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「地域のみなさん」と一緒に取り組む「包括ケアシステム」

『保健医療2035』の提言を皮切りに、超高齢化社会に向けて「かかりつけ医の育成・全地域への配置」が推進されています。
今回は、多彩な経歴を持ちながら「まちのお医者さん」として地域医療モデルを切り拓く、みいクリニック院長の宮田俊男医師にお話を伺いました。
地域医療モデルの構築・発信だけでなく、内閣官房補佐官をはじめ、若手育成、医療機器開発にも取り組んでおられます。


日本のために。現場から「地域医療モデル」を推進する


―なぜ、地域診療クリニックを開業されたのですか?
大学病院での臨床経験や医療機器の研究開発を経て、欧米で出来る医療が、日本では出来ない問題を解決するために厚労省に入省しました。
「医者になった以上、やはり日本のために貢献出来ることを考えていかなきゃいけない。」
長く臨床現場にいて、課題を身をもって知っているからこそ、色々大きく変えられるものがありました。

抗がん剤や人工心臓など、多くの薬や医療機器が早く認可につながるように働きかけて、薬事法の改正や再生医療新法の立案に取り組んだのです。

特に医療機器は、認可が早くなりました。
重症の心臓病患者の心臓を細胞シートで機能回復する製品は、世界で初めて日本で認可されて、欧米よりも日本の方が早く高度な治療が出来るところまで持っていきました。

ただ実際は、多くの患者さんが医療や介護を含む、総合的なケアを受けたい時に、仕組みや制度が分からず迷っています。
様々な治療法の選択肢や制度があっても、高度化しすぎて、一般の方には分かりにくいのです。

地域診療を志したのは、かかりつけ医が地域の中核になって「もっと色んなことが出来るのではないか。」と思ったからです。
ヨーロッパやオーストラリアのように総合的なケアを提供する医師を増やしていく必要があります。

もちろん政府が「地域包括ケアシステム」を構築しようとしていますが、医療制度そのものを改正していくためには、どうしても5年、10年と長い期間が必要です。
たくさんの調整があり、原則2年で異動がある役所では、スケールの大きな仕事を進めていくのは結構難しいのです。
2025年には、団塊の世代がすべて高齢者になります。
地域包括ケアシステムの進み方が非常に遅い一方、少子「超」高齢化社会が進展していく先に、国民皆保険制度そのものの存続も危うい。
制度を待っていたら、「時代に間に合わないのではないか。」と危機感に駆られました。

日本には「自由開業制」があり、私自身が「地域医療モデル実践の場」を率先して作ることで、他の人たちも真似出来ます。
実績があれば、政府も制度作りを進めやすい。
まずは当院が手始めにやってみることで、いろいろ推進できると考えました。

―実際には、どのような「地域医療モデル」を実践されているのでしょうか。
在宅医療では介護と医療の連携により、かかりつけ医と共に、介護スタッフや訪問看護の看護師、薬剤師が状態を観ていく中で、適切なケアを提供出来ます。
その方の日常や睡眠状況を聴きながら、服薬量を調整していくことも可能です。
いつの間にか、いち高齢者が20種類、30種類もの薬を処方されている多剤併用(ポリファーマシー)も、相談しながら対応していきます。



塩崎厚生労働大臣が提言する2035年に向けての医療政策『保健医療2035』の中でも、患者さんの価値を中心に置いたケアへの転換が打ち出されています。
介護・医療従事者が、みんな対等だという立場で、多面的にその人を支え、さらには、周りの社会そのものを変えていくことを目指したチーム作りに取り組んでいます。

私の他にも、消化器内科医、精神科医、小児から高齢者までを診る総合診療医、救急看護経験者を含む看護師、がんサバイバーシップ部長、日本では珍しいアートセラピーの専門家の体制でチームワーク重視のケアを行っています。
クリニックの概念からは随分外れているかもしれません。
一人一人に色々な役割があって、そうした中で支え合っています。

介護と医療を連携させる担当スタッフも設置していて、先日も介護制度に関する勉強会を実施しました。
患者さんの介護申請支援では、ケアマネージャーから書類の適切な記入方法をアドバイスしてもらう取り組みも行っています。
当院から地域の薬局に働きかけて、在宅を始めた薬局もあり、薬剤師や漢方薬の専門家とも連携しています。



