」
「早期発見が大事ですよ。」
もし身近な方に認知症の傾向が認められる方がいたら、初期に効果のある薬や、進行を遅らせるために家族も含めて地域コミュニティに参加することも必要になってきます。


―「音楽レ・クリエーション指導協会」が描く未来像をお聞かせください。
認知症の発症・進行は遅らせることが出来ることを、もっと広めていきたいと思っています。
誰でも認知症には必ずなります。40歳でなるか、120歳でなるかの違いだけです。
例えば、94歳で発症する方は88歳であの世へ逝けば、認知症を知らないままですし、92歳まで生きたら4年間、認知症と向き合って生活することになります。
発症を4年間遅らせることが出来たら、94歳でも認知症を知らずに済みます。

1人の指導士が大体100人のコミュニティのリーダーになれると仮定すると、1万人の指導士で、100万人の高齢者が元気でいられる場所が生まれます。
そう出来る可能性があることを皆さんに分かって頂くためには、まだまだたくさんの仲間が必要です。



私の使命は「介護する人、される人が幸せになれる音楽の力を活かし、介護現場のクオリティーをあげていくこと」です。
音楽が起こす奇跡で、たくさんの笑顔を生み出すお手伝いをしていきたいと思っています。

お問合わせ・お申込みはこちら

団体概要

日本音楽レ・クリエーション指導協会
HP:http://jmrec.or.jp/index.html
Facebook:https://www.facebook.com/musicrecreation/

参考文献:
『平成28年版高齢社会白書』
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/zenbun/28pdf_index.html

『今後の高齢者人口の見通しについて』
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/dl/link1-1.pdf

執筆者

取材・文:gCストーリー株式会社 阿南
画像提供:日本音楽レ・クリエーション指導協会、pixabay

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