近隣住民の方が当院に来て「実際にどんなことが対応出来るか。」をご覧になった上で、かかりつけ医を大学病院から当院に変えるケースも出てきています。
在宅の患者さんも増えていて、介護施設へも往診に行っています。
介護施設では、施設でやれる範囲などについて看護師の相談に乗ることもあります。
「かかりつけ医」は、地域から求めていただいていると、手応えを感じています。


かかりつけ医に相談しながら、病院と上手に付き合う


―在宅医療を希望する際のポイントを教えてください。
ご本人の状況に応じて、在宅か病院か、かかりつけ医にご相談いただくことをお奨めします。
基本的に在宅医療では、病院に近いことがご自宅で出来る環境が必要です。



「在宅医療クリニックの医師が、ケアマネージャーも含めて様々な職業と連携を出来るかどうか。」がとても大切なのではないでしょうか。
24時間365日を支えていくのは大変なことです。
残念ながら、上から目線の医師ではチームの意思疎通が出来にくく、患者さんのケアに影響するケースもあります。

大きな病院の良いところは、様々なスタッフが一か所にいることです。
だから安心出来るのです。

例えばがん治療の場合、手術不可能ながんに対する抗がん剤の化学療法では、効果が乏しくなる度に、別の抗がん剤に切替えていきます。
この過程で、外来で化学療法だけを受けに病院に通うこと自体がしんどくなる場合もあります。
この化学療法や、進行がんの貧血に対する輸血を在宅で受けていく選択肢もあります。

終末期の場合、在宅ではいわゆる人工呼吸器などをつけられるわけでありません。
ですから、患者さん、ご家族、医療チームで、きちんと話をして、最終的なゴールを見据えていかなければならないと思います。
自宅で看取ることについては、その方自身が人生の質を高めて、もっと活き活きと過ごせるように、しっかりと皆で思いを共通にすることが大切です。

―患者さんとご家族の希望が合わないケースはあるのでしょうか。
実際に医療現場でやって来て、患者さんのご家族がどう行動していくかは、主治医との信頼関係が相当影響していると感じます。
私自身は、患者さんご家族が終末期に至って人工呼吸器を希望された経験はほとんどありません。
主治医に対してご家族が「ほんとうは治療を出来るのにしていないのではないか。」と、不信感が芽生えると、「ギリギリまでやるべきだ。」と感じるケースはあるでしょう。

当院へも色々なセカンドオピニオンのご相談があります。
「大きな病院の先生が信用できないが、主治医の言うことは本当なのか。」と。
実際に拝見すると、医療方針自体はとても正しいのです。
お伝えする時に、患者さんの想いを一つ一つほぐしていきながら、味方になって支えていく立場が重要なのでしょうね。

病院と在宅医療は、決して対立するものではなく、密接に連携していきながら治療方針を固めていく在り方が理想ですね。

「まちのお医者さん」から再生する地域コミュニティ


―今後の展開についてお聞かせください。
ありがたいことに、地域のニーズがものすごくあります。
すでに各所から、「みいクリニックを作ってほしい。」というお声を頂いています。
患者さんは、がんの方、難病の方、認知症の方、ほんとうに様々な方がいらっしゃいます。

スタッフの質をどう上げていくかが、我々クリニックの最大の課題です。
今までは医学教育そのものが、専門分化して行われてきました。
いかに幅広い知識を持ち、経験を積ませていくかの課題は、SOPという標準作業の手順の確立やトレーニングでカバー出来ると考えています。

在宅医療の将来像については、コミュニティそのものを再生させていくことが重要です。
これまではどちらかと言うと、コミュニティが破壊されていって、なんとなく非効率な社会になっていたのではないでしょうか。
その結果、いざという時に支えられず、在宅医療を始めようにも難しいのが現状です。

地域が支えになって、単に病気を治すことだけが目的ではなく、患者さん、ご家族が笑顔になれるようにしていく。
そんなコミュニティを再構築していけば、それが今後の新しい世界になってくると思うのです。

地域の方たちをしっかり巻込みながら、多職種で横につながる地域医療のモデルを実践し、みいクリニックから発信していきます。



お問合わせ・ご相談はこちら

団体概要

みいクリニック
ホームページ:http://mih-clinic.com/
twitter:https://twitter.com/toshiomiyata

参考文献


『保健医療2035』
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokeniryou2035/

執筆者

取材・文:gCストーリー株式会社 阿南
画像提供:みいクリニック

